表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
攻略対象じゃないと思ったのに、うっかり溺愛ルートに入るようです  作者: 古東 白


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

3/3

番外編:私の親友は観察対象(エレノア視点)

こちら、番外編としてのエレノア視点です。

 

 エレノア番外編


「エレノア、聞いて~!」


 私の方へ早足で近づいてくるのはクラリスだ。

 親友ではあるけれども、同時に観察対象なのよね。


「今日も、フィン先輩が尊くて――」

「はいはい、話を聞いてあげるわ。まずは、落ち着いて」


 興奮で頬を染める彼女の手を取って言い聞かせる。


『尊い』は、よくわからないけど、クラリスがフィン先輩に恋をしているのは分かる。


「今日も図書室へ行ってきたのね?」

「ふふ。窓際の席で、髪の毛がキラキラ光ってたわ」

「ああ、それは――」


 ぐっと言葉を飲み込んだ。

 クラリスには、言えないわ。

 それがあの人の手なのよ、なんて。


「――フィン先輩は綺麗な金髪だものね」


 思わず自分の黒髪を触る。

 他人の幸運を奪うことの出来る闇魔法。

 闇を彷彿とさせる黒い髪色は、あまり好まれない。


「ええ、そうね」


 クラリスは私を見てにこりとする。


「でも、エレノアの黒髪も私は綺麗だと思うわ。それに、見ていると落ち着くのよね」


 ぎゅっと私に抱きつくクラリス。

 慰めてくれてるのね。


「ありがとう、クラリス」


 私の方が背が高いので、思わず彼女の頭を撫でてしまう。

 くすぐったそうに目を細めるクラリス。

 彼女には、いつも癒される。


 ◇◇◇


「クラリスは本当に可愛らしいのよ」

「はいはい、何度も聞いてるよ」


 図書室のカウンターにいる、背の高い男子生徒に自慢した。

 彼はカイン、私の従兄弟だ。

 同じ黒髪だから、よく兄妹に間違われる。


「クラリスが王妃になった時――」

「エレノア!」


 慌てたカインに、背後から口を押さえられる。

 彼は、耳元に唇を寄せてきた。

 声を潜めて注意される。


「……どこで、誰が、聞いているかわからない」


 息が、耳に当たってくすぐったい。

 彼は少し怖い顔をして周りを見渡した。


「ひゃいひょうふほ」

「……なに言ってるか分からないな」


 カインは口を覆っている大きな手を離して、解放してくれた。


「手に息が当たってくすぐったかったぞ」

「貴方の息も耳たぶにかかってたけど!」


 文句を言うと、カインはぷいっと後ろを向いた。



「もうっ、無視して!耳も赤いし……怒った?」

「……違うって」


 再びこちらを向いたカインは、私のおでこを指でぴんっと弾いた。


「ばーかっ」

「何なの……?」


 子供みたい。呆れちゃうわ。


「図書室だし、あの方の管轄だから。安全にきまっているわ」


 危険因子はあの方が排除するはず。

 私はそういうけど、カインは慎重だ。


「まあ例外を除いてな。変な奴はいないだろうけど……念のためだよ」


 遊び人の第二王子のことよね。

 たまに女性連れで来るようだけど、監視しやすいから放っておくみたい。



「エレノア。あまり入れ込み過ぎるのも良くないぞ」


 クラリスの事だ。


「……分かっているわ」


 ほんの少し眉間に力を込めた。


「顔に出ている。俺たちは……」


 そこへ穏やかな声が割って入る。


「やあ、二人とも。相変わらず仲が良くて羨ましいよ」


 カインと慌てて挨拶をする。


「「フィニアス殿下、ご挨拶申し上げます――」」

「ああ、堅苦しいのはやめてくれ。それよりクラリスの様子は?」


「あ、はい。熱が下がったので、朝食もきちんと摂っています」

「そうか。良かった」


 フィン……フィニアス殿下は、ホッと息を吐いた。

 こんなに穏やかな表情は初めて見て驚いたの。

 よほど、クラリスが気に入ったのだわ。


「それはそうと、カイン」

「はい」

「クラリスを拉致しようとした奴らは――」

「殿下」


 会話が突然聞こえなくなった。

 両耳から頬にかけて、温かい物で覆われている。


 肩越しに後ろに目を向けると、カインがブンブンと顔を横に振った。

 きっと聞かせたくない話なのね。


「カイン。そろそろ、耳が痛いわ」

「ああ、すまない。終わった」


 手を耳から離してくれる。


「エレノアにお願いがあるんだ」

「フィニアス殿下のお願いとは、何でしょうか?」

「なに、難しくないよ。クラリスの体のサイズを――」


「は?」

「……殿下」


 危ない。

 思わず地声が出てしまったわ。

 カインは、とても残念な子を見る目付きだ。


「もっとオブラートに包むべきです。女性に嫌われますよ」

「ふむ。では、カイン。君ならどうするんだ」

「俺なら、抱き締め……見ただけで、大体分かりますから」


 カインを下から睨み付ける。


「そうか、俺は精進が足りないようだ」

「殿下も、そのうち出来るようになりますよ」

「いや、俺はクラリスだけでいい」


 フィニアス殿下はきっぱりと言い切った。

 偉いわ殿下!

 でも、そうじゃないのよ!


「殿下。私がクラリスの『服の』サイズを調べてきますから」

「ああ、頼む。街歩きの時に、着てもらいたいんだ」


 この人、プレゼントとして贈るつもりだわ。

 でも、それは――。


「フィニアス殿下。お気持ちは分かりますけど、いきなり洋服をプレゼントは驚いてしまいますわ」

「そうなのか?」


 クラリスも貴族ではあるけれど、爵位は低く、妾の子供。

 不遇な扱いを受けていた彼女は、色々と遠慮しがちだ。

 そんなところも私は好きなのよね。


「……とりあえず、私から貸すという形にしておけば良いと思います」

「なるほど、そうしよう。助言をありがとう」

「……クラリスは親友なので、たくさん笑っていてほしいんです。だから――」


 ここで、深呼吸をする。


「フィニアス殿下といえども、私の大好きなクラリスを泣かせたら、許しません」


 フィニアス殿下は驚いた顔をした後に、目を細めて、口角をあげた。


「……君のような親友がいるとは素晴らしいね」

「エレノアっ!」


 カインが私の腕を掴んだ。


「不敬だぞ!」

「私は、彼女を守るわ」


 フィニアス殿下は「カイン」と、静かに低い声で名前を呼んだ。

 私の背中にゾクリと冷たいものが走る。


「エレノアは弁えている。大丈夫だ」

「……しかし……申し訳、ありません」


 カインはぐっと手を握りしめていた。

 彼はフィニアス殿下の付き人だ。

 素性の怪しい者からは遠ざけたいのでしょうね。


「クラリスは危険な子ではありませんわ」


 クラリスの事については、誰が相手でも引かないわ。

 私の黒髪を、褒めてくれたの。

 彼女は、噂になんか惑わされなかったわ。


「じゃあ、こうしよう」


 フィニアス殿下は、悪戯を思い付いたような顔をする。


「君たち、婚約してくれないか?」

「「え?」」


「婚約者の親友同士となれば、一緒にいても自然だろう?」

「どうして、そんな発想になるんですか!?」


 私はフィニアス殿下を呆れた目で見てしまった。

 ダメよ。エレノア、それは不敬だわ!

 ……でも、ねえ。


「いや、しかし、それは」


 カインは口ごもり、顔が真っ赤だ。

 ほら、カインも怒っているじゃないの。


 カインはチラチラと私の様子を窺う。


「カイン。君はエレノアが、他の令息と婚約をしても黙って見ていられるのかな」

「そ、れは……家業の事もありますし……知らない奴には嫁がせられません」


「ふうん。そんなに、私の事を家に縛りつけたいのかしら?」

「そんなんじゃ!」


 カインはすぐに家の事を持ち出す。

 いくら、家の裏事情を外に漏らせないからって、私の婚約の話は別でしょう?


「ふふ。嫌なら後々破棄すればいい。今はクラリスが優先だ。……俺の決定に従ってもらうよ」


 有無を言わさぬ圧を感じる。


「……分かりました」

「私も、クラリスの為なら何でもいたしますわ」


 カインは渋々飲み込んで、私は堂々と受け入れた。


「カイン。この借りは大きいからな、きちんと払ってもらうつもりだよ」


 フィニアス殿下は、とても良い表情をカインに向けた。


「……この人、俺を一生こき使うつもりだな」


 カインの小さな呟きが耳に入る。


「主を決めたのなら、地べたを這ってでもついていくものよ」


 カインに笑いかける。


「はあ……お前には敵わないよ。覚悟は決まった」


 私の髪を一房手に取ったカイン。

 そのまま軽く唇で触れてきた。


「な、何してるのよ!」

「婚約者としての練習」


 私は、悪びれもなく言ったカインの足を力一杯踏みつけたのだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ