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異世界冒険記  作者: 九重九十九
新異世界編
64/69

苦戦してるところで味方が助けに来るのは勝利フラグ

「さて――それじゃ、その向けてる砲を消してお話しようか」

 鈴木は主砲副砲計六つの砲をすべて鈴木に向けているエイラに言った。

「…………なにがあったのかは全く分かりませんけど、10:0であるじが悪いんだと思います」

 きっと煽ったか騙したかしたのでしょう、とアイリスは付け加える。


「でも、どんな理由があったとしても、あるじに危害を加えるというのなら許しませんよ」

 アイリスはさりげない脚運びで鈴木の前、盾になるようにその身を砲にさらす。


 エイラは冷たい目でアイリスを見定めている、ように見える。


(まっずい、アイリスが来てくれたというものの、エイラは正直ほしい戦力だ。このまま二人がぶつかったら確実にどちらかが倒れる。それはできれば避けたい。ならば……俺がとる行動は、これだ!)


 極限の状況といえる中、鈴木が出した結論、それは!


「スイマセンでした――――!!」


 床に対してうつぶせになり、真摯な態度でエイラに謝ることだった。


「……えっと、あるじ、それは……?」

「土下寝だ」

「土下寝ですか」

「土下寝だ」

「そうですか……」

 アイリスはとりあえず見捨てて逃げるのもありかもしれないと慎重に考え出した。


「日本の最上級のお詫び、土下座。そのさらに発展形の土下寝ですか。マスターが真剣な態度で私に謝罪をしているのは伝わりました」

 鈴木を狙っていた各種砲は目標を攻撃する意思なしというように砲門を下側に向ける。

「そもそも、そこまで怒っているというわけでもないですし。ただ、催眠術をかけるにしても前もって説明をしてほしかっただけです。作戦不明は不安になります」

「わかった。今後は作戦内容をちゃんと伝えよう。申し訳なかった」

「あるじ、とりあえず起き上がったら?」

 アイリスに言われたのでとりあえず起き上がる。


「ではマスター、次の作戦指示を」

「てか、お前、俺のことマスターって呼んでたっけ?」

「人格形成が未だうまくいっていないので、マスターにいくつか誘導提示していただいた人格の中で、最もマスターから指示を受けやすい人格を選んでみました。お気に召しませんでしたか?」

「――いや、これはこれでいいものだ」

 鈴木はにんまりと卑しい笑みを浮かべた。


「それではマスター、差し当たっては次の作戦指示を」

「あ、確かに聞いておきたいです」

「そうだな。とりあえずの目的は天汰や、ここにきてるクラリアとソーマに合流する」

「あ、ソーマさんは私たちをここに置いていってちょっと島の施設を潰してくるって一人で空間移動をしました」

「はァ~!? クソソーマつっかえ! ええいじゃあ予定変更、当初の予定であった救命ボートないし救命いかだを人数分確保、のちに天汰とクラリアと合流する。今こうしてしゃべっている間もこの船は浸水してるはずだ、迅速な行動が求められる、二人ともいいな?」

「はい!」「ハイ、マスター」


 ・ ・ ・


 戦艦スナイパー、もとい、戦艦ルーテルでは混乱が起きていた。護衛艦であるはずのイザリヤが体当たりを仕掛けてきたのだ。とっさにシールドを展開したが、最悪ルーテルとイザリヤは衝突して甚大な被害が出るところだった。

 もっとも、シールドを使った代償としてしばらくシールド展開ができなくなるいわいるクールタイムをくらった訳だから全くの被害なしではないのだが。

 この緊急事態に際し、イグラス国はある決断をする。


 乱心のイザリヤにシールドが切れた後でもう一度体当たりをされたら流石にひとたまりもない。よって、イザリヤを敵艦として認め、これを撃破するための情報士を送り込むことを決定した。


 ・ ・ ・


 少し前。

 天汰は操舵室での仕事を終え、次どう動けばいいか迷っていたところ、兵に取り囲まれて捉えられようとしていた。でもそれ自体は別に脅威でもなく、普通に全員をのし倒して本格的にどうしようか考え始めるところだった。


 天汰がこじ開けた扉から誰かが入ってきた。

「あれ、私の代わりにもう誰か潰してる?」


 金髪おさげのその女の子は、水色のボディスーツを着ており、その身に似つかわしくない甲殻剣を携えていた。


「あれ、この船にエイラちゃん以外に女の子乗ってたっけ?」

 天汰は記憶にない女の子を疑問に思うが、訝しみはしない。慢心、ではないが、絶対防御があるので少しずつ危険に対する感覚が弱くなっているのも事実だろう。

 それがまず、一手遅れた原因につながった。


 女の子は、気軽に散歩でもするかのように一歩二歩と天汰に近づいて、三歩目で四メートルはあった距離を無視して天汰の真横まで接近していて。天汰の右腕を切り落とした。

「えっ? ……う、うわあああああああああああああああああああああああああああああ!!」

 痛みで体が崩れ落ちる。


「あれ、確かに右手を切り落としたと思ったんだけど」


 激しい痛みを感じながらも天汰は自分の右手を見てみる。

 右手は確かにそこに繋がっていた。久々の痛みで腕が切り落とされたかのように錯覚したのだ。


(これは、久々にヤバイんじゃないか?)

 天汰は考える。見下ろす女の子は自分の攻撃に疑問を感じている表情で動かない。

(仮に、このままバトルするとして、この痛みからしてほぼ欠損級のダメージをたたき出す子だ。すーさんの分の肩代わりを解いてリソース戻せば防御力上がるけど、もしもその間にすーさんがやられたら意味がない。そもそも相手は今どうやって近づいた? 情報士なのは間違いないが、対策が分からん! ここで小さな勝利を得るよりも、逃げてすーさんと合流しよう!)

 出口へ駆け出すことを決意。


 難解な表情をしていた女の子は、クラウチングスタートのような格好の天汰に気が付く、天汰が動くとほぼ同時にその背中を甲殻剣で切りつける。

「ぐッ!」

 背中の焼けるような痛みに顔を歪めつつも、敗走を開始する。


「あっ、コラ逃げるな!」

 女の子は、先に走り出した天汰を追い越して先に出口目の前で通せんぼする。

「はやっ」

 ぶつかると思ったが足は急には止められない。いや、そもそもそんなことを考えるのはズレているのかもしれない。女の子の方は当然のように向かってくる天汰の横っ腹に一本入れてくる。

「やあ!」

「ぐうぅ!」

 例えるなら剣道の胴打ち。見事に右腹に煮えたぎるような一撃をもらって崩れ落ちる。


「これだけ切っても、血の一滴も出ないなんて、あなたどうなってるの?」

 なぜか女の子の方が困惑の表情を浮かべている。


「効いていないようにはみえないから、何らかのIOSを使っているのだろうけど。装機も何も持っていないでそんな実践的なIOSが発動できるなんて聞いたことないわ。どういうことですの?」

 女の子はうずくまっている天汰に問いかける。


「ひ、秘密~」

 痛みをこらえながら作り笑いを浮かべて天汰は返答。

「まあ、後で脳みそいじくり返せばわかりますわね」

「さらっと恐ろしいこと言うなよ、怖いじゃねーか」

「未知のIOSを使ってるあなたの方がよっぽど恐ろしいですわ」

 女の子は突然、ぎょっとして入り口の方をみる、と同時に一歩後ろにバックステップ。もともと女の子がいた所に何かがカーブをえがいて通り過ぎた。それは空振りに終わるとそのまま部屋をぐるっと回って元来た場所へと戻ってく。


「お久しぶりです、天汰さん。状況は分かりませんが手伝いますよ」

 そこには銀髪の頼れる後輩、クラリア・ハルゲイドがブーメランをもって佇んでいた。


「新手の情報士ね!」

「クラリアちゃん! こいつ、瞬間移動的な技を使う! 早く逃げて!」

「遅い!」

 天汰の忠告が言い終わらぬうちに、女の子は足を踏み出す。

(取った!)


 勝利を確信した女の子は、一撃必殺になるようにクラリアの喉首を狙って甲殻剣を振る。

 が、クラリアは敵の動きが見えているかのように十手で喉首ガードした。しかも、逆手に持っているブーメランで直接頭を殴りつけた。


「ぐっ」

 女の子は、距離を取ろうと神速の回避を実行しようとして、でも体が追い付かずに尻もちをついた。

「えっ?」

 女の子は二重に驚いた。まず、高速移動のIOSが発動しなかったこと。次に、そもそもの脳内にあるIOSプログラム自体が破損していることの二点についてだ。

 プログラム自体は修復は可能だが、そもそもどうやって破損まで至ったのかがわからない。たまたまにしてはタイミングがおかしすぎる。


 女の子が呆然としているこの油断をクラリアは見逃さない。甲殻剣を蹴り上げ武器を取り上げる。

「あっ」

「しばらく眠っていてください」

 十手とブーメラン、両の手で持ったそれらを、なんの躊躇もなく、がら空きの頭に叩き込んだ。その手際は見事というほかなかった、女の子は名前も明かせないまま気絶した。


「対策が分かっていれば苦戦する相手でもありませんね」

「クラリアちゃん、というか、どうしてここに?」

「ソーマさんが連れてきたんです。当の本人はやることがあるからといったん離れましたが、またすぐ合流するそうです」

「そう、か」


「大丈夫ですか? 怪我することはないとはいえ、かなり苦戦していましたね」

「盾なしはきつい。鍋の蓋でもあれば話は違ったんだけどね。それにしても助かったよ。というか、よく戦えたね」

「ソーマさんから情報士のことは聞いていましたから。接近武器をもっているのは『撫子型』、急接近と敵の攻撃予測、武装強化のあ、あい? 魔法みたいなのが使えることは聞かされていました。もちろん弱点も、特殊移動は半径五メートルが限界で、敵の攻撃予測は自分が認知していないものには効果がない。武器強化に関しても私の十手『月下魔滅』とも相性がいい。これだけそろっていれば負ける要素はないですよ」

 さらりと、さも当たり前のように言うが、同じ条件でも天汰は敵の女の子に勝てたとは思えない、派手な戦いはできないせいで注目されないが、クラリアの戦闘技術は恐らくパーティーの中で最高ランクだと天汰は思い知らされた。


(俺が防御、大和が攻撃特化だとしたら、クラリアちゃんは技術特化だ)

「さて天汰さん。これから私たちはどうすればいいのでしょうか?」

「俺もすーさんの指示でここの制圧をしたんだけど、次の指示はもらっていないな。ちょっとすーさんに電話してみる」

 天汰はインフォンを取り出す、そして短縮ダイヤル1に設定している鈴木に電話を掛けた。



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