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「・・・・・俺は・・・今のままの生活を続けたいと思っている・・・皆の事は家族だと思ってるし・・・・・いや、勿論他の誰かが人間に戻りたいと言うなら止めはしないよ」


他の皆の指針と成るべく、なんとか搾り出した答えは嘘偽りの無い俺の本心だった。そしてリトラは勿論、四天王達やマサトも俺に賛同してくれた。


「よし!決まりだな。先ずは自力で迷宮を維持出来る様にしなきゃならん。その後、お前さんに付いている〝紐〟を切る事になる」


「紐・・・ですか?・・・・・・」


「ああ、さっきの魔王にも付いてたが、魔力の紐みたいな物で隣の部屋と繋がってる。そこに有るんだろ?この迷宮を維持する〝システム〟が」


「あ、ああ、俺はPCで迷宮内部を作り変える事が出来るんだ」


「そりゃまた解りやすいシステムだな。まぁ、先ずはあんたにこいつを取り込んで貰う」


「何を?」と聞くより先にパンドラの左掌に光が収束して行き、光が収まるとその掌の中には赤い宝石が握られていた。


「こいつは〝賢者の石〟を改造した物だ。こいつを取り込めば魔力を生み出せる様になる。さあ、こいつに願え。自分が如何したいのか、如何成りたいのか、己が思いをその石に込めると良い」


この時俺は次から次へと代わる状況に付いて行けずにおかしくなっていたのかもしれない。怪しい事この上ない彼から手渡された賢者の石を疑いもせずに両の手で握り締め、一心に祈っていたのだから。


―――唯この生活と皆を守りたいと。


俺の願いに呼応するかの様に賢者の石が淡い光を放つ。掌の隙間から零れた赤く優しい光が俺を包み込み、光の粒へと変化した賢者の石が掌から腕、肩、そして身体へと浸透して行き、俺の存在そのものを創り変えて行った。




「終ったみたいだな。どうだ?何か違和感とか痛みとかは無いか?」


光が収まり自分の掌を見る俺に彼が聞いて来た。


「ああ、特に問題は無いよ。魔王になった時は気を失う程だったけど」


俺はあの時の事を思い出し、苦笑いをしながら彼に答えた。


「そりゃあ良かった。普通は雑念が多過ぎるから失敗して異形に変貌したりするもんだから何回かやり直す事になるかと思ってたんだ。いやぁ意外と上手く行くもんなんだな」


「「「「「「「おい!」」」」」」」


軽い調子でとんでもない事を言う彼に皆で突っ込み、俺は改めて彼に恐怖した。


「それじゃその紐を切るためにシステムの方を調べさせて貰うぜ」


全員で仕事部屋に入ると彼は俺のPCに手を付いた。


「ど、どうです?何とか成りそうですか?」


「・・・・・・・・・・参ったな・・・・・思った以上に御粗末なセキュリティな上に、しょぼいシステムで驚いちまったよ・・・でも、まぁこれを作った奴等は間違いなく神なんて存在じゃない事は確定したな。ちょっと待ってな、使い勝手はそのままで中身は作り変えるから。序にPC自体もアーティファクト並みにしてやる」


PCに触れている彼の掌から光と闇が溢れPCを包みこみ、暫くすると彼が手を離したが特に何か変わった様子は無かった。


「これで良しっと。見た目は変えない方が良いと思ってこのままにしといたけど中身は別物だ。俺以上の力の持ち主でもない限りは侵入はおろか破壊する事も出来ないだろ。後はお前からこのPCを通して迷宮と仲間達に魔力の供給をする様にしたから迷宮からも出られるぞ」


「ほ、本当ですか!?外に出られる・・・自由に・・・自由になれたのか・・・・・ありがとう・・・如何お礼をしたら良いのか解らないが何でも言ってくれ!」


「まぁ気にすんな、俺に取っちゃ序なんでな」


「序・・・って事は他に何か目的が?」


「何言ってんだ、まだ本命が残ってんだろうが!ライラが楽しみにしていたこの新婚旅行を邪魔した奴等だけは許さん!!」


「えっ!そっちなんですか?!僕は故郷が侵略された事に怒っているんだとばかり思ってましたよ」


斜め上の理由で怒るパンドラにケントが突っ込み普通の理由を述べる。彼は普通の感性を持った人間の様で少し安心した。


「俺は別にこの星に未練は無い!この星がどうなろうと知ったこっちゃ無いが、ライラが見てみたいって言うからここに連れて来たんだ。下らん真似して俺達の時間を無駄にした罪を償って貰わんとな!!」


今更だが俺にはこの人の思考回路だけは理解出来そうになかった。

ここまで読んで頂き有り難う御座いました。

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