表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界冒険記  作者: 九重九十九
ペルウィーン国編
21/69

クラリアさんの推理と鈴木くんの自白

 戦闘終了後、クラリアは鈴木の元に訪れていた。

 といっても、鈴木はクラリア達が戦闘をしていることも気付かずに馬車の屋根上でずっと眠っていた訳だが。

 まずはクラリアは馬車の上にいる鈴木に呼びかけて、起こすところから始める。

「鈴木さん、鈴木さん! 起きてください!」

 馬車の上に呼びかけるが、返事はない。

 むしろ、声に反応したのは馬車の中にいた黒石だった。

「あ、クラリアさん。お帰り、無事だったみたいだね」

 馬車後方の空いている所から出てくる。

「黒石さん。すいません、少しうるさかったですね」

「いや、大丈夫だよ。いるのは僕と、あと上にすーさんがいるだけだから」

「鈴木さん、起きそうにないですか?」

「うーん、顔に水でも掛ければ起きるんじゃない?」

 さらりと危害を加える提案をするようになった黒石、前の世界では考えられないことだが、この世界に慣れてきたのか、はたまた鈴木に対して何も思う所がなくなったのか、真偽のほどは分からないが黒石もたくましくなってきているということだろう。

「……まあ、その、生活水は大事ですし、その提案は流しておきます」

「そう、だね。僕としたことが思い至らなかったよ」

「そう言えば、他の方は?」

「バカ二人? いつも通りの訓練だね。あ、僕も魔導書読んで勉強中。で、お分かりの通りすーさんは昼寝中。こう言っちゃなんだけど、お気楽なもんだよ」

「そうですね、それで、すいません。私、鈴木さんに話しておかなければいけないことがあるので、申し訳ないですが席を外してもらえないでしょうか」

「え、あ……(もしかしてまたすーさん何かやらかしたんだ。クラリアさん、怒らせると怖そうだな。巻き込まれるのはごめんだし、おとなしく従っておこう)、う、うん、その、お手柔らかにしてあげてね?」

「一瞬の沈黙の間に何を考えたのかは追究しないでおきますね」

「本だけ、取らせて……」

 言いながら黒石は一度馬車内に戻って、魔導書を取ってくる。

「じゃあ、その、ごゆっくり」

 黒石は屋根上にいるであろう鈴木に、かわいそうにと取れる表情を向けて、その場をさった。

「――さてと、鈴木さん。起きてますよね? タヌキ寝入り決め込むなら、本当に水を掛けますけどどうします?」

「…………なんでわかったの?」

 屋根上からにょきっと首を出して、クラリアを見下ろす。鈴木はタヌキ寝入りを決め込んでいたみたいだ。

「性格的にとだけ。もっともらしいことを言えば、屋根上という他人の会話を聞くにはうってつけの場所で、しかも普段から寝ている、聞いてはいないというポーズを取っているなら、それは会話を盗み聞きするためとみてまず間違いないでしょう。それがアナタならなおのこと」

「行動読まれたか」

 そう言って鈴木は出した首を戻す。

「…………え、ちょっと鈴木さん? 話しは終わってませんよ? 戻ってきてください!?」

「いや、もう俺は会話する気はないし~」

 やる気のない声がクラリアに届く。

「それに、『クナスナイル、全員の極秘ノート製作さくせーん』がバレてしまった私はいまぐーんと気力が下がりまくったのです」

「それはその、なんかスイマセン」

「謝って済んだらチミィ、警察はいらないんだぞ? オォン?」

「あの、この世界に警察はいません」

 その役割は冒険者が果たしている。より正確には冒険者をまとめているギルドが結果的に治安維持にも手を貸しているような状況だ。

 本来なら国兵がやるべきだが、特にこの連合国ではそれぞれがにらみ合いをしているような状況で、国兵を持つのを互いに阻止し合っている。そんな状況なので連合国にあるギルドは、治安活動もしているという訳だ。

「じゃあ済んでいいや」

「はあ、ありがとうございます。あの、それで話を聞いてもらえるんでしょうか……?」

「まあ、聞くだけならね」

 仕方なくといった表情で、鈴木は再び顔をのぞかせる。

「では、お時間とらせます」

 クラリアはそう言って本題を話しだす。


「まず鈴木さん、アナタはわざとアイリスちゃんが戦いを望むように誘導しましたね?」


 クラリアは鈴木を見上げながらそう言った。

「――さあて、どうかな」

 と鈴木は嘯くが。

「口元の笑みが隠せてませんよ。普通、こういう策略がばれた時に、追い詰められる側はそんな反応はしません」

「ふむ、確かに一理ある」

「――続けます。アナタは以前、アイリスちゃんの中に奴隷としての自覚がある部分と、それを認めない部分があると言いましたね」

「はて……言ったっけ?」

「言ったんです! それで、アナタは『アイリスちゃんのことをちゃんと理解している』と意思表示をしたんですよ。それは好意としてアイリスちゃんは受け取ったでしょう」

 ここに来ての鈴木の内心はというと、

(あー、これはバレてらーな)

 だった。

「心理学でさ、『好意の返報性』ってのがあるのは知ってるかな? 人は好意を受けると好意で返したくなるっていう心理なんだけど」

 白状したように鈴木は喋り出す。

「キミの言うとーり、アイリスちゃんには『理解をしている』という形で好意を示した。そしてアイリスちゃんもそんな俺のことを意識し出していたんだろうね。そんななかで俺は、わざとアイリスちゃんに聞こえるように『アイリスちゃんよりも銃のほうが頼りになる』『でも銃は使えない、ワンチャンすらない』と言った。アイリスちゃんの性格を考えれば、『使えない銃よりも下に見られている』とでも考えるんじゃないかと思ったよ。で、そうなったら『自身の有能性を示す行動に出る』まあ、今回だとジルさんに頼んで戦闘に出してもらい、実績を作った事だね。まあ、そんな流れでアイリスちゃんは俺の作った流れに誘導されて今回戦闘に出たって訳だ。ふう、長く喋って口が疲れた」

「――でも、なんでそんな回りくどいことを?」

「ひとつは単純に、アイリスちゃんの戦闘能力が見てみたかった。俺の奴隷だから直接頼んだら多分力を見せてくれると思ったんだけど、ヴァルキュリーってゆー力が、おいそれと人に見せるようなものじゃなかった場合、何言ってるんだコイツと折角上がった好感度が下がるかもしれなかったからね」

「それにしては、少々手が込んでいるように思いますが? アナタなら、もっと簡単にアイリスちゃんを焚きつけられたでしょうに」

「そんな高評価つけんなよ、やっとの思いでこれ考え付いたんだぜ? まあそれに、もうひとつ実験みたいなこともやりたかったしさ」

「実験?」

「そそ。俺の超個人的な、状況操作能力の把握。無意識の流れを作れるか、とかそんなところ。まあ、キミにばれちゃってる時点で、もう程度が知れてしまったけどさ。まーそんな事情が俺にはあったんですよ。で、探偵さんはこれで満足かな?」

「はい。私の個人的な謎は解けました。最後に一つ」

「まだ何か?」

「ええ、ミロジラマの攻略法。教えて下さってありがとうございます。本当はこっちを言いに来たんですよ」

「あ、じゃあうまくいったんだね。よかった。つーか、うまくいかなかったらどうするつもりだったんだよ、アレ相当接近しないと成立しない方法だったろうに」

 体の外皮膚が硬いなら、口の中とか内側にならダメージ与えられそうだよね。鈴木はミロジラマを初めて見た時に、そうクラリアに言ったのだ。

「その時はその時ですよ、案外、普通にアイリスちゃんが倒していたかもしれませんよ」

 クラリアはフフと初めて笑みを浮かべる。

「では。私はこれで、ああ、ちゃんとアイリスちゃんを褒めてあげて下さいよ、誘導されたといえ、アナタに認められたい一心でアイリスちゃんは戦闘をおこなったんですから」

「へいへい、りょーかいです」

「では、これで」

 クラリアは鈴木に一礼して、どこかに行ってしまった。

(さてさてさて、クラリアにバレたのは驚いたけど、その目的のほうはバレてなかったみたいでまあ一安心ってところかな。とりあえず、いま確かめたいことはある程度確かめた。後は黒石の方と俺の銃か。ま、しばらくは寄生虫系男子をもうしばらく演じておこうかな)

 そう考えた所で、「あるじー! どこですかー!」と可愛い奴隷ちゃんの声が聞こえた。

「褒めろ、か。まあ、好感度上がりそうだし、そうしようかな」

 鈴木は馬車の屋根から飛び降りるのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ