介入者
『ジルくん、今回はいいタイミングで帰ってきてくれた。非常に助かるよ』
「いえ、オレは当然のことをしただけです」
ジルは水晶玉越しに映る人物、鼻の下に髭をもつ男、クラブと会話をする。
『黒石少年もいい出来だよ、並の魔法使い以上の性能だ。あの子がいればこの作戦も成功率がぐっと上がる』
「ええ、旅の途中あれだけの才能を持った奴を俺は見たことがありません」
『だろうな、Aランク相当あると思う。さて、ジルくん、君たち『クナスナイル』の戦闘員は今回の作戦に参加してもらう。いいね?』
「はい、構いません。もとより、みんなその覚悟はできています」
『よろしい、では作戦を指示する――』
・ ・ ・
それは、まだ日も上りきってはいない、早朝と呼ぶにはまだ少し早いくらいの時間帯だった。
ペルウィーンギルド支部では、混乱に次ぐ大混乱が起きていた。
「似たような証言はもういいから、とりあえず全部まとめておいて、落ち着いてからでも仕訳は出来るわ」
「報告、西の街も『アルファリエンス』を名乗る集団に乗っ取られました。これで完全に無事なのは中央と南、ここも後どれくらい持つかわかりません」
「南の街の冒険者に緊急事態宣告を出しに行った!?」
「住民からの依頼、同じものが多くて処理しきれません!」
本来なら、まだギルドも活動しないであろうこんな時間に、多くの人がせわしなく動いている。
「緊急事態宣言を出さざるを得ない」
クッソ眠そうな顔をして、そんなことを言うのは、ペルウィーンギルド支部副長、アイワナ・ギルスだ。
「ギルスさま、いらしていたんですか」
ソバカスのギルド嬢が少し驚いた顔をする。
「いらしてたも何も、呼び出されたんだよ。折角気持ちよく寝てたのにさ。とりあえず、何が起きてるのか説明してくれないかな?」
「はい、昨夜未明、東部方面のならず者たちがとうとう動き出しました」
「マジか」
「はい」
「でもならず者たちつったって、そこまで強い奴らがいたとは思えないぞ、冒険者でいうとDランククラスが数人、よくてもCランクが一人いるかいないかくらいだろう」
「それが、スミル・クラブがこの騒動に参加しているらしくて」
「クラブが? あの平和主義者っぽいやつがか」
「あくまでも、ならず者の中では、ですよ。あれもれっきとしたスラムの住民です。むしろ、この騒動を扇動しているような節すらあります」
「最悪だな」
「更に、残念なお知らせが……」
「まだあるのか」
「はい、西の街のことです。こちらも、相当ですよ。Aランク程度の魔法使いと思われる人間が一人、それとエルフの兄妹が二人、そしてサエル博士の姿を見たという人がいます」
「サエル博士? まさか、あの魔法陣のマッドサイエンティスト? ペルウィーンに来てたのか。それにAランクの魔法使い? 俺帰っていい?」
「ギルスさま、仕事してください」
「だってこれ、もう一ギルドが対応できるレベルじゃないよこれ」
「一体どうしましょう、ギルスさま」
「んーがーあー!」
ギルスは頭をばりばり掻き毟る。
「こういうのは普通、ギルドじゃなくて国が対応するもんだろうが、ったく。しかしまぁ、うだうだ言っても始まらないか」
開き直る。一見、無責任っぽいが、逆にこうすると頭がよりクリアになるのだ。
「よし、まずは緊急事態宣言をみんなに知らせろ。次に一般市民を暫定的に国から出す。一番近くにある国は『ラナーシャ』か、冒険者に新しい依頼を出すぞ、『国民を暫定的にラナーシャに移動させるからその護衛をしろ』みたいなことを書いておけ、移動手段は馬車を使うが、多分ギルドの馬車だけでは足りないだろう、呼びかけで馬車を持っている人は自分のを使うように呼びかけろ、あと複数馬車があれば持っていない人に貸すようにともな、助け合いの精神だ。この国の住民ならできるだろう? 当面は以下のことを優先して行え、ペルウィーンギルド支部の力の見せどころだぞ、気合入れろ!」
「はい!」
・ ・ ・
先ほど、恐らくギルドの偉い人と思われる人の演説らしきものが行われた。
「いやー、素早い対応だね、あれきっとできる人だよ」
前もってギルドの方へ避難していた鈴木は感心する。
避難しているのは鈴木だけではない。天汰、クラリア、アイリスも一緒だ。
「でもほんとにこんなことが起きるなんて、ちょっと信じられません」
クラリアが言う。
「じゃあスラムまで戻ってみてみたら、今頃、あの家も形が残っているかあやしいところだけどさ」
「行きませんよ、行く理由がない」
鈴木の提案をクラリアが一蹴する。
「でしょうね」
鈴木は笑う。
「まーあとはこーやって、他人任せにしておけば勝手に解決してくれるでしょう。天汰がさっき、俺達の身に余るとか何とか言ってたけど、そもそも何で俺達が解決しないといけないんだよ、こちとらひ弱な一般市民、わざわざ危険だと分かってるのにそこに突っ込んでいくとかバカのすることだブァアアアアアアカ!」
「それもしかして俺に言ってる? ねえすーさん、俺に言ってるのそれ」
「いけません! 天汰さん、鈴木さんは多分あなたに殴られると一撃KOですよ!」
「抑えてください、あるじの煽りなんていつものことじゃないですか!」
ほとんど反射的に手が出そうになっていた天汰を、女性陣が押さえる。
「あれー、天汰そんなに煽り耐性低かったか? スマン、ぎりぎりキレられないぐらいを目指してたんだけど、ちょっと読み間違えたみたいだ、スマンな」
「謝る所が違う!?」
釈然としない天汰だったが、とりあえず拳を抑えることにする。
そんな感じにじゃれ合っていた所だった。
「それじゃ困るんだよな」
時間が、止まった。
「……は?」
ギルドの忙しそうな騒ぎ声も、押し寄せている市民の声も、止まった。
「なんか、急に静かになったけど、これ、ドユコト?」
鈴木は周りをキョロキョロする。
「すーさん、皆が、止まっているよ」
いち早く気が付いたのは天汰だった。周りの人間が、固まっていることに気が付く。
クラリア、アイリスも鋭い目で周りを見回す。
(――まーたよくわからん状況だよ!)
鈴木は舌打ちして、指示を出す。
「三方位警戒」
非戦闘員の鈴木を中心に、天汰、クラリア、アイリスが鈴木を囲み、全方向を警戒する。
「あ、あの人だけ動いてますよ」
最初に気付いたのはアイリスだった、つられて全員アイリスの指さす方を見る。
パッとみは優男という感じで、頑張れば鈴木でも喧嘩で勝てそうなくらいひょろっとした男だった。糸目でにこにこと微笑んでいるソイツは、久しぶりに会う友達かのように声を掛けてくる。
「やあ、クラリアちゃん。久しぶり。そして初めまして、異世界人の鈴木くんに天汰くん、この世界のアイリスちゃん」
(コイツ、俺らのことを知っている!?)
鈴木は警戒レベルを上げる。
「アイリス、この世界に時間を止めたりできる魔法ってある?」
あまりにの事態に『ちゃん』を付けることを忘れ、鈴木は目の前の優男から目を離さずに聞く。
「いいえ、こんな魔法、聞いたこともありません!」
「おーけい、ありがとう」
アイリスの答えに満足して、鈴木は目の前の男の警戒レベルを最大まで上げる。
「皆さん、構えないでください。この人は私の知り合いです」
と、一発触発な雰囲気を壊しにクラリアがそう言った。
「クラリアさんの知り合い?」
「はい」
「敵、『アルファリエンス』の人とかじゃない?」
「違いますよ、正真正銘、『アルファリエンス』とは関係ない人です。人かどうかも疑わしいですけど」
最後ちょっとどういう意味か分かりかねぬが、とりあえず鈴木達は警戒を解く。
「いやークラリアちゃんありがとう」
「いえ、それにしてもソーマさん。アナタが出てくるとはどういうことですか? 私は、まだこの世界の秘奥義とやらをもう使えるようになった、ということでしょうか」
「いいや、まだクラリアちゃんは旅を続けてもらう必要がある。それに、今のクラリアちゃんでは、まだこの世界の秘奥義は体得出来ないよ」
「……そうですか。でも、それならどうしてソーマさんが?」
「それなんだけどね。折角だからクラリアちゃんだけじゃなく、皆に聞いてもらおうか」
ソーマとクラリアが呼ぶ男は、鈴木達三人の方を見た。
メシ食ってたら投稿遅れた。
話変わるけど、艦これイベント始まりましたね。




