15 式神を飛ばす
フレデリカは驚いた。今俺達はまだ王都のタウンハウスのサロンにいる。茶をしばきつつ話をしてるとこだ。
つーか、俺の説明が必要だったから。
「えっ!? アリスト様は本当は女性だったんですか!?」
そう、この話をせねばならなかった訳で。
「そうなんだ、男性体にもなれる特異体質なだけでな」
フレデリカは困惑顔。
「そうしますと……本当は女性だったのになぜ私の……む、胸やお、お尻などを触りたがるのですか?」
恥じらいながらもズバリと問うてくる。まぁ、そこは気になるところだよな。
「あー! 俺は基本的にどっちでもイケる派だから」
臆面もなく言うが真実である。
「どっちともいける派とは……」
理解出来ないって顔をしてる。さもありなん。
「簡単に言うとどっちも抱けるってこと。でも身体の感触は女性の方があちこち柔らかいから好きってだけ」
「は、はぁ……」
知らない世界なのだろう、背景に宇宙がある感じの顔をしてる。
「ともかく、俺のマッサージ師兼侍女ってことで君はこの辺境伯家に雇われる。あ、肩書きは侍女の方がいいかなって思ってる」
フレデリカの品位と給金に関わるから。
「は、はい! ともかく……娼館から助けていただいたので精一杯お仕えします!」
フレデリカは考えるのをやめたようだ。
ややひきつりながらも健気に笑顔を作ってる。
そしてあと一人、俺が救うべきは壁の花令嬢セシルだ。
俺が関わる者、全てを救う必要などないけど、せめて他からの助力のなさげなあの子は救ってやりたいから。
泣きそうな目をして、独りで立ってたあの子の為に……。
それから俺はフレデリカの元婚約者と侯爵令嬢のそばに行くよう紙の式神を飛ばし、壁の花令嬢のダーシャ家にも式神を飛ばすことにした。
「誰か王都の地図を持ってきてくれ、フレデリカの元婚約者の家がどこにあるか知りたい、差し当たり王都の貴族達のタウンハウスが集結してるところの地図でいい」
しばらくして執事が俺の命令で地図を持ってきてくれた。
「じゃあ、フレデリカ、元婚約者クラメルの家がどこにあるのかわかるか?」
「ええと……ここです」
フレデリカは地図を見て、クラメル・レ・ヴェロスラフのタウンハウスのある場所を指さした。
俺はそれからハサミと白い紙を執事に用意させた。
「ごめん、白い紙とハサミも追加で」
「かしこまりました」
執務室がすぐに紙とハサミを持ってきてくれた。
その白い紙をまた人型に切っていく。
フレデリカはその様子を不思議そうにじっと見てる。
式を新たに作り出し、己の吐息をかけた。これで式神完成。
「人型の……紙?」
フレデリカは初めて見る式神に目を白黒させてる。
「これはオレの使い魔的なものだ」
白い紙の式神が窓から飛び立つ。
フレデリカの元婚約者のタウンハウスへ。
そしてもう1箇所。
妹と格差生活を強いられている壁の花令嬢セシルの方だ。彼女の場合、セシル本人と1回手にキスするという接触をしてるから俺の霊力を辿ればいい。
そして式神を飛ばした後で、
「ひとまずフレデリカの洋服買おうか」と、提案した。
メイドに出されたお茶を飲んでたフレデリカは驚いた顔をしてる。
「えっ」
「レディが着の身着のままはいけないだろ」
「あ……」
言われてからろくな着替えが無いことに気がついたらしい。今は地味なブラウスとスカートを着てるが、メイドの私服を借りてる状態。
アリストのドレスではサイズが合わなかったから。
「ひとまず衣装店に行こう。顔を隠したいならベールでも被って」
「ベール?」
「ほら、未亡人がよく目元隠れる黒い帽子被ってるだろ」
あれなら違和感なく顔をある程度隠せると思う。
仮面舞踏会の仮面なんかよりは自然に衣装店に入れる気がする。
「ああ、モーニングベールのことですか」
「多分それ。おーい、誰かフレデリカが着れるサイズのモーニングベールと喪服をもて」
メイドがすぐに用意しますと言って小走りでサロンを出て行った。




