第4話 ダンジョン
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「こんなにでかいものなのか……」
ダンジョンらしき洞穴へ踏み込んですぐにロンドは違和感を感じた。
洞穴内部は地上三階ほどの高さと幅10メートルを超える広さがあり、そのまま奥へ続いている。入り口からの光は入って20メートル程までをしっかりと照らしており、はっきりとそこまでの様子が窺える。
そこから先は真っ暗かというとそうでもない。空が白みはじめる頃合いと同じくらいのぼんやりとした光が洞穴内を満たしている。
どうやら洞穴の天井付近がぼんやりと光っているようだ。
ゆっくりと歩みを進める。
「ダンジョンヒカリゴケか……」
洞窟内に充満する魔力を吸収して光を放つというダンジョンヒカリゴケを知識としては知っていても実際に見るのは初めてだった。
目が慣れてくると十分に周囲の状況が確認できる明るさだ。
「こんなにも美しいものなのだな……」
ダンジョンヒカリゴケは魔力の濃いところではより一層明るく光を放つ。
洞窟内の魔力には増減の波があり、それに合わせてコケの光も強弱を繰り返す。
しばし呆然と様子を眺めていたロンドだったが、当初の目的を思い出し洞窟内部へ向けて歩みはじめる。
「うゅ、危ない……」
足下のくぼみにつま先が入り込み危うくこけそうになる。岩肌が続く洞穴内は、当然でこぼこしており、真っ平らな道を歩いて行くようには行かない。
10分ほど歩いたが、当初のもくろみとは異なり、洞窟ウサギやダンジョンバッタなどの魔物とは遭遇しない。
「なかなかモンスターに遭遇しないな……」
入り口から300メートルほど入り込んだ洞穴が二股に分かれているところで立ち止まったロンドはあらためて周囲の状況を確認した。
平地なら走れば1分もかからないだろう距離だが、薄暗く足下もおぼつかない状態での進入は通常の数倍の時間を要している。当然引き返すのにも同じくらいの時間がかかるだろう。
洞窟は徐々に狭くなっているが、まだまだ大柄な人が並んで立ったまま歩けるほどの大きさだ。
「もう少しだけ行ってみよう」
ロンドは右の道を選んで先に進む。
分岐から30メートルほど進んだとき、ひたひたと近づく足音がしたような気がして振り返る。
すると、先ほどの分岐の左の道から人型の大柄な何かがちょうど角を曲がってくるところだった。
ロンドはその姿を確認すると硬直した。
「ゴーレムだ」
まずいと思ったと同時に退路を確認する。
来た道を塞ぐようにゴーレムが直立している。
『だめだ、来た道は帰れない』
ならば進むしかないと前方を見た瞬間、ロンドは絶望した。
前も大柄な人型のシルエットが見える。前方40メートルと言ったところだ。
「挟まれた……」
ロンドは絶望しつつも生き残る道を考える。
今持つ武器は諸刃の片手剣のみ。
鋼鉄製だが、ゴーレムに通用するのか未知数だ。
ウッドゴーレムや泥人形なら、戦闘系のスキルを持たないロンドでも倒せる可能性はわずかにある。
しかし前後の人型はいかにもゴツく、どう見ても岩ゴーレム、下手をすると金属ゴーレムの可能性すらある。
二体のゴーレムはゆっくりとロンドに近づくに従って、その偉容を明らかにした。
『まずい、金属光沢がある……
材質はわからないが金属ゴーレムだ』
黒っぽい銀色のボディーから推測するに鉄が主成分のゴーレムの可能性が高い。
とても自分の持つ剣で倒せるとは思えないし、一撃でももらえば肉片にされる未来しか見えない。
どうする、どうする、どうする……
右の壁を背にして二体のゴーレムの接近に、若干パニクりながらも思考は放棄しない。
考えろ、考えろ、考えろ……
生き残る道を必死に考え、左手のゴーレムが手の届く範囲に入ろうとしたそのとき、突然ひらめいた。
「裏口創造!!!」
ロンドは自分の背中のダンジョン壁に、自分が持つ唯一のスキルを使用した。
瞬間にごっそりと魔力が体から抜け、背中に当たる感触が岩肌の壁ではなくなる。
成功だ。
ロンドは作ったばかりの裏口に飛び込むと、すぐさま裏口を消した。
「裏口撤去!」
岩肌にあった木の扉が消え、開け放たれていたドアの向こうに迫っていた金属製の腕が見えなくなる。
「助かった……」
ロンドは周囲の状況を確認する。そこはロンドが侵入した崖の下にあるダンジョン入り口からはかけ離れた岩山の中腹だった。
周囲に生き物の気配はない。
「ふう……」
息をつくと体から力が抜ける。
少しフラつく。
ダンジョンの壁に裏口を作るという離れ業にはかなりの魔力を消耗するようだ。
ロンドは傾きかけた太陽を見ながら、少し休憩してから次のことは考えることにした。
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