25 騎士団長の結婚式
「部下の騎士の結婚式? でるのか? オズヴァルト、あなたが?」
「そうだが」
俺は別に自分の結婚式を省いた事を気にしている訳では無い。自分からもいらないと言ったし、ただ、こいつ部下の騎士ことは大事にしてるんだなと思っただけ。
ちなみに今は女性体でドレスを着て食堂にいる。
食事の場で自領の騎士の結婚式に出ると言う話をされてるところだった。
「しかし、そのナリで? お髭モッサモッサのまま?」
「……祝いの席に相応しくないと思うか?」
オズヴァルトは俺の入れ知恵で柔くなったパンを千切りつつ、それを口に放り込みつつ問うてくる。
「……それもあるが、普通に邪魔では? ──あ、それともあれか? 獣化の呪いの影響で毛の伸びる速さが半端ないとか? 朝剃っても夜にはモサモサだとか? それで身だしなみ揃える気が激萎えしてる?」
「別に……呪いは関係ない」
そして、結婚式当日、俺も妻として同席するのだが、髭を剃ってスッキリしてきた夫の姿があった。精悍な顔立ちのワイルド系イケメンだった。
「やっぱり男前じゃないか、あのモッサモッサは女避けだったのか?」
「フン」
この男、答えたくない時はフンでスルーするらしい。まぁ、いいけど。
「だ、旦那様、一体どうなさったんですか!? 髭が!」
王のいるパーティーですらも髭を剃らない男が部下の結婚式だからと髭剃ってきたから今日の主役の片割れの新郎もこの変貌には驚いている。
「……別に、シチューを食べる時に邪魔だと思っただけだ」
「ほら! やっぱり邪魔だった!」
「うるさいぞ、アリスト」
「あ、あの人がお前の妻になる人か?」
俺はうるさいと言われたことをスルーして騎士に声をかけた。
「はい、私には勿体ないほどの人です」
「貴族令嬢だな」
「はい、伯爵家の三女です」
俺の問いに照れながら答えてる新郎。
「それは凄いな、伯爵家なら高位貴族だ」
「閣下にもお手伝い頂いたおかげです。半年の婚約期間を終えたので、ようやく今日の喜ばしい日を迎えることが出来ました」
オズヴァルトが? キューピット役でもしてた?
「恋愛結婚か?」
思わずピューと口笛を吹きたくなった。さすがにやらないけど。
「その、伯爵家への依頼だった魔獣討伐依頼を代わりに行いました」
おや、討伐代行をして、その成功の結果なのか。
「あー、じゃあ伯爵家の娘との結婚が褒賞?」
「はい」
恋愛結婚じゃないのか、でも騎士は令嬢に惚れてる感じだな。
令嬢を見る目が恋する男の目だ。
「綺麗な人だな、おめでとう」
ブルネットで青い瞳の上品な顔立ちの女性だ。
「ありがとうございます、奥様」
嬉しそうに笑ってる。
「おめでとう、騎士団長」
オズヴァルトからも祝福の言葉を貰ってる。
この人騎士団長なんだな。
式は辺境伯領地内の神殿にて行われた。
騎士団長らしく列席者は騎士の多い結婚式だ。
式は厳かな雰囲気の中で行われた。
式の後は神殿の庭でガーデンパーティーの形式で食事の提供がある。ブタの丸焼きとか、ケーキやフルーツなど、色んな料理が並んでる。
そしてこの祝いの席でも早速、例の天然酵母使用にてふわふわパンが振る舞われたため、騎士達の口にも行き届いた。
「ふわふわだ、うっま」
「こんなに柔らかいパンは初めてだ」
「美味」
騎士達がパンを食べつつ感動してる。
しかしお前達、ふわふわパンより新婦さんをチヤホヤしろ。今日の主役はパンではなく、新郎新婦だろ?
「しかし、騎士団長のあの時のキマイラ討伐の時の働きは見事だったからな」
「俺も大物魔獣狩りをやり遂げたら貴族令嬢と結婚できるのかな?」
今回のケースは長女ではなく三女だったから、ワンチャンあった説はある。娘が多いと持参金問題もあるから。
伯爵家とはいえ、資産もだんだん目減りすることだろうしな。
「それは依頼がどこから来るかで決まるだろうし、運だよな。なんにせよキマイラ並に強い魔獣討伐は命懸けだから、気をつけろよ」
「俺は結婚するなら貴族令嬢ではなく商人の娘あたりでいいな」
「ははは、お前は気位の高い令嬢が怖いんだろ」
「怖いわけではない、好みの問題だ」
などという騎士たちの会話も聞こえてくる。
一方花嫁といえば、何故か少しオドオドしてる感じがある。貴族令嬢としては珍しい。しかも伯爵家の令嬢が…でかい男が多い騎士が怖いのか?
俺が気にすることではないと思うが……少し気になった。




