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異世界冒険記  作者: 九重九十九
ペルウィーン国編
39/69

エルフ兄妹との決着 もしくは 旧仲間に脅しをかける主人公のクズ

 鈴木からの指示を受け、クラリアは動くことにする。

 まだ天汰がニーナに時間稼ぎをしていたが、構うことはない。十手を構えてニーナと黒石に突撃する。

「はああああああああああ!」

「――だから、俺としては……って、クラリアさん!?」

 案の定、鈴木は天汰に説明を全くしていないようだとわかったクラリアは、しかしいまから説明するのももどかしい。


 ニーナ、黒石との距離は十五メートルほど。

 黒石の爆発魔法の範囲は直径十メートル。つまり、五メートルほど進めば、相手は爆風に巻き込まれるので黒石の爆発魔法は使うことができないのだ。問題はどこかにいるはずのホーリィの弓だが、鈴木達がどうにかしているみたいなので飛んでくる様子はない。


「くう、黒石くん!」

「『バルメ・フレオディア』」

 黒石は、相変らず感情のこもらない表情と声で呪文を唱える。

 右手を前に出して、そこに赤色の球体ができる。それがまあまあのスピードでクラリアに向かって来る。


「見えているのであれば、十手でッ!」

 クラリアは赤い球体に合わせて十手を振るう。すると、赤い球体は霧に消えるように揺らいで無くなった。


 クラリアは念話での鈴木の言葉を思い出す。

 『ソーマの話のおかげで黒石のバカは魔法で操れていることが分かっている。だったらクラリアの十手で魔法効果が解けるはずだ』あと『は? どうすれば解けるか? とりあえず十手で黒石を殴っとけ。最悪気絶させてあとからソーマに何とかしてもらおう』とも言っていた。

 なんとも無責任だが的外れなことを言っている訳ではない。


(……まあ、他にいい案がある訳ではありませんしね。スイマセン、黒石さん)

 少々申し訳ないと思いながらも、クラリアは更に接近し、十手で黒石の頭をガツン! とぶん殴った。

 何かを打ち消した感覚をクラリアは感じ、同時に黒石は仰向けに倒れる。


 直後、背後から爆発が響いた。

「な、どうして!?」

 黒石さんの魔法は打ち消したはず、なのにどうして。クラリアは疑問を持って振り返る。


「私の専門は、付与・強化の魔法なんだけど。それだけしか使えない訳じゃないのよ。例えば、幻影魔法で黒石くんの魔法を見えなくして、フェイクの幻影を作り出す。アナタが打ち消したのはフェイクのほう」

 頼んでもいないのに、ニーナが解説をする。

 その声は、どこかとても、哀しそうで、残念そうで、辛そうだった。


「交渉決裂ね。これで天汰くんの肩代わり能力は一瞬使えない。その間に兄さんの弓矢が天汰くんを貫くわ」


「いや、ニーナさん。残念だけどそれはないよ」

 ニーナの言葉を否定したのは、爆発に巻き込まれた天汰だった。

 しかも天汰は、爆発魔法を直撃し、近くにいたギルド嬢のダメージを肩代わりしたのに、痛みを感じていないようだ。


「な、なんで、普通に立っていられるの!? それよりも、兄さんの攻撃は?」

 ニーナは分かりやすく動揺する。


「ニーナさん、さっき自分で言ってたじゃないですか。鈴木くんなら多分こういう状況でもニーナさん達を騙してなんとかするって」

「うそ、じゃあ!?」


「俺にはすーさんがどこまで考えているのか全く分かりませんが、ホーリィさんの方はすーさんが押さえているみたいですよ」

 正確には、大和がホーリィを倒したのだが、念話でホーリィを押さえたと天汰に伝えたのは鈴木だった。


「あと、俺のことですが、どうやら黒石の爆発魔法は俺一人と肩代わり一人分なら受けきれるみたいですね。考えてみれば俺が肩代わりする人数が減ればそれだけ受けるダメージが減るのは当然ですよね」

 守れたのはギルドのお姉さん一人だけか、と、天汰は思う。


 一人守れたと考えるのか、一人しか守れなかったのかと考えるのか。ナイトとして天汰はまだ駆け出しなのでどう考えるのが正しいのか天汰はわからない。

 だけど、南地区の主戦力であろう黒石とエルフ兄妹を倒したことで、これからの被害をかなり防げたはずだと思った。


「ニーナさん、降参してください。断れば、ホーリィさんの命の保証はできませんよ」

 先ほどニーナは信頼で天汰たちを降参させようとしたが、鈴木の指示を受けているクラリアは脅しで従わせようとする。


「……分かった、投降するわ。だから、兄の無事を約束して」

「分かりました。命の保障だけはします。それ以外は、ニーナさんの態度しだいです」

「……分かったわ」

 ニーナは項垂れた。だけど、その顔には少し、安堵の表情が交じっているのをクラリアは見逃さなかった。


 ・ ・ ・


 鈴木、大和の方も似たようなものだった。


「ホーリィさんお久しぶりです」

「……」


 不意打ちで武器を壊され、苦手な接近戦を大和に強制され、更にアイリスの格闘、鈴木の拳銃まで加わり、さしものホーリィも数には勝てずに左腕に深い刀傷を受けて倒された。


 ホーリィは地面に座らされ、後ろに刀を抜いた大和、目の前には鈴木とアイリスがいる。

 下手な動きをするといつでも大和が斬首できる立ち位置だ


「ダンマリですか。まあ不意打ちかけたことは謝りますよ、でもあなたも天汰達にあの欠損級の狙撃してたでしょう? おあいこってことで」

「……」

 ホーリィは鈴木を鋭く睨んだまま反応はない。


「まあ、いいや。伝えることだけ伝えますよ。ニーナさんの命が保証してほしければ、降参してください」

「外道が」

 初めてホーリィに反応があった。


「うはは、褒め言葉として受け取っときますよ。まあ、アナタの態度がニーナさんの命を左右することを覚えておいてください」

「……クッ」


「さーて、どうしてくれようかなー。ククク」

「あるじ……もうどっちが悪いのかわからなくなってますよ」

 外道はあながち間違いではないのではないかと、アイリスは思った。

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