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異世界冒険記  作者: 九重九十九
ペルウィーン国編
32/69

こいつ直接脳内に・・・!

 ギルド作戦会議室で鈴木とギルスはペルウィーンの全体地図を広げて作戦会議をしていた。


「北地区の防衛ラインはここ、このラインを越えられるとギルドは避難してきた一般市民を守ることが難しくなる。ギルドの持ちうる最大戦力をもってしてもこのラインを守らなければいけない」

 鈴木はギルスに力説する。


「なら、俺がここに籠るってことで最大戦力の駒をここに置こう。ちゃらんぽらんに見えるだろうが、俺はこのギルド一番の戦力になる」

「アナタの役割は、敵のどんな攻撃にも耐え、一般人の盾となるような役割になります。本当にできますか?」


「愚問だね。残念だけど僕は強いんだ。この場所は何があっても守りきるよ」

「では次です。ギルドの最初の作戦目標は『一般人の国外避難』および、『南の街の冒険者とコンタクトを取る』ことになります」


「敵への反撃じゃないのか」

「敵性勢力の多き、味方の数、こちらが抱えているハンデ、これを考えるとまず南の冒険者たちと合流して、こちら側の戦力を増やした方がいい。誰しもがアナタみたいに強くはないのですよ」


「成る程。言われてみればそうだな」

「となれば、ここから最短ルートはここをこう行って、この通りを突っ切って進むのがいいんじゃないかと思います」


「いやちょっと待ってくれ、この通りだが、実は地図上では一本道だが、本当は細かく枝分かれしている道なんだ。だから、ここを通るよりかはこう、少しだけ迂回してこの細道をいくのがいいんじゃないか?」

「なるほど、地図上ではわからない道は私が知る由もない。準備した地図のズボラさが出ていますね」


「勘弁してくれよ、正確な地図なんてすごく高いんだぞ、ある程度使えればそれでいいだろ」

「ある程度ね、私の今のルート案内はある程度の範疇に収まっていないんですが?」

 とまあ、仲良くルートを決めていた時だった。


「ギルスさま、大変です!」


 ソバカスのギルド嬢が慌てて部屋に入ってきた。

「なんだい、騒々しいよ」

「す、すいません。ですが至急報告が、敵が、攻めてきました!」


 くしくもそれは、鈴木が最終防衛ラインと決めた所での出来事だった。


 ・ ・ ・


 通信機器を用いてのブリーフィング。


『はい、という訳で君たちにはまず最終防衛ラインを守ってもらいます』

「!?」

 アイリスたちは応接間の方で待機をしていた。


 仲よさげにナチュラルに相手を罵り合う鈴木とギルスが、ある程度の方針を決めると二人して部屋を出て行ったからである。

 勝手に出て行く訳にもいかず、どうしようもない状況での待機だったのだが、急に鈴木の声が頭の中に響いてきたのだ。


「――なるほど、これがプレゼントの力ですか。音声通信機とはまた違っていますね」

 隣りに座るクラリアにも鈴木の声が聞こえた――いや、感じられたようだ。


「うえ、なんだこれ、声が頭の中に直接入ってくるような、なんか気持ち悪い」

 天汰はこの感覚が苦手なようだ。


「あるじ、どこに居るんですか?」

『おお、愛しのマイ奴隷ちゃんの声が聞こえる、「こいつ直接脳内に・・・!」ってやつだな』


「鈴木さん、今の言葉、どういう意味です?」

 どうやらクラリアが一番最初に、状況慣れしたようだ。そしていまの意味だが、もちろん最終防衛ラインの方を聞いている。


『いまから指定するエリアに行って、戦ってほしい。その場所を落とされるとギルドは一般人を守れなくなる。守りの戦いになると思う、天汰、さっそくお前の力を使う時がきたぞ』

「おう、任せとけ」

 天汰のセリフの直後、応接間の扉が開く。


「あ、あの、ギルスさまが早馬を用意したと伝えろっていわれまして、その伝わりますでしょうか?」

 入ってきたのは、桃色のさらさらした髪のギルド嬢だった。自身なさげなその雰囲気がまもってあげたくなる保護欲を刺激する。


「あるじが準備させたのでしょうね」

『そういうこと。悪いけど今は時間がない、君たちに頼んで悪いと思うけどできるだけ急いでくれ』

 鈴木のセリフに、いつものような余裕は感じられない。それほどの事態なのだとアイリスは認識する。


 クラリアが先導して席を立つ。

「案内を、お願いします」

 クラリアはこれから確実に起こる戦闘に、静かに胸を鳴らしていた。

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