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異世界冒険記  作者: 九重九十九
ペルウィーン国編
30/69

ごちゃごちゃ言われたが、結局俺らがする流れだコレ

 ペルウィーンギルド支部、今ここでかつてないほど異常な事態が起きていた。

 元々の『アルファリエンス』の騒動とは関係なく、確認できるだけでギルドにいる全員が時間が止まったかのように動かなくなっていた。


 そして、その中で唯一動いている男、ソーマ。

 どうやらクラリアはソーマの事を知っているようだが……?


 ・ ・ ・


「まずは自己紹介をしよう」

 優男は言った。


「僕はソーマ。音声言語で一番近いのはこのソーマという言い方が一番近いから、そう呼んでほしいな」

 糸目でニッコリと笑いかけてくる。


「はいはい、ソーマさんね。もしかして、アンタがこの旅を仕組んだヤツで間違いないかな?」

 鈴木はもしてしてというある予感に従い、ソーマにそう聞く。


「ビンゴ、大正解だよ。僕がクラリアちゃんを異世界に、つまりこの世界に連れてきた張本人。だけど、君たちがこの旅に参加したのは僕もびっくりしたよ。つまるところ、この僕をもってしても予想外っていうことだね」

「なるほど。じゃあ俺達、天汰、大和、黒石、あと俺ら四人は選ばれて、ではなく偶然に、旅をしているってことなんだな」


「はい、またまた大正解。君の言う通りだよ」

 ソーマはニコニコしながら言う。

「ああでも、ちゃんと死なないようにお姉ちゃんが運命で守っているから、そこは心配しないでね」


(ほう、コイツには姉がいて、なんぞ運命でも操れるのか)

 なんか桁が違うなと鈴木は思う。

(別次元というか、いや、住んでる世界からして多分違うのかもしれんが……)

 なんてことを考えていると、ソーマが続きを話してくる。


「さて、本題に入ろうか。本来、僕らはこの世界に干渉しない訳だけど、それはある例外がある」

「例外?」

 天汰が疑問を浮かべる。


「そう、例外、特別ルール、非常事態、そんなところだね。さてさて、その例外を話す前にひとつ、君たちに知っておいてほしいルールがある」

「ルール、ですか?」

 アイリスが不安げに問いかける。


「そう、それはね、『世界には運命がある』ってこと。分かりずらいかな、なるようにしてそうなる、主人公を中心に回っていて、始まりから終わりまでちゃんと決まっているって訳さ」

「しゅじんこう?」

 アイリスは分かっていなさそうだが、鈴木と天汰はなんとなくソーマが言いたいことが分かった。


「世界があって、主人公がいて、ストーリーは決まっている、そういうことですか?」

「そうそう、天汰くんは呑み込みがいいね。そういうことだよ」

 ぱちぱちと、ソーマはゆっくり拍手をする。


「これは原則的にどの世界でも有効なルール。どの世界にも主人公がいて、その人たちが中心に世界は回っていく。まあ、まだ主人公が生まれていないなんてこともあるんだけどね。でも、これには例外があってね、例えば、その世界にないはずの存在が干渉すると、歯車が狂うようにストーリーも変化する場合があるんだ。今回の場合は、『アルファリエンス』の騒動がコレにあたるね」

 そうそう起きるはずもないんだけどね、とソーマは付け足す。


「それで、僕が出てきた理由だけど――」

「歪んだ歯車だか、ストーリーだかを修正しに来たとかそんなんだろう?」

「そうそう、鈴木くん。素晴らしいね」

 ソーマは糸目を更に細める。


「本来なら、『アルファリエンス』のこの騒動は失敗するはずだった。だけど現状、『アルファリエンス』はこの計画を成功させる可能性が非常に高い。本来はこの世界ではありえないことだ、これはこの世界の主人公のとる行動に後々強い影響を及ぼす可能性がでてくるんだ。さて、なにが『アルファリエンス』の計画を助けることになったと思う?」

 ソーマが問いかける。

「それは……」

 クラリアは考える。


(ソーマさんは先ほど、天汰さん達の旅の参加は予想外だと言っていました。ならば――)

 答えに行きつく。

「天汰さん達の存在でしょうか」


「うん、素晴らしい回答だよ。『クナスナイル』のリーダーであるところのジルくんだけど、天汰くん、大和くん、そして黒石くんという強力な駒を手にいれました、それによって本来なら考えなかったペルウィーンに早く帰ることを思いつく。結果として、『アルファリエンス』の計画の実行タイミングと『クナスナイル』のペルウィーンに帰ってくるのが偶然重なったことで、『アルファリエンス』の戦力が拡大、更に、黒石くんと大和くんだけど、実はこの二人、今の段階で魔法で操られてるんだよ」

「は!?」


「うんうん、訳が分からないって顔をしてるね。ペルウィーンにはサエルっていう魔法の研究科がいるんだけど、その人が新しい魔法を開発したんだ、意識の乗っ取りといえば分かりやすいかな? つまりこの魔法のせいで、黒石くん、並びに大和くんは『アルファリエンス』の人形になっちゃったという訳さ」

 ソーマはニコニコ顔でそう言った。

「は? 黒石と大和が? 人形、洗脳ってことか?」


「洗脳、そうだね、人形なんかよりももっと伝わりやすいね。そう、二人は洗脳されて今は『アルファリエンス』側についているよ。この二人と『クナスナイル』分の戦力、これが原因で『アルファリエンス』は計画を成功させることができる」

 ソーマは話を続ける。


「さて、話を最初の所に戻そうか。僕がこうして出てきたのは、この歪んだ流れを作らないため。いまならまだ間に合う。君たちにはこの流れを止めてほしい」

「偉そうなこと言ってないで、自分でなんとかできるんじゃないか? アンタなら」

 鈴木はそう言うが、


「確かに、僕の能力なら簡単に『アルファリエンス』を滅ぼせる。けど、黒石くんや大和くん。ジルくんやニーナちゃん達も簡単に殺せる。僕としてはそれでもいいんだけど――」

 ソーマはスゥとほんの少しだけ目を開ける。


「僕がやってもいいのかな?」


(これは、つまり)

 鈴木は思う。

(コイツが動いてすべてを滅ぼすか、俺らが超絶死に物狂いでかーなーり頑張って、誰も殺さずに事態を収束させるか、どちらか選べってことか!?)


 天汰は自分の顔が引きつるのを自覚する。

(でも、相手はジルさんや師匠達だ、黒石や大和だっているのに、勝てるのか、俺達は?)


 しかし、とクラリアは思う。

(やらなくては、この世界の運命が変わってしまうのでしたか? 異世界にお邪魔している身分としてはこれを放置してはおけない。無視するとソーマさんがやることになる、それは、おびただしい数の犠牲が出ることを意味する)


 三人が一瞬で同時に同じことを考える。そして、

「……やる、しか、ねーみたいだな」

 鈴木は額を押さえながらそう言う。

 天汰も顔を引きつらせながら、クラリアも覚悟を決めて。ただ一人、アイリスだけはよくわかっていないみたいだが、その顔はやる気に満ちている。


「――うん、いいね、最高だよ。これは君たちのレベルアップの旅なんだ、僕なんかがしゃしゃり出るよりよっぽどいいよ」

 ソーマは、糸目で笑顔ツラに戻った。


「そんな君たちに、プレゼントがありまーす」

「プレゼントだと?」


「そう、いくらなんでも今の君たちでは『アルファリエンス』はおろか、ジルくんひとりで四人とも全滅するくらいだからね」

「ジルさん意外と強かったんだな」

 天汰は昨日の事を思い出し、呟く。


(多分あれは、ジルさんが冷静さを欠いていて、尚且つ武器も持っていなかったから逃げられたんだ、次ジルさんと対面するとき、俺は勝てるのか?)

「確かジルさん、Bランクの冒険者でしたね、我々とはそもそもの格が違う訳です」

 クラリアは記憶にあるジルの事を思い出す。

「でも、止めますよ。絶対に」


「まあまあ、僕の話を聞いてよ、プレゼントだよプレゼント」

「スイマセン。それで、プレゼントというのは?」

 クラリアの問いにソーマはうんと頷く。


「君らもレベルアップしてるからね、そのご褒美という訳さ。まずはクラリアちゃんから、左手を出して」

「? こう、ですか?」

 クラリアは言われた通り左手をソーマに見せる。


「そうそう、手の甲を見せるように……じゃ、ちょっとだけ痛いよ」

 そう言って、ソーマはクラリアの手に右手を重ねる。

「っ痛!」


「ハイ終わり」

「これは……魔法陣?」

 クラリアの左手の甲には、幾何学な円形の模様が入っていた。


「それはブーメランを呼び戻すものだよ。同じ魔法陣をブーメランの内部にも入れてあるから、魔力に反応して磁石のように君の元に戻ってくるのさ」

「成る程、これで投げても、取りに行く手間が省けると言うのですね」


「君ならもっとうまく使えるだろうね。次、アイリスちゃん」

「わ、わたしですか?」

 まさか呼ばれるとは思ってもいなかったようだ。おっかなびっくりソーマのほうに行く。


「君にはこれをプレゼント」

 ソーマは、いつの間にか持っていたのか四つの輪っかをアイリスに差し出す。

「これは?」

「腕輪と足輪。これは姉さんの特注品でね、破力のコントロールをしやすくなるものだよ」

「はりょく?」


「んー、ヴァルキュリーやヴァンキングがどうして強いか知ってるかな?」

 んーんとアイリスは首を振る。

「それはね、この破力を操るのが上手いからなんだ。だからこの腕輪や足輪を付けると、分かりやすく強くなれるって訳」

「おお!」


「では次、天汰くん」

「は、はい」

 少し緊張しているのか、声がうわずっている。


「天汰くんには、そうだね。これなんか合いそうじゃないかな」

 そう言ってソーマがいつの間にか持っていたのは鎧、ライトアーマーだった。

「これはね、まだこの世界でも成功例がひとつしかない『肩代わり』の魔法、その効果を任意、自動でやってくれる防具なんだ、これも姉さんが作った奴ね。ライトアーマーだけど、前に君が来ていた甲冑なんかよりも硬いんだよコレ~」

「肩代わりのアーマー?」


「そう、これを着たとき、半径五十メートル範囲の君が守りたいと思う人のダメージを君が引き受けるのさ」

「どうやるんですか、それは」

「簡単だよ、守りたい、肩代わりしたいと思えばそれでいい。これだけさ」

 そう言ってソーマはアーマーを手渡す。


「……軽い」

 これなら前の甲冑のように重さで動きを阻害するようなこともないだろう。スピィーディーな戦闘が可能ということだ。

「では、確かにプレゼントを渡したよ」

 ソーマは柔和な表情でやりきったみたいな顔をしているが、そこにちょっと待てとストップを掛ける者がいた。


「ちょちょちょ、ちょーっと? 誰か忘れてはいませんかお兄さん!?」

 ハブられ者の鈴木である。


「ん? まだ何か?」

「いや、何か? じゃねーよ!? 俺のは? 俺のプレゼントは? まさかないの!?」


「ないよ」

「ないの!?」

 とんだ肩代わりならぬ、肩透かしである。


「君は、はっきり言って戦闘向きではないからね。プレゼントは渡すだけ無駄だからね」

「ひっでぇ話だ」


「ぷぷ、あるじだけ何もなし」

「これも日頃の行いって奴だな、ブハハ!」

 アイリス、天汰は鈴木のことを笑う。

(なにワロてんねんこンのボンクラがァ! これからの重大性に気が付いてないのかコイツら。俺らはこれから本来起きえなかった、予想外の戦いをしなくっちゃいけないんだぞ! 少しでも戦力拡張しないといけないと理解できてないのか!)


「むしろ、僕としては君の持ってる拳銃、それを回収したいくらいなんだよ。それはね、『Rimur』といってキリシキの家に十挺しかない特別品なんだよね。可能性はかなり低いけどそれがここにあること自体が運命としておかしい、また別の歪んだ歯車が回りかねないんだよ」

「俺の貴重な戦闘能力奪うって訳ですか!?」


「まあ、狂う可能性はかなり低いから、今は取り上げないよ。うーん、そうだねぇ。じゃあこういうのはどうかな。この世界では、連絡の手段はかなり限られているだ。普通なら手紙、それと、水晶玉を使った通信が一般的で、あとは風の精霊に声を届けてもらうとかかな? そんななか、君にはこんなものをプレゼント」

 ソーマの手には人数分の補聴器のようなものが乗っていた。


「これは、まあ通信機だと思ってよ。使い方は耳に着ける、それだけ。脳波で通信できるんだけど、多分原理を言っても君たちの世界にはない技術だからわかんないよね」

 ちょっと小馬鹿にした言い方だった。

(腹立つ、こんにゃろういつか見てろよ)

 ソーマはそんな鈴木の腹の内を知らず、話を続ける。


「これを人数分貸そうか、それを持って鈴木くんのプレゼントとしよう」

 鈴木はソーマから通信機を受け取る。


「それ、この世界の物じゃないからなくさないでね」

 そう注意をうけて、鈴木はイラッとする。瞬時に四つくらい嫌がらせを思いつくが、流石に命が惜しいので実行は止めておく。


「じゃあ、プレゼントは確かに渡したよ。あと言うことはー、あ、そうそう、君たちがダメだった場合、僕が直接問題解決を図るよ。巻き込まないようにはするけど、もし巻き込まれて死んじゃったらごめんね?」

 ソーマはニコッと微笑む。

「ソーマと言ったな、いくつか確認させろ」

 鈴木は指をソーマに突き付ける。


「うん、いいよ?」

「まず基本的な事からだ。お前の存在は」

「とりあえず人間。そうだね、異次元を渡り歩く旅人、そんなところかな」


「クラリアとお前との関係は」

「僕が偶然見つけた、捕まっていたからこの旅を提案したんだ」

 全く分からんと、鈴木は質問の方向性を変える。


「次、今回のことだ。もし俺らがダメになったとして、お前の介入してくるまでどれくらいかかる」

「さあ、それは君たちの頑張り次第。歯車が完全にズレてしまったら僕は介入しよう」


「何をどうすればこの騒動は止まる」

「さあ、それは分からないなぁ。僕は強引に力技で止めるつもりだけど、君たちは君たちのやり方で止めてみてよ」


「最後に、敵の中で一番厄介な奴の情報を教えてくれ」

「ふーん、そうだねー」

 この質問だけ、ソーマは口を悩ませる。

「単純な戦闘能力ならジルくんだろうけど、黒石くんの魔法は今のこの国の中では一番強いね。交渉をするならランチアくんが手強いし、一概に誰が強いとは言えないね」


「なるほど、つまり『アルファリエンス』は多様的な人がいる組織な訳だ。おーけい、わかった。分かりました。ジルさんとは敵対するし、大和と黒石は敵方だし、勝ち筋がかなり薄いっていうのがわかった」

「どうする? ムリそうなら僕がもうやっちゃてもいいんだよ?」

 ニコニコと、鈴木としては小馬鹿にされている感じのする笑顔でソーマは問いかける。

 それに対して鈴木も笑顔になって答えた。

「ふざけるな」

 と。


「ふふふ、僕に対してそんなに強気に出る人間もそういないね。よし、じゃあ僕はしばらく引っ込んでおくよ。神はいないけど、君たちの戦いが勝利するように祈っているよ」

 ソーマはそう言うと、フッと目の前から姿を消した。まるで瞬間移動か、何かに化かされているようだった。


 それと同時に、止まっていた時間が動き出す。

 静かだった空間に、騒がしさが戻ってくる。

「――さて、鈴木さん。あのソーマさんに啖呵切った訳ですが、これからどうするんですか?」

 珍しくクラリアがジト目で鈴木を見てくる。


「……どうしようか」

「あるじ、考えなし」

「言うなアイリスちゃん、でもどっちにしろ、アイツに任せると大和や黒石がどうなるか分かったもんじゃない雰囲気だっただろう? 俺は悪くねえ!」


 天汰が落ち着き払って、

「まだ犠牲が出た訳じゃない、けど、放っておくとさっきのあの人が恐ろしい被害を出すのは目に見えている。これからどう動くか考えた方がいい」

 的確な指示を出した。

「あ、それについて、ひとつ俺に考えがある」

 挙手して、鈴木はニヤリと笑った。


 それを見た三人は同時に思った。

(((あ、この顔はなにかろくでもない事を思いついた顔だ)))

 と。

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