甘いデートは想像の果てに
今日は、久しぶりの街デート。
前回は中断させられたので、今日こそは最後までフィンと甘い雰囲気で。
⋯⋯と、思っていたの。
なんていうか、一度ならず二度までも、よね。
もしかして、最後まで甘い雰囲気のデートって、空想話ではないかしら。
◇◇◇
カップルしか入れない、城下の有名なレストラン。
そこは、恋人同士向けのメニューがあったり、ペア小物も売っていて評判通りだったわ。
ここに、どうしてもフィンと二人で来たかったの。
恋人同士らしくね、えへへ。
手を伸ばせば届く、狭くも広くもないテーブル。
それを挟んだ恋人同士の絶妙な距離感。
目の前には大好きな相手、見つめ合う男女――。
これよ、こういうのでいいんだわ!
「フィン、今日も素敵⋯⋯です」
「ありがとう。クラリスも可愛いよ」
「も、もう、フィンったら」
「照れてる顔も愛らしいね」
そんなフィンのお世辞に顔が熱くなる。
フィンが「本音だよ」とニコニコとしていたけど⋯⋯口に出していたかしら?
「クラリスは全部顔に出るからね」
さらりと言われた。
私の感情はフィンにバレバレってことなの!?
「それより、はい。恋人ならケーキは半分こにするんだろう?ほら」
可愛らしいお皿に盛られた、フルーツたっぷりのケーキ。
それをフィンがフォークで一口分すくった。
そして、私に差し出してくる。
「クラリス、あーん」
キラキラ王子様が、こちらにケーキを差し出すスチル。
「⋯⋯眼福です」
フィンの笑みが深まった。
「また思考がどこかへ飛んでいるね⋯⋯俺の顔をクラリスが好きで良かったよ」
フォークを私の唇に当て、ゆっくり口を開けさせた。思わず口を開ける。
そこへ、慣れた手つきのフィンにケーキを口にゆっくり押し込められた。
「んん!美味しいっ!」
「それは良かった。俺も味を確認してみよう」
私が口にしたフォークをそのまま使い、自分の口にケーキを運ぶフィン。
「あっ、それ私が口つけたので、こちらを――」
慌てて新しいフォークを渡そうとするけど、間に合わなかった。
「なるほど、これはクラリスが好きそうな味だ。この店を選んだ理由が分かったよ」
フィンは、うんうんと頷いて私に艶っぽく笑いかける。
ん?
私、いつフィンに好きなケーキを教えていたかしら。
「じゃあ、今度はクラリスが俺にケーキを食べさせてくれる番だね」
そこへ、リクエストが来たのでフィンへと視線を戻す。
うっ、眩しい。なんて尊いお顔!
「⋯⋯分かりました。フィン、あーん⋯⋯」
「うん」
私は、緊張しつつもゆっくりとフィンの口元まで
ケーキを運び、そして――。
カランカラン。
そこへ、招かれざる客。と⋯⋯私のお店ではないけどね。
「いらっしゃいませ⋯⋯あの、大人数は困ります。お二人でないと⋯⋯」
この店の店員さんの困惑した声が聞こえてきた。
そして、被せるように何人かの男性の声も聞こえてくる。
「何だ?庶民の分際で生意気だな」
「光の聖女コンスタンス様のご来店だぞ」
「早く僕たちの席を用意しなさい」
一人だけ、甲高くて甘えた可愛らしい声が響きわたる。
「皆、そんなに店員さんを責めちゃダメよ。私は待てるから大丈夫」
店内は騒々しい客のせいで静かになっていた。皆、何事かと四人に注目している。
だから余計に、その喧しさが際立っていた。
私からは見えないけれども、その四人の方を向いているフィンはすっとよそ行きの笑顔を作った。
◇◇◇
「おや、兄上⋯⋯もう街を出歩いても大丈夫なんですか」
フィンが穏やかな声音で四人組へと声を発した。
私たちの座っていた席は、入り口近くの衝立で仕切られた半個室。
だから、四人の話し声がよく聞こえていたのだ。
当然、フィンのよく通る声は四人の耳にも届いていた。
「お前⋯⋯フィニアス、この間はよくも!」
「第二王子殿下お待ちください!」
男性一人の慌てた声と共にどすどすと誰かが近づいてきた。
まあ、第二王子に決まっているわよね。
「俺が何かしましたか?」
冷静に返すフィンの胸ぐらを掴んで持ち上げようとする第二王子。
私はそれを見て慌てて立ち上がる。
「止めて!フィンを離してください!」
第二王子の後ろにいた男性二人も止めに入る。
「この前父上に謹慎をくらったのはお前のせいだろう!?」
「俺は何も。ここで騒ぐと、また陛下のお耳に入りますよ」
「このっ!格下のくせにっ!」
第二王子がぐっと拳を握りしめ、振り上げようとした瞬間。
空気の読めない甘い声が割り入った。
「えっ、やだあ!フィニアス殿下?うそお、イケメン〜!」
きゃっきゃっ、と頬を赤らめてフィンの顔をジロジロ見つめる⋯⋯見たことのある容姿の女の子。
「まさか⋯⋯コンスタンス=トロメイラ?」
「⋯⋯あんた、何よ?⋯⋯ああ、令嬢らしくだったわね」
私の呟きに反応したコンスタンス⋯⋯この世界に似た前世のゲームで、メインヒロインであった彼女。
「ふふ、地味な容姿の下級貴族のくせに、気安く呼ばないでくださらない?」
彼女は、私を蔑むように見つめた。




