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異世界冒険記  作者: 九重九十九
新異世界編
63/69

友達付き合いを考えるなら越えてはいけないラインだけは守っとけ!

「なんで」

 鈴木は目の前にいる少女がなぜ目の前にいるのか理解できなかった。

「なんでお前がここにいるんだ、アイリス!」


 前に見たときはツインテだった髪型は今は一つ結びになっている。髪型の変化だけでなく、少し伸びているのもわかる。

 ゴスロリ服も変わっていて、まるで鈴木たちが元居た世界のような服装になっている。

「飾り気がないというより、シンプルを求めたような白シャツに赤い紐リボンがポイント、下はデニムのスカートで、膝丈が見えるくらい。ふりふりがあるがしつこくないくらいのやつで、全体的に上品な雰囲気をだしている。だがそれは着る人が着て初めて「ちょっと恥ずかしいのでそういうのは心の中でやってください!」

(では心の中で続きを――だがそれは着る人が着て初めてその気品を醸し出せるのである。少し見ない間に様々なことを経験してこそ、今の落ち着きのある雰囲気を生み出せたのだろう)

「えっと、たぶんその沈黙は本当に心の中で続けましたね」

「うん」

「というか、ちょっと前まで結構シリアスでしたよね? なんで私が来た瞬間にギャグに走れるんですか!」

「それはアイリスちゃんだからさ」

「意味が分かりません!」

 叫び突っ込むアイリスに鈴木はニコニコと微笑む。


「もう、久しぶりだというのに、あるじはやっぱりあるじなんですね」

 アイリスは鈴木に手を差し伸べる。

「俺は俺以外であったことなんて一度もないぜ」

 鈴木は手を取り、引き揚げてもらう。

「あるじ、アイリスただいま戻りました」

 奴隷として、アイリスは鈴木に跪く。

「ん、おかえり」

 あるじとして、鈴木はアイリスの頭を撫でた。


「さて、感動の再開に水を差すけどいくつか質問」

「はい、なんでしょう」

「お前が来てるってことは」

「はい、他にクラリアお姉ちゃんとソーマさんが来てます」

「あの野郎、もう来たのか」

 鈴木は自分の計画通り動いてくれないソーマに心の中でマイナス評価を付ける。

「あの人もいろいろ苦労してるみたいですよ」

 ここ数日、ソーマと一緒にいたアイリスは彼の事情を知っているようだ。


「まあいい。いるとわかった以上有意義に利用させてもらおう。てか、そうだ、アイリス、ちょっとこっちにこい」

 鈴木には火力がない、火力がないので整備室のふさがれた穴を突破することができないのだが、これがアイリスなら話は別だ。

「アイリス、この穴の開いた扉を何かがふさいでるんだが、これを何とかできないか?」

「この奥から何か、激しい音が聞こえるのですが」

「兵器少女とロボットが戦ってるんだ、介入してロボットを撃破したい」

「ろぼっと、ですか? よくわかりませんが、わかりました」

 アイリスはふさがれた穴に向き直り、フーっと息を吐き、カッと目を見開いたかと思ったらフンと右ストレートをお見舞いした。


 ・ ・ ・


 エイラは『VPS』と戦っていた。

 ブラン少尉にはああいったが、『舞姫』として実践戦闘は初めてで、しかもそれが今までシュミレーターで戦ったことがない自分より大きなロボットだというのだ。苦戦しない方がおかしい。


『逃げてばかりじゃ勝てねぇぞ! 最初の威勢はどうしたんだ!』

 ブレードを振り回してブランは言う。


 初撃を避けて、次を主砲弾ではじき三度目を避ける予備時間とする。

 死角に回ったところをもう一つの主砲で撃つ。だがしかし、『VPS』に真の死角というものはない。メインカメラに映らなくなっただけで他のセンサーは常に敵性人物を補足し続ける。

 エイラが撃つよりも早くブランはブーストを噴いてエイラの砲撃を回避した。


 そんなところだった。

 アイリスがふさがれた入り口をぶっ壊して、ニヤニヤした顔の鈴木が入ってきたのはそんなところだった。

「派手にトばしてんなァ、俺も混ぜろよ」


(新しい『情報士』か!?)

 ブランは鈴木と新顔の少女にもターゲット設定を行う。


「まずは敵の機動力を奪う、アイリス、エイラは敵を挟むように展開せよ!」

「はい!」

 アイリスはエイラと『VPS』の位置を確認して、走り出す。

 十分な距離と判断した鈴木は次の指示を送る。

「アイリス、お前の火力ならヤツの装甲を貫ける、キツイ一撃をお見舞いしろ」

 言われたアイリスは飛び上がり拳を握り締め『VPS』に殴りかかる。


 しかし『VPS』はこれを回避、考えてみれば当然。ブランにとって突然の介入者は未知数の敵。もう少しデータを集めてから対処したいところ。

 しかし、回避をするためにメインカメラをアイリスに向けていたのがいけなかった。結果としてアイリスの拳は宙を撃ったのだが、そのためにエイラに背を向けたのが此度の戦闘におけるブランの敗因ポイントであったろう。


「エイラ! 今だ!」

 ドゴン! ブランは衝撃と共に『VPS』の異常を感知する。

『な、畜生! しまった!』

 背中のブースターにエイラの主砲弾が刺さったのだ。

(クソ、これじゃもうブーストが使い物にならない)

 いくつものエラーと警告音がなるコックピットでブランは機体の損傷率を確認する。

(――クソ、もう今までみたいにブーストによる緊急回避ができない……!!)

 鈴木はニヤリと笑みを浮かべる。


 ここに戻ってきたときに鈴木はこう言った。まずは敵の機動力を奪う。

 前情報として、背中のブースターのことを知っている鈴木&エイラと、そもそもロボットのことを知らないアイリスでは言葉の捉え方がまるで違う。後者は機動力の意味合いを足だと捉えるが、その厄介さを知っているエイラは真っ先にブースターのことを差しているのだと気が付いた。

 よって、アイリスに注意が向いている『VPS』の、背部ブースターめがけてエイラは一斉射撃を行った。


 機動力が奪われたことを目視にて確認した鈴木は続けて指示を飛ばす。

「アイリス、奴の頭を破壊しろ!」

「はい!」

 アイリスは自分の何倍もある『VPS』相手に全く物怖じせず、勇猛果敢に突貫をかける。マシンガンの反撃があるが、ヴァルキュリーとしての本能か、あれは人間大の大きさを狙うには命中に欠けると瞬時に見抜き本当に当たりそうなものだけを直前で避ける。

 ある程度接近すると、「はあああああああああああ!!」大ジャンプ&正拳突き。『VPS』の頭部に想定以上の負荷がかかり、その結果、東部パーツはひしゃけて取れてしまった。


(メインカメラが!? アイツはもしかして撫子型か!? いや、装機もなしにそんなことができるはずもない、なんだ? 最新型なのか? ふざけやがって!)

 ブランは心の中で毒づく。


(頭部破壊できればいいやくらいに思ってたけど、まさか頭をトばすとはなぁ。やっぱヴァルキュリーってふざけてるわ)

 味方も同じことを思っていた。

 ともあれ、機動力に続き、目まで簡単に奪えた。ここまでトントンとうまくいきすぎて逆に少しひいてる節もあるのだが、とにかく次の一手を指す。


「エイラ、奴の補助センサーを攪乱する。決定打にならなくてもいい、とにかく撃ちまくれ」

「はい、マスター」

 意図を理解してエイラは主砲のほかに副砲を四つ展開、一回り小さな砲がエイラの周囲に現れる。

「連続射撃開始します」

 ドン! ドドドドドドン! ドドドドドドン!

 威力はあるが連射はできない主砲、決定力はないが手数のある副砲、その全てをあえてアバウトに狙って撃ち込みかける。


(センサーなんてどの辺にあるのかも知らねーけど、こんだけ撃ち込んどけばさぞウザイだろうなぁ? えぇ? ブラ……ブラン……? ブランクさんよぉ?)

 なんかよくよく思い返せば名前を憶えていなかった。


(まーいーや、で、次のヤツの行動は――)


 しかし相手も黙って突っ立っていてはくれない。

 補助センサーは生きている、しかし、砲弾の雨霰でセンサーが過剰反応してほとんど意味をなしていない。だがしかし、攻撃を受けている以上、攻撃をしている方向は分かる。メインカメラがやられた以上マシンガンは当たるのかわからない、なればやれることは一つ。

 受ける砲弾を頼りにその方向へと全速力で体当たりを敢行した。


「エイラ、避けろ! ――――な~んてなァ!」


 ブランの視点で見てみよう。

 メインカメラがやられた次は補助センサーに頼らざるを得ない。だがしかし、

「なん、だ。クソ、センサーを過剰反応させて機能させないようにしているのか」

 メイン画面に過剰な様々な表示が出現していく。『VPS』の中でブランは悪態をつく。

(とにかく、このままやられっぱなしでたまるか!)

 映像としての情報はないが、撃たれているという事実からその方向へと機体を全力で走らせる。ロボットの重みを利用して、壁とロボットで潰すつもりで『VPS』を走らせた。


 だが――


「あ?」

 何が起きたのか理解できなかった。

 壁との間で潰すつもりが、足を踏み外した。

 機体が前のめりになり、そのまま落ちていく。

「ブーストで飛行を――」

 飛行ユニットがなくても多少の飛行は可能。ブーストが壊れていなければ、の話だが。

 ドボンと衝撃が聞こえ、補助センサーが機体全身が水に飲まれたことを教えてくれる。


 沈んで、ゆく……。


「うそ、だろ?」


 沈んでゆく。


 ――――――――どれほど時間がたったのか、一分だったか一時間だったか。

 鈍い衝撃が海底についたことを教えてくれた。

 『VPS』は沈み始めた頃から大量のエラーを吐いて操作を受け付けなくなっている。

 だから、線が切れたのがこの時だった。

「うわあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」

 ブランは己の死を覚悟した。


 ・ ・ ・


「あらら、まさかこんな簡単に自滅してくれるとは」

 鈴木は壁開いた大穴から『VPS』が落ちた海を眺める。


 鈴木が指示したのはこうだ。

 エイラに囮として砲弾を浴びせてヘイトを稼がせる。次に『VPS』が体当たりしてくるのを見越して『VPS』の行動延長上にある壁をアイリスにぶっ壊してもらい、実際に『VPS』が体当たりを仕掛けた時にギリギリまで砲撃していたエイラをアイリスに救わせる。


 お膳立てを済ませれば、後は大穴開いてるところにバカが勝手に突っ込んで落ちていった。それだけの話。


「さて――それじゃ、その向けてる砲を消してお話しようか」

 鈴木は主砲副砲計六つの砲を展開しているエイラに言った。


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