アレクサンドラ様の謝罪
ここは、王太子殿下の庭園。
⋯⋯ではない。
アレクサンドラ様の魔法で、『少しだけ』場が荒れてしまったので、お茶会が仕切り直される事になった。
ここは、王太子宮にあるアレクサンドラ様の居室だ。
壁や調度品など、柔らかな色合いで統一された王太子妃の部屋だ。
私はアレクサンドラ様と向かい合って、お茶を頂いていた。
「⋯⋯クラリス。本当に、申し訳ありませんでしたわ」
いきなり立ち上がり、深々と頭を下げるアレクサンドラ様。
「頭を上げてください!」
私も慌てて立ち上がり、アレクサンドラ様にお願いをした。
そんな、私たちの様子を冷静に見ていた人物が一人。
「アレクサンドラ様。私が口を挟む事ではないのですけれども。何度も謝られると、クラリスが困ってしまいますわ」
エレノアが柔らかく微笑みながら、アレクサンドラ様を見つめ⋯⋯目の奥が笑ってない気がするわ。
フィンも、こんな表情って怒っている時なのよね⋯⋯。
どうやらカイン様がエレノアに連絡をしたようで、この部屋に案内された時にはすでにソファに座っていた。
まあ、それはさておき。
今はアレクサンドラ様の謝罪を受け取っている最中だ。
「でも⋯⋯」
アレクサンドラ様は、中々頭を上げようとしない。
私がどうしようか困っていると、エレノアは静かに言った。
「アレクサンドラ様。私の『親友』をこれ以上困らせるのはいけませんわ」
この言葉にアレクサンドラ様は肩を僅かに震わせた。
私はアレクサンドラ様の手を取りこう言った。
「もう謝罪は大丈夫です。近い将来には、姉妹になるのですから、お気になさらないでください」
「アレクサンドラ様。悪いと思うのでしたら、クラリスが困った時は助けてあげてください。まあ、私も常に傍にいるつもりですけど」
エレノアが私の両肩に手を添えた。
アレクサンドラ様が、顔を上げて綺麗な笑顔を見せた。
「そうね、エレノア。私はこれからクラリスの義理の姉になるのですもの。そこでしっかり守っていくつもりよ。聖女レイリア様に誓うわ」
今更だけど、母は隣国出身だ。公女であったアレクサンドラ様は当然母とも面識があるわけで。
それを聞いたエレノアは何故かショックを受けた表情になる。
「な、クラリスのお母様ですって⋯⋯私もお会いしたことないのに⋯⋯羨ましいわ」
「私は、幼い頃のクラリスにも会った事があるのよ」
アレクサンドラ様は、エレノアに向かって胸を張って答えた。
エレノアは「ずるいわ!」と頬を膨らませていた。可愛いわね、私の親友は。
思わず笑ってしまった。
それにしても、私は――。
「私は⋯⋯お会いしたこと、私覚えてないのですが」
「貴女は小さかったし、人見知りしていたわ。フィニアス殿下も一緒にお会いしていたのよ」
懐かしいわ。と、くすくす笑うアレクサンドラ様。
その後、爆弾発言をした。
「覚えているか分からないけれども。クラリスはフィニアス殿下を前にして『まま!わたし、このおーじさまとけっこんするみたい』とお話ししていたのよ」
「⋯⋯嘘、ですよね?」
「あら、嘘なんかつかないわ『わたしがいっしょにいてあげる』って、逆プロポーズしていたわ。子どもの言う事なので、周りは笑っていたけれども。本当になったわね」
「クラリスも、聖女様のような力を持っているのね⋯⋯護衛の数を増やしましょう」
エレノアまでフィンと一緒に過保護になりそうで怖いわ。
それにしても、フィンと結婚するなんて予言?
小さい頃の私ったら、なんて不敬なことを⋯⋯下手したら首が飛ぶところよ!
「でも、フィニアス殿下のお相手が貴女で良かったわ、クラリス。彼の事も、私とも、これからもよろしくお願いいたしますわ」
改めてアレクサンドラ様と向き合い、固く手を取り合った。
エレノアが横から「アレクサンドラ様ばかり、ずるいわ!」と拗ねていたので、親友のハグをして友情を誓い合ったのだ。
「それにしても、フィニアス殿下は今回も穏便に事を収めたのね」
エレノアが神妙な顔をして私に言った。
「今回もって、どういう事?フィンは、いつもスマートに私を助けてくれるわよ」
そう言うと、エレノアとアレクサンドラ様が顔を見合わせた。
「「後片付けが大変なのよ」」
二人は声を揃えて言った。
仲がいいのね二人とも、何だか妬いちゃうわ。
ちょっとおまけ
クラリス「そういえば、さっきのエレノアはまるでフィンみたいだったわ」
エレノア「いやだわ。そんなに企んでるように見えたかしら?」
クラリス「あの笑い方って、私に怒っている時だと思ったわ」
エレノア「フィニアス殿下はクラリスに怒ったりしないでしょう?」
クラリス「この前、怒ってたわよ」
エレノア「⋯⋯笑ってた?」
クラリス「いいえ?」
アレクサンドラ「フィニアス殿下は、怒ってなくてよ。心配していたのだわ」
クラリス「そうなんですか、気づかなかったわ」
アレクサンドラ「フィニアス殿下も、まだまだ修行が足りないわね」
エレノア「カインにいつもニコニコと笑っているでしょう?あれは何か企んでいる時よ」
クラリス「え、いつもカイン様にニコニコと笑っているわよ。羨ましいわ」
エレノア・アレクサンドラ「「(絶対無茶な命令しているんだわ)」」
――その頃のカイン、王太子殿下の居室――
カイン「へーくしゅ!!」(正座中)
王太子・フィン「「床を汚すな」」
フィン「カイン。お前がエレノアに連絡したから、クラリスと離れただろう?」
王太子「サラも向こうのお茶会に行ってしまった。余計な事をしてくれたな」
カイン「いや、でも⋯⋯(連絡しないとエレノアに怒られるし)」
王太子「サラを慰める手筈を整えていたのに(ため息)」
フィン「兄上、奇遇ですね。俺もクラリスを甘やかすつもりだったのに⋯⋯カイン」
カイン「⋯⋯はい(嫌な予感)」
フィン「最近働き詰めだったからな、休暇をやろう」
カイン「本当ですか!?」
フィン「ああ。お前の師匠に連絡を取っておいた、思う存分修行してこい」
カイン「は、え?休暇なのに修行⋯⋯ですか?」
フィン「休暇は、効率よく使わないとな。普段は仕事と学業で鍛錬が上手くできないからな(笑顔)」
王太子「良かったなカイン(笑顔)」
カイン「(笑顔怖えええ!)」




