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異世界冒険記  作者: 九重九十九
ペルウィーン国編
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ジルの決断

「うっひょー! これは掘り出しもんだぜ!」

 既に家主はどこかに行ったのか、半壊した家を鈴木達がいくら物色しても誰も咎める者はいない。


「調理室が無事でよかったです。果物や干し肉など無事なものがたくさんありますね!」

 ギルド嬢の顔も自然と笑顔になる。


「すーさんすーさん、床下からこんなものがでてきたよ」

 そう言って大和が持ってきたのは大きな瓶壺だ。その中にはお金がぎっしりと詰まっていた。


「おお、いいねー。ギルド嬢さんや、これっていくらくらいになるかね?」

「うーん、これ全部銅貨ですね。まあ、それでもこれだけあればかなりの金額になると思います」

「いいじゃん! 大和そのまま持って帰ろうぜ!」

「おう!」

 三人は完全に泥棒を満喫していた。


「はあ、本当にどうなってるの?」

 黒石は一人だけ状況が全然わからない、鈴木や大和に聞こうともはぐらかされるし、ギルド嬢には避けられているような節さえある。そもそも、なんでギルド嬢がいるのかも黒石はわからない。

 鈴木や色々なものに対しての不信感だけが募ってゆく。


(そもそも、この状況はどうなってるの? すーさんはニーナさん達を置いていくし、ジルさん達の姿は見えないし、この辺りは何故か酷い有様だし)

 ひとつ、黒石の中で引っかかるものがある。

 黒石はしばらくの間の記憶がないということ。そして、この街の破壊痕が自分の魔法を使ったらおそらくこうなるだろうという痕をしていること。

(考えたくはないけれども、もしかして僕は……記憶がないんだ、もしかするとそうなのかもしれない、そしてみんなは僕にそのことを隠している)

 確信にも似た何かを感じて、黒石は神妙な面持ちで鈴木に声を掛ける。


「ねえすーさん、正直に答えてほしい。この惨状は――この壊滅的な街の惨状はもしかして僕がやったのかい?」

 ほとんど答えになっている黒石の問い。

 大和、ギルド嬢の二人が固まる。気まずい空気が流れる。

 だけど鈴木は、


「んなわけねーだろJK(じょうしきてきにかんがえて)、バカなこと言ってないでさっさと使えそうな物探せ」


 くらいの超適当な返しをして、自らも何か使えそうなものがないかを探しに戻る。


(……だよね! すーさんならそう言うよね! というか、こっちが割と真剣な話をするのに真剣に答えてくれない辺りがすーさんらしいよね!! まあ、だけど、この返し方なら、本当に僕は何もしていないのかもしれない)

 ひとまず、自分を疑うのをやめて、黒石も泥棒行為に身を染めるのだった。


 ・ ・ ・


 南地区の冒険者を一掃したことによって、ペルウィーンは国を支えるのに必要な兵力を失った。反乱としてならこれだけでも十分な成功と言える。

 しかし、『アルファリエンス』の目的はそこまでに留まらない。


 ギルド中心のこの連合国の在りようを変えるための戦いなのだ、ゆえに、ここから更にペルウィーンギルドを落とさなければいけない。


 手駒は多くそろえてはいる、『クナスナイル』のメンバーも出てきている。

(だが)

 ジルの頭の中でにんまりと下品な笑みを浮かべる鈴木と天汰が浮かんでくる。


(アイツらは、余計だった。あの社会不適合者と妙な正義感の男、大人しく従ってくれていればいいものを、あの特殊防御はかなり厄介だ。そしてあの社会不適合者、アイツは戦闘力皆無のくせにことごとく盤面をひっくり返していく!)

 知らずのうちに、ジルは怒りで握り拳を握る。


(奴らが南地区にいるのは分かっている。どの道、南地区に行くのだ)

 ジルは再配を考えだす。

(部下数人と『アルファリエンス』の部隊は西地区と北地区のにらみ合いに行かせる。俺と数人の精鋭部隊で南地区にいき、東からの撤退部隊と合流、そこから敵部隊と交戦にうつり、一気に東地区を取り戻す)


 そこまで考えていたジルに風精霊から連絡が入る。

 目には見えなくても確実に何か近くにいる、そう感じられる何か、それが風精霊だ。

 耳元に風精霊を飛び出した魔法使いの言葉が運ばれてくる。

『報告申し上げます! ジルさまが注意しろと言っていたあの連中! 南地区の関所を――外との扉を破壊して国外に逃げ出しました!』

 術者の言葉を伝えた風精霊は、すぅっと消えていく。


「バカな! そんな、それでは外からモンスターが流れ込んでくる可能性があるじゃないか!」

 もしそうなれば、打倒ギルドどころの話ではない。

 ジル達は国を変えることを決意したのであって、国を終わらせることを決意したのではない。


 いまのペルウィーンは国を守る冒険者が数少なくなっている。『アルファリエンス』がそうしたからだ。

 自分たちのしたことのせいで自分たちの首を絞めるとこになるとはジルは全く思ってもいなかった。


 ジルの中にどろどろとした感情が芽生える。

 怒り、殺意、どう足掻いてもここから鈴木達を殺しに行くのは合理的な判断ではない。煮え湯を飲まされるような気分でジルはひとつの決断を下す。

 この状況を乗り越えるにはギルドと手を組むしかないと。


(確かギルスとかいう奴、俺とアイツほどの実力者がいれば南側のモンスターが押しかけてきてもなんとか防衛できるだろう)


 ジルは部下の一人を呼び寄せてこう伝えた。

「南地区の関所のトビラが破壊された。これを北地区のギルドへ伝えろ。それと、緊急事態での和睦を申し入れろ」

 部下は驚いた顔をしたが、すぐに了解とその場を去る。


(さて、こんなクソみないなことを考え付くのはアイツしかいないだろうな。鈴木、キサマを次に見かけた時にはこの手でぶっ殺してやる!)

 ジルは革命を諦め、ペルウィーンという国を生き残らせるために動き始めるのであった。

ジルくん顔真っ赤不可避。

ペルウィーン編も終わりが見えてきましたね。

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