16 衣装店で遭遇
モーニングベールを用意して貰ったフレデリカと衣装店に向かった。
悪目立ちしたくなくて護衛騎士は二人まで減らしてる。いざとなったら俺も戦うからよかろ。
ちなみにまたも男装してる。なんかあったら威嚇できるし。外見的圧を優先した。
うさぎが睨むのとオオカミが睨むとでは迫力がちがうから。
そして衣装店に着いてからフレデリカを促す。
「好きなドレスを選ぶといい」
「え、でも私……」
何故かオロオロしてる。
婚約破棄される前は普通の貴族令嬢だったのではないのか? 何故うろたえる?
娼婦に落とされた経験から気後れを?
「好きな色は?」
「え、ええと……す、スミレ色とか」
俺は頷き、紫系のドレスを探した。
「……紫な、では。この淡い上品なスミレ色のドレスは?」
フレデリカの身体の前に合わせるようにドレスを持ってきた。
「す、素敵です」
「ではこれを試着してみるといい」
サイズ確認だ。
「はい」
フレデリカは素直に試着室へ入ったので他のドレスも探してみる。
「このグリーンも悪くないな、上品で。そこの店員の、これも試着させるように」
「かしこまりました」
俺が店員に声をかけてしばらくすると、フレデリカがスミレ色のドレスを纏って見せてくれた。
「こんな感じになりました」
綺麗だ。似合ってる。
「可憐でいいな。どこかきついとかはないか?」
「だ、大丈夫です」
顔赤くして照れてるようだ。次におれが選んだエレガントなグリーンのドレスを着てもらう。
そこに衣装店のドアが開く音と賑やかな声が聞こえた。新たな女性客の来店だ。
フレデリカは更衣室に引っ込んだ。
俺は今、男性体だが貴族令息風の仕立ての良い服を着てるから婚約者や妻の服選びに付き合ってる風に見えるはずだ。
女性客の方が多い場所ではあるが、そう違和感はないはず。
しかしこの母親連れの女どこかで見た覚えが。──あ、壁の花令嬢の妹だ。
確か名をアウレーリアとか言う娘だ。
ミルクティー色の髪に艶のある唇。
姉と違ってちゃんと手入れされてる感が全体的に感じられるが、一体誰の犠牲の元に成り立つ美しさか考えたら業腹。
またセシルは置いてけぼりでこいつらだけ散財に来たってところか。
しかし……彼女は、セシルはいつ逃げてくるのか。
今地獄にいても環境を変えるのがそんなに怖いのか? そういう病気か特徴の人なんかいた気がする。急かしたくはないが辺境伯がタウンハウスに留まってる時じゃないと婚家の領地は遠い。
が弱く金もない女性一人がたどり着くには旅路がやばい、山賊とか色々悪いやつはいるし。
「あ、あなたはお姉様にダンスを誘った方」
屑妹、中々の記憶力だ。それか俺が目立つせいかも。
「……セシル嬢は来られてないのですね」
義母と妹のアウレーリアだけだからお前また自分達だけ贅沢してるな?の意味を込めて訊いたが、やつは笑顔を崩さずのたもうた、
「お姉様はこういう所、好まれなくって家で静かに読書してる方が好きなのですわ」
確かに彼女の現状なら、ドレスを買いに行く為のドレスがないって感じで気後れするだろう。
いや、逆にこの女達が出かけてる今頃脱出の算段をしてる可能性がある!
「そうですか」
適当に返事をして、俺は他の服を探すフリで背を向けた。
そしてアウレーリアがドレスを義母と選んでいる間に小さな紙の式神をアウレーリアのドレスの裾のフリルの隙間に潜伏させた。
別に視覚共有でドレスの下に潜り込ませてパンツを覗いてやることもやれない事はないが、こいつのパンツを見てもなという気もする。
嫌がらせにしても低俗だ。
俺はフレデリカのいる試着室に向かって声をかけた。出てこないなら適当に選ぶぞ。と。
「はい、なんでもいいです……」
と、試着室のカーテンの向こうでそんなか細い声が聞こえた。
「ブラウスとスカート追加で」
既製服だが洗濯しやすそうだし悪くないので店員に持ってくるよう伝えた。
「かしこまりました」
店員が頭を下げて先ほどの薄い紫のドレスのサイズから推測して合いそうな物を見繕ってくれた。
予算的にフルオーダーも作れはするが今の彼女は身バレを恐れてる。
サイズを図るために人前で服を脱ぎたくないらしいから、仕方ない。
俺はブラウスとスカートとドレスの代金を支払い、フレデリカに帰るぞ、と、カーテン越しに声をかけたら喪服に戻って出てきた。ここに来た時同様顔を隠して。
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ともかく今回はならず者と遭遇する代わりに女狐と遭遇した。しかしくず妹にスパイの式神をつけられたので悪くない収穫かも他者の目が無いとこで本性が分かるはずだ。あとでフレデリカの方に付けた式の視覚共有もしてみよう。




