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異世界冒険記  作者: 九重九十九
ペルウィーン国編
47/69

黒幕

 結果から言うと、天汰は寝不足になった。


 思いやりの精神が強い天汰は、二時間たったがわからず、もう少しだろう、あと少しだろうを繰り返して結局四時間ほど見張りをしていた。

 時間過ぎていることに気が付いたのは、日の出を拝んでからだったという。


 そういう訳で天汰は寝不足になった。

 だけどそれはこの先の旅にとっては割とどうでもいいことであったりする。


 さて、そんな一人体調不良っぽい人がいるが、大方いつも通りの朝が来た。


 寝不足の天汰をこき使い朝食の準備をさせて、朝の戦闘訓練をしているクラリアと大和の演習を茶々を入れて危うく首を持っていかれそうになり、アイリスとスキンシップを取ろうとしたら危うく死と隣り合わせの状況になるところだったりと鈴木の朝は今日もいつも通りだ。


 そんな感じで朝は過ぎていき、大体10時くらいの時間帯になると馬車を動かす。

 昨日と同じく、大和とクラリアが操縦席で、他が馬車の中で揺られるという構図である。


(あー、はよ北地区の関所まで着かないかなー)

 なんて、鈴木は馬車の上で日向ぼっこをしていた。


 そんな時だった、「おーい」と馬車の先にあの男が待っていたのは。

 声に気が付いて馬車の上の鈴木はハッとする。


「アンタ、今一体どこから現れたんだ!?」

 操縦席に座っている大和が目を丸くしている。


「君は大和くんだね、初めまして」

「アンタは一体……」

「クラリアちゃんも、昨日はお疲れさま。まさか一日でペルウィーンから脱出するとは思わなかったよ」

 ソーマは大和に不敵にニヤリと微笑むと、次はクラリアに話しかける。


「コトがコトでしたので、早急に対応しなければと思いまして」

「うん、助かったよ。おかげで運命、大きく変わらずにすんだよ」

「それは――よかったです」


「おい大和、急に馬車止めてどうしたんだよ」

 と、馬車から天汰が出てきた。

「やあ、天汰くん。このたびは随分と活躍したみたいだね」

「あなたは」

 天汰は思わぬ人物との出会いに少し驚く。


「鈴木くんも、そんなところに隠れてないで出てきなよ」

「チッ、バレてーら」

 馬車の上からひょこりと頭をのぞかせる。


「鈴木くんも、今回はよくみんなを引っ張っていってくれたね。君の誘導がなければきっとボクがペルウィーンに介入することになっていただろうね」

「そりゃ、恐ろしいこった」


「カケラも思ってなさそうだね、まあいいけどさ」

 ソーマは鈴木にある種の気持ち悪さを感じながらも、自分の要件を済ませようとする。


「簡単に説明するね。君たちのおかげで『アルファリエンス』が革命を成功させる運命はなくなったよ。この三日後にモンスターがペルウィーンに訪れるんだけど、ギルスくんとジルくんが手を組んでこの危機を回避、その後、穏便に考えを変えて『アルファリエンス』は自然解散。これで世界の流れは元に戻るわけだ」

「ほーん。なるほどねー」

「な、なあクラリアさん、この人は一体何の話をしているんだ?」

「わからなくてもいい話ですよ」

 大和は聞いてもわからないので、隣のクラリアに助けを求めるが、クラリアは面倒なのか教える気はない。


「そこで、お姉さんが君たちに面会を求めてるんだ」

 ソーマは困ったように首後ろを掻く。


(ほう、コレの姉か。確か、お姉さんが運命を操って俺たちが死ぬことがないようにしてくれているんだよな?)

 鈴木は自分の記憶にあるソーマの姉の情報を思い出す。


「拒否権はないんだけどね」


 次の瞬間、鈴木含む全員の意識が一瞬飛んだ。


 ・ ・ ・


「――あれ、今、何が起こったんだ?」


 気が付くと、馬車の位置やらは同じなのだが、見える風景が目に見えて変わっていた。ペルウィーンの国壁に沿って走っていたはずだが、今はどこにもその影もない。


 まっ平らな草原は、整備された芝生みたいで、その上に大きな魔法陣が描かれている。鈴木たちはその魔法陣の中にいた。

(アレ、この魔法陣って)

 天汰は大きく描かれている魔法陣に見覚えがある。


 いつか最初に天汰が見つけたあの魔法陣に似ている気がするのだ。


「さあ、次の世界に案内するよ」


 どこからかソーマの声が聞こえる。

 同時に魔法陣が光る。真っ白な光にその場にいる全員が思わず目をつぶる。

 そしてその次には強烈な吐き気が全員を襲った。


 ・ ・ ・


「よく――来てくれました、感謝するわ」


 鈴木は今の状況が全く理解できない。

(あれ、ここどこ?)


 ソーマにあって、急に意識が飛んで、その後魔法陣の上で気が付いて、かと思ったらその魔法陣が光りだして、今に至る。

(うん、思い出したけど訳が分からん)


 冷静に記憶を辿ったが、理解できる箇所が全くなかった。

 とりあえず現状をまとめよう。


 鈴木が今いるのは、なんというか、宇宙? 暗闇? うん、ここも何とも形容しがたい。黒の世界とでもいえばいいのだろうか、だけど微細な光があちらこちらで光っては消えてを繰り返している。なんだここ。


 周りには鈴木と同じように状況が理解できない様子の仲間たちがいた。なんと、ギルド嬢もいた。

 みな一様に不安そうに周りを、そして目の前の人物を見詰めている。


 そう、目の前の人物。

 黒の世界にいてその身長の何十倍もする長い黒髪はその存在をはっきりとアピールしてくる。白い肌に赤い唇、喪服をイメージさせるドレスを着て悠々とそこに『居る』。

 異形。

 その人の存在はただ単に異形という他ならなかった。

 圧倒的な存在感、ソーマに感じたそれの何十倍もの存在感を目の前の女性から感じられる。


「ふふ、どうしたかしら? (われ)が声をかけたのだから、言葉を返すのが礼儀というものでしょう?」


 声を聞いただけで、本能的に理解する。

(ああ、この人、そうとうヤバい人だ)

 鈴木は悟った。格が違うのではない、そもそもの次元が違うのだと。いくら大和や黒石の攻撃が強かろうと、天汰の防御が固こうとも、この女性の前では埃を払いとばすくらいの労力で俺たちを殺すことができるんだと。

 誰に教わった訳でもないが、本能的にそれが分かった。


「これは、スイマセン。少し、びっくりしてしまいまして」


 さしあたっては、とりあえず会話が成立する相手なので会話をする。

 これだけでも内心では恐ろしいほどの緊張で、心臓がバクバクなっている。


「ふうん? 確かに、ただの人間に我との接触は荷が重いかもしれないわね」

 悪戯っ子のように、女性はニコッと笑う。


「あ、あの、ここは一体ドコなんですか?」


 鈴木が話しかけて、他の仲間も心に余裕ができてきたのだろう。

 黒石が女性に質問する。


「ここは我の空間。我が我自身を閉じ込めるために作った空間」

「???」

 黒石、完全に理解できていない。


「まずは、『ソラの世界』での活躍、見事だったわ。我が与えた能力をちゃあんといかして強く育ったわね。天汰、大和、黒石」


(我が与えた能力? 異世界ボーナスのことか?)

 鈴木は女性からでるヒントを、自分にある知識に結びつけようとする。


「鈴木は、能力付与ができなかったから途中で死んでもいいやと思ってたのだけれども……あなたの行動や考えはみんなの運命を大きく変えたわ、よくぞ生きてくれたわね」

「俺の異世界ボーナスないのはアンタのせいか!」

「アナタ、最初に魔法陣を描くときに全く手伝わなかったじゃない? そのせいで能力付与が全くできなかったのよねぇ」

 一番最初のサボリがまさかここにきてそんな重大な機会を失っていたと初めて分かった。結局は鈴木のサボろうとする卑しい心が、天汰たちみたいなチート能力を獲得する機会を潰したということだった。


「クラリアは超現象を消す力をあげたけど、あんまり役にはたっていなかったみたいね」

「いえ、『月下魔滅』は私にとって相性の悪い魔法使いを倒すために絶対必要でした。これのおかげで私は今生きているといってもいいでしょう」

「そお? ならいいわ」


 女性は次にアイリスに視線を向ける。

「あなたは鈴木が動いた結果、我と関わることになった『ソラの世界』の住人ね、どう? 前の奴隷生活よりも今のほうが面白いでしょう?」

「……あなた、何者ですか? わたしのヴァルキュリーとしての勘が、どうしようもなく勝てない、逃げれない、諦めろと囁いているんです」

 アイリスは目の前の女性に警戒を強める。


「ふふふ、アイリスちゃんがもっと強くなれば、我に一撃入れられるかもしれないわね」

「一撃、ナメられたものですね。けど、今は確かにそれくらいの戦力差があることは認めます」

「素直でいいわね」


 次に女性は怯えているギルド嬢に声をかける。

「じゃあ次に、メイ、あなたは最後にこの旅に参加した魔法使いね」

「ひぃ、な、なんで私の名前知ってるんですかぁ!!」

「あなたも、見込みはあるのだから、我の駒にしたいわね」

「な、どういう意味ですか?」

「今はまだわからなくていいわ」


 女性はメイに指を向ける。

「あっ」

 メイはそれだけで消えてしまった。


「大丈夫、テレポートとでもいえば納得してもらえるかしら?」

 女性の出す存在感と、さっきまでいた仲間が消えた事実から、最悪の事態を想像したが、どうやらそうではないらしい。


「さてと、鈴木? あなたに我に質問する権利を与えるわ」

 鈴木と視線が合わさる。

 それだけで叫びだしたくなった。しかしそこは強靭な精神でこらえる。


「あなたは着眼点がこの中では高いわ、きっと今も幾つものことを考えているはず」

「――、では、確認から、いいですか?」

「ええ、いいわよ?」

「ぶっちゃけ、俺たちがやっていた旅の意味は?」

「あなたたちにわかりやすいように言えば、経験値向上(レベリング)、かしらね?」

「次に、俺たちを育てて何が目的なのか」

「陣取りゲームの駒として使うこと」

「それはつまり、対戦相手がいるってことですか?」

「そうよ。我と同じような存在がいるの。それらに異世界を好きにさせたくないの」

「なるほど。スケールが違うわ」

 鈴木はことの大きさに半ば呆れてる。


「すーさん、どういうこと?」

 天汰が横から聞いてくる。


「マス目は異世界、プレイヤーは少なくとも三人以上、そんなチェスをやってるってことだよ、異世界がいくつあるのかわからんし、そこの人みたいなプレイヤーが何人いるかは知らんがな」

「ふふ、流石ね。それだけ理解してくれれば我としては問題ないわ」

 女性は挑戦的な笑みを鈴木に向ける。


「さて、それじゃああなた達は次の異世界(マス目)に行ってもらうわ」

 女性がどこからか扇子を取り出し、俺たちに向ける。

 それだけで俺たち一人ひとりの足元に例の魔法陣が現れた。


「次の世界(マス目)でもいい成果を期待しているわ」

 その言葉を最後に、全員の意識は途切れた。

次、色々考えたいことあるので遅くなります


第一部はここで終わりになります。引き続き、第二部も応援お願いします。

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