表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界冒険記  作者: 九重九十九
ペルウィーン国編
46/69

修学旅行とかの夜の会話は何故か変なテイションになる

 さて、外はすでに真っ暗くなっており、時折国壁を隔てた向こう側から声らしきものが聞こえてくる。


 アウトドア任せろ組のクラリア、大和が率先して焚き火を焚いたり、天汰が食材の中から適当に選んで料理といえなくもないものを作っている、アイリスがその手伝いをして各々自分にできることをしている中、残りの鈴木、黒石、ギルド嬢はすることなく(できることがない)、ただ焚き火に当たっている。


「――いや、まさか黒石にあそこまで根性があるとは思わなかったわ」

 ずきずきと痛む右頬の痛みを感じながら、鈴木は黒石に笑いかける。


「僕もまさかすーさんがあんなに強かったなんて知らなかったよ」

 鈴木の三倍くらい痛む体中を刺すような痛み、大和ほどではないが殴り合いの経験もある鈴木は、意外とタフで、容赦がない。それは仲間の黒石に対しても容赦しないのだ。


「まーでも、そこまでして聞き出したいかねぇ」

 結局鈴木は、食い下がる黒石に、黒石が操られているときにしていたであろうことを教えた。


 ペルウィーン南地区、その破壊と残忍極まりない殺人、人権なんてないようなバラバラ死体。聞くごとに黒石は顔を青くしていくが、最後までちゃんと聞き続けた。むしろ、となりで聞いていたギルド嬢が気分を悪くして馬車を止める事態になったりした。


「僕がやったことだからね。ちゃんと聞いておきたいんだ」

 黒石は憂いの表情をしていた。


「まー、変に責任とか感じるなよ? 俺はそれを危惧してお前に伝えなかったんだから」

「でも……」


「そうです! あなたはこの魔法使いの身内ですからそんなことがいえますけど、私からすれば愛する街を破壊された加害者でしかないんですよ!?」

 話に割って入ってきたのはギルド嬢だ。目が少しだけうるんでいる、もしかして涙をこらえているのかもしれない。


「はいおねーさんは黙ってようかー」

 鈴木は腰の拳銃を抜き、笑顔でギルド嬢に向ける。

「ひぃ!」

「すーさん!」

 怯えるギルド嬢、鈴木に対して激を飛ばしたのは黒石だった。


「あのな、黒石。俺は桃色ふわっふわの髪でロリ属性の守ってあげたい系おねーさんよりもお前のほうが大事なんだよ。いや、ホモ的な意味ではなくてさ」

「誰もそんな心配はしてないから!」


「あっそ? まあ、そゆ訳でよー。今後ともそこのおねーさんが何か黒石に対してネガティブな発言をしたら容赦しないで行くつもりだから」

「……すーさん」

 黒石は何とも言えない表情をしている。


 ここで空気を読んだのか、両手に皿を持った天汰が割って入ってきた。

「オラお前ら! 晩飯ができたぞ! 手伝いのひとつもしない役立たずが感謝しやがれ!」

「ハハッ!」

 言い方が気に食わなかった鈴木が笑顔で手に持ったままの銃で天汰を撃つ。


 弾丸は確かに天汰の腹に当たったが、天汰は無傷。もはや今更拳銃ごときではダメージを負うことはないようだ。

「すーさん、いくない。それはいくないぞ、それは」

 その後、鈴木は天汰から銃の扱いのレクチャーを受けるまで晩飯を食べることができなかった。


 ・ ・ ・


 夜間。


「ふ、あああ。ねむ。そろそろ二時間たったかな」

 大和は馬車の上で体を伸ばす。


「えっと、次は天汰か」

 馬車の上から飛び降りて、焚き火の近くで横になっている天汰を揺さぶって起こす。


「天汰、天汰! 交代だよ、起きて」

「うぅん、バケツプリン?」

「どんな夢みてるのかわからないけどさ、見張り、交代だよ」

「うう。オッケー」

 眠気眼(ねむけまなこ)を擦って、天汰は起きる。


「クソねみぃ」

「おはよう」


 現在、大和→天汰→クラリア&アイリスの三交代で二時間おきの夜の見張りをしている。この選出理由は『夜間の急なモンスターの襲撃に対応できるか』という観点だった。大和、天汰なら普通のモンスターなら一人で対応できるし、クラリアとアイリスも二人一緒なら連携して倒せるモンスターも多い。


 他のメンバーは防御面に不安があったり、そもそも戦えなかったりと選考されないのはいうまでもない。


「じゃあ天汰、後の見張りはよろしく」

「うい」

 大和は先ほどの天汰と同じように焚き火の前で横になる。


「おやすみ」

「おやすも」

 疲れがたまっていたのか、横になるとすぐにいびきをかき始めた。


「お前も疲れてたんだな、俺もだけど。さて……」

 天汰はちゃっかり毛布のようなものを着て寝ている鈴木のところまでいく。


「そういやコイツ、馬車の中にいる女性に毛布渡さなかったんだよな」

 馬車の中にはクラリア、アイリス、ギルド嬢の三人が休んでいる。毛布は一応あと二枚あって、クラリアに一枚、アイリスとギルド嬢が一緒に一枚使っている。

「まあいいけど」

 天汰はしゃがんで鈴木を揺り起こす。


「すーさん、起きて」

「……」

 鈴木は恨めしそうに片目だけ開けて、天汰を睨むとすぐに二度寝しようと目を閉じる。


「いやいや、悪いけどさちょっとだけ俺の話を聞いてくれない?」

「フザけんなカスねみぃんだよ寝かせてくれよあとで300円あげるから」

「いやいや、この世界でなんの意味もなさないよね300円」

「チッ、あー、クソ。なんだよ」


 寝起きの鈴木はかなり機嫌が悪い様子。


「なんか申し訳ない」

「謝るくらいなら起こすなよ。で、なんすか」

 改めて鈴木は天汰に聞き直す。


「うん、あのさ、黒石のことでちょっと聞きたいことがあるんだ」

「あー、うん」

 時々首をカックンと、眠い時特有の動きをさせながら鈴木は聞く。


「すーさんってさ、人を操るというか動かすというか、なんて言えば的確なのかわからないけど、とにかく『狙った方向にやる気にさせる』のがうまいじゃん」

「意識・無意識操作のこと? それとなくこちらがサインをだして相手の意識・無意識を刺激してその後の行動をある程度縛れるアレのことかい?」


「うん多分それ」

「それが?」


「すーさんならさ、もっとうまく黒石にやれたんじゃないかと思ってさ」

「…………ん? どゆこと?」

 眠いのも相俟って鈴木は天汰の言いたいことを理解できない。


「俺料理作るときになんとなくすーさんたちの会話を聞いてたんだよ。でさ、ちょっと険悪っぽくなって、とっさに俺が割って入ったけどさ。すーさんならやろうと思えばあんな雰囲気にならずに済むんじゃないかと思ってさ」


「買いかぶりすぎだけど。んー、まあ、しいて言うなら、元々こっちの世界に来てから黒石の俺に対する評価はちょっとずつ下がっていた訳ですよ。そこで、今回の南地区の虐殺事件で気落ちさせないために、絶賛評価下がり中の俺の印象を更に悪くすることで、黒石のネガティブな感情を黒石自身ではなく俺に向けるようになればいいなー、くらいの気持ちでやってるだけ。うまくいくかどうかは知らん」

「な、なるほど。ちゃんと考えあってのことだったのか」


「んにゃ、考えというよりも願望に近いね。もっと時間があればいい案が考え付くかもしれないけど、生憎黒石のことを考えている暇はないわけだよ」

「というと?」


「ソーマのこと。どうすればアイツに一泡吹かせることができるのか考えている」

 ソーマ、天汰はその独特な人物のことを思い出す。


「アイツが元の世界に帰るためのカギになるのはいうまでもない」

「まあ確かに、あの人? 異世界のことに一枚噛んでるっぽいよね。あと俺は別に帰るつもりはないけど」


「そろそろネット環境ないと俺は死にそう。二次エロリ画像とかもう随分と見てないしもう気が狂いそう」

「お、おう」

少しだけ引く。でも天汰も嫌いではない。


「まあ冗談はさておき、帰るか帰らないかは別として、手段は知っておいて損はないだろう?」

「まあ、そうだな」


「アイツかアイツのねーちゃんか誰だか知らないけど、この旅を仕組んだ方は何か意味があってのことだとおもう。だから普通に帰りたいですと言ってもはいそうですかとはならないだろう。だから、どうにかしてアイツを出し抜いて帰る方法を聞き出す」

 鈴木はそう意気込みを述べた。


「という訳で天汰。お前の防御力チートはこれから頼りにしているぞ!」

「任せとけ!」

 何故今の話から突然その流れになったのか、天汰はその意味をまだ理解できずにいた。


「じゃあもう寝るわ。見張りガンバ! みすやお!」

「おやすみ!」

 うまいこと話をズラされたことに気が付いていない天汰は、そのまま馬車に昇り、見張り業務に入った。


「さーて、二時間頑張りますか」

 ちなみに、二時間ごとに交代だが、時間をはかる正確なものがないので割とその辺適当なのだが、この正確な時間が分からないというのがこの後ある悲劇を招くことになるのだが、それはまだ天汰は知ることはできずにいた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ