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異世界冒険記  作者: 九重九十九
ペルウィーン国編
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アイリスちゃんがあるじのことをどう思っているか → 悪人

 エルフ兄妹から『善意で』馬車のある場所を教えてもらった鈴木達は、何事もなく馬車を見つけて、当然のようにそれを乗っ取る。ちなみに、鈴木達が乗ってきた馬車は小さくて全員が乗り切らないので乗り捨てた。


 すっかり馬の操作が板についた大和以外の異世界組五人と、『とある事情』で一緒に乗せているギルド嬢の六人が馬車の中に入ると、流石に少し狭く感じる。

 エルフ兄妹? 置いてきた。


「大和ー! あとはこの道をまっすぐ進めばペルウィーンの出入り門が見えてくるとりあえずそこまで進め! 馬車を壊されるようなヘマはするなよ」

 チラリと天汰の方をみて外で馬を操る大和に呼びかける。


「お? それは俺に対する嫌味かな?」

「いや別に? ただ、全てを守るナイト様が同行しながら馬車を二度も壊されるという奴がいたらしい」


「仕方ないじゃん! あんなの無理だから! すーさんなら守れたというのかよ!」

「天汰さん落ち着いて! 鈴木さんの煽りなんて聞きなれているはずですよ!」

「そうです! そうやって反応するのはあるじを喜ばせるだけですよ!」


 狭い馬車の中で鈴木に掴みかかろうとする天汰をクラリアとアイリスが止めに入る。それをみてニマニマと笑っている鈴木は、今が国内戦争中だということを多分忘れているのだろう。


「で、そういえばなんですーさんはここにいるの。北地区のギルドにいたんじゃないの?」

 天汰は機嫌悪けれども、何故鈴木がここにいるのかそれを聞いていないことを思い出してそれを聞く。


「ん? 裏切ってきた」


「……は?」

「え、あるじ、いま何とおっしゃいました?」

 驚いたのは天汰だけではなく、アイリスも驚いていつもよりも言葉遣いが丁寧だ。


 そしてその中で一番驚いてそのまま表情を固まらせているのは桃色の髪のギルド嬢だろう。


「ど、どどど、どういうことですか!?」

 ギルド嬢は鈴木に掴みかかって問いただす。


「まあいろいろあったんだよ。ビビったぜ、ギルド内部に裏切り者がいてギルスと俺の寝首をかきに来たりしたんだもん、やべーよ死ぬかと思ったからな」


「ちょ、ちょっと待ってください、私そんなこと聞いていませんが?」

 クラリアも驚いている。


「そりゃ言ってないし」

「なんで私に教えてくれないんですか!」

「なんでクラリアには教えておくみたいに考えてるの?」


 確かに言われてみるとそうかも、とクラリアは思い直す。

「まあ、幸いなことに俺には怪我はないし、ギルドの指揮が崩れることもなかったから良かったんだけどね」

「それからどうしたらギルドを裏切ることに繋がったんですか!」

 アイリスが鈴木を責め立てる。

 鈴木はきこえなーいと言うように両耳に指を突っ込んでる。


「むぐぐ、あるじのアホ!」

 アイリスは鈴木の両耳に突っ込まれている両手を、自分の両手で強く叩いた。

「あいだ!」


 結果、鈴木は自分の指で、両耳を痛めることになる。


「ちょ、アイリスちゃん!? それはやりすぎだよ!?」

 流石に黒石が止めに入る。


「――いや、いい。大丈夫、ご褒美だ」

「あ、やっぱりもう一回くらいやってあげて」

「いや、ちょい待って! 意外とかなり痛かったから! 二度目はもういらないから!」

 流石に危機を感じた鈴木。本当の所を語りだす。


「正直に言うと、ソーマのいう条件をクリアでると思ったからだよ」

「と、言うと?」

 クラリアがさらに深く聞いてくる。


「ねえ天汰、ソーマって誰?」

 ソーマの事を知らない黒石が天汰に質問する。


「んー、マコちゃんに話すとちょっとややこしくなるからその辺は適当に聞き流してて」

 ペチン!

「解せぬ!」

 黒石は天汰にビンタをかまして、「わかった」と言った。


「私もそのソーマさんという方を知らないのですが……」

「以下同文」

 鈴木は面倒なので教える気はない。


「まあ、後で暇だった上に気が向いたら教えるよ」

「私、それ割と重要な事だと思うんですけど! この人の気紛れで情報が手に入らないなんてことがあり得そうなんですけど!?」

 哀れなギルド嬢が抗議するが鈴木は聞く耳を持たない。


 構うことなく鈴木は分かる人向けに話を続ける。

「みんなソーマの言ってたこと憶えてる? 『アルファリエンス』がこの騒動を成功させる条件」


「成功させる条件、というか、その可能性が高くなったのはジルさん達が『アルファリエンス』が騒動を起こすタイミングに偶然帰ってきて、その騒動に加担するからだろう?」

 意外と細かい所を覚えている天汰。


「そうだな。で、大和や黒石のアホ共もなんやかんやあって加担してた訳だが、今の状況を見てみてほしい。何か気付くことはないかな? はいアイリスちゃん!」

「え? えっと」


 急に名指しで指名されて慌てるアイリス。だが、しっかりと考えは持っていたようで鈴木の無茶ぶりに答える。

「わたしたちは黒石さん、大和さんの奪還に成功しました。その上、『クナスナイル』のギルバートさん、ニーナさん、ホーリィさんを打ち倒しました。これで『クナスナイル』の戦力は激減されたといってもいいと思います。だからその、あるじのいう条件? はクリアされた? んでしょうか?」


 ヴァルキュリーの特性として、戦闘面での頭の回転は良かったみたいだが、ソーマが言っていたことの話になるとよくわからなくなっているらしい。


「はい、正解! よしよしエライエライ!」

 鈴木はアイリスの頭を撫でようと手を伸ばすが、ペチンと伸ばした手を叩かれる。

「……え?」

「いや、なんで『それおかしくね?』みたいな顔してるのかこっちの方が聞きたいくらいだけど、普通の反応だからねそれ」

 天汰がツッコミを入れる。


「でも鈴木さんが言いたいことは分かりました。ものすごく分かりやすく言えば『運命の歯車ズレる要素減らしたし、味方も戻ってきたから、これ以上危険に身を晒すのも馬鹿らしい。丁度ギルド内部の裏切りもあった事だしそれを口実に裏切ってさっさと国外に逃げよう』と、つまりそういうことですね?」


 クラリアは確認のために鈴木に聞く。


「うわぁ……なんというか、うん。いやね、俺の考えはそれであってるんだけど、今の会話だけで瞬時にそこまで理解したのか……えー、うわぁ」

 何故か鈴木にドン引きされた。


「ちょ、ちょっと待ってください!」

 みんなの注目を集めてストップをかけたのは桃色の髪のギルド嬢だ。


「え、この馬車はペルウィーンから出るんですか!?」

「俺はそのつもりで大和に指示だしてるけど?」

「そんな! じゃあ私を下ろしてください!」

 悲痛な顔でギルド嬢は訴えるが、


「イヤだね!」


 当然のように鈴木は断る。

「そんな、なんで、どうしてですか!」

「こっちは聞かれちゃまずい会話をしてるんだ。アンタはそれを普通に聞いていたジャン」

「じゃあ――ここで聞いたことは誰にも言いません!」


「どうやってそれを信用しろと? そ、れ、に、今は外を歩けばどこで『アルファリエンス』の連中と鉢合わせるか分かったもんじゃない。あいつらは冒険者とギルド関係者を優先して攻撃している節がある。アンタみたところ、オラオラ戦えるような体でもないし、魔法使いが持ってる感じの杖も持ってないみたいだけど、もし馬車から降りたとして『アルファリエンス』の奴らと戦えるの?」

「わ、私だって、杖がなくても魔法くらいは……」


「ふーん? 天汰の肩代わりがなかったら多分簡単に死んでたようなキミがねぇ。はい天汰とクラリア~? この子、君たちが一生懸命に命を懸けて戦っている中で何かしら役に立ちましたか?」

 わざと、嫌みったらしい言い方で、鈴木はギルド嬢にプレッシャーを掛けながら天汰たちに聞く。


「……正直、俺としては足手纏いだった」

 天汰は今までの付き合いから、鈴木がギルド嬢を言い包めようとしているのだと気が付く。正直こういうやり方はあまり好きではないが、実際問題このままギルド嬢が『アルファリエンス』と戦闘をすればまず間違いなくやられるのは目に見えている。


 そうなると自分たちと一緒にいた方が馬車を降りるよりも何倍も安全だ。

 多分鈴木の狙いは降車を諦めさせること、それなら天汰の目標とも被るので天汰は鈴木に便乗することにする。


「断言するけど、ギルドのお姉さん? がこの先一人でギルドまで帰り付くまでに十回は殺されると思う」

 言って、そういえばこの人の名前や年齢なと全く知らないことに気が付く。


(ぱっとみ、年上なんだろうけど、ただようロリっぽさ。OLだと言われても不思議と納得がいくけど、中学生ですと言い張ればそれで通りそうな感じ……やっぱ異世界は不思議生物いるなぁ)

 なんてどうでもいいことを考えていた。


「まあ、私としましても、ギルド嬢さんは戦えないと判断します」

 クラリアもすぐに鈴木達の意図を察して援護射撃を行う。


「命を長らえたいのであれば、大人しくついてきた方が身の為ではないでしょうか?」

「そ、そんな~」

 ギルド嬢は今にも泣きそうな顔になる。


 鈴木は、そんなギルド嬢の肩にポン、と手を置く。

「大丈夫、ちょっと厳しい思いはさせてしまうけれど、手頃な国に着いたら君を解放するよ。それまでは馬車馬のごとく働いてもらうけどね」

 キミ、魔法くらいは使えるんでしょ? そうニッコリと鈴木は微笑んだ。


「……やっぱり、あるじはどちらかと言うと悪人です」


 アイリスは誰に言われるまでもなく、善悪の判断を付けれていった。

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