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極光のアリスト ~やられたらやり返すが信条~  作者:


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30/32

30 贅沢な時間

「アリストが怪我をして帰って来ただと!?」


 オズヴァルトの声が廊下から響いてきた。


「はい、奥様は王太子妃殿下を庇って怪我をされたとか」



 自室のドアをノックされたので、俺はどうぞと許可した。ちなみに今は普通に女の姿のままだ。

 すると青い顔をしたオズヴァルトが姿を現した。



「おや、オズヴァルト、どうしました? 血相を変えて」

「怪我を……したらしいな」

「ああ、少しミスった」


 オズヴァルトがベッドサイドに大股で歩み寄って来た。


「包帯に血が滲んでいる……新しい包帯と消毒薬を持て!」


 オズヴァルトは俺の怪我を見て、侍女達に向き直りそう命じた。侍女達は急いで包帯と消毒薬を取りに行った。

 そしてほどなくして、


「お持ちしました! 」と、侍女が用意したものをベッドサイドにあるマホガニーのテーブルに置いた。


「ご苦労、下がれ」


 そしてオズヴァルトは消毒薬を手にして、はた、と止まった。


「……?」

「……服を、脱がすぞ」


 やつは渋面を作って、そう言った。


「え!? まさか、お前、いや、あなたが治療をするつもりで?」

「ああ」

「医者は今いないのか?」


「……今、城にいるのは男の医者だけだ」

「それがどうした?」

「どうしたもこうしたもない!」



 ────はっ!と、俺は気がついた。


 まさか! 妻の裸を男の医者に見せたくないのか!? そんな気持ちがこの男の中で育っていたのか!? ……これは怪我の功名と言えよう。



「……じゃあ、お願いします」



 オズヴァルトは何故か震える手で、ドレスの背中に着いているレースアップのヒモをそろそろと解いていく。

 ……なにも、震えなくともいいのでは?


 しかし、女の服を脱がすことが初めてなら、このように緊張することもあるのかもしれない。


 不器用な仕草で消毒薬を傷に塗り、そして包帯を巻いた。……剣ダコのある、大きな手で。



「これで……いいか、包帯がきついとかあるか?」

「……大丈夫」


 珍しいものを見るように、オズヴァルトの顔をまじまじと見てしまった。

 あのフサフサの髭は剃られてもうない。


 目を隠すほどの長い前髪はほどほどの長さで切られ、顔が良く見える。精悍な顔立ちで、ワイルド系の男前だ。


「なにか、望みはあるか?」


 ベッドの上で、俺は暇だった。


「あ、歴史の勉強をしないとだった。ネームを描く為に一度俺が読まないと、でも……腕が痛い」


 漫画で読める歴史の本を作る予定だったのを思い出した。

 そして歴史の文字だらけの本は、ハードカバーで重い。 女性体のアリストの体は細くか弱いので。



「……で?」

「俺の代わりに読んでくれたりする時間ある?」

「……仕方ない、今日は休みをとる」



 オズヴァルトはベッドサイドの椅子に座った。



「……ほんとに?」



 呆気にとられた。俺のために時間を使ってくれるらしい。驚きだ。



「嘘をついてどうする」



 オズヴァルトは眼をふせ、枕元の歴史の本を手にして、それを開いた。



「栞をはさんでいるところからお願いします」

「ああ、ここか」



 それから、オズヴァルトは低く心地よい声で、朗読を始めた。


 イケボで学べる歴史の授業だ。

 贅沢な時間だった。傷の痛みもしばらく忘れた。


 ──そしてしばらくして、昼食が運び込まれた。

 俺がレシピを教えたパンケーキだった。ふわふわの。



「パンケーキだ」

「見るからに柔らかそうだな」

「ああ、柔らかいよ」


「このメープルシロップをかければいいのか?」

「そう」



 この男、俺の分のパンケーキにもメープルシロップをかけてくれた。怪我してるとめちゃくちゃ優しいじゃんか。



「甘くて……ずいぶんふわふわだな」

「そういう料理だから」

「歯のない老人でも食べられそうだ」

「かもしれんな」


 何故か、口開けてアーンのイベントまで、発生した。


「俺、いや私が老人になっても、こうやって食わしてくれるか?」

「忘れてるのか? 俺の方が年上なんだぞ」



 見れば分かる、それは。



「じゃあ、俺が、いや私が食わせてやればいいのか……て、それは老人介護やないかい!」

「……嫌なのか?」

「いや、必要ならやるけども」


「くっ」


 オズヴァルトが珍しく俺の前で笑った。

 未来を……想像したのか、そんなに長く、一緒にいる様子を。


 俺と二人でいる姿を……。





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(*・ω・)(*-ω-)(*・ω・)(*-ω-)ウンウン♪ 長い目で見守りますぞ、、 よきかな、よきかな、、
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