王太子の庭園②(フィン視点)
すみません週末更新になってしまいましたm(_ _)m
「フィニアス様、そろそろ機嫌を直してください。もうすぐ陛下の執務室ですよ!」
横でカインが喚いている。
「⋯⋯うるさい」
「そんな、誰がその表情を見ているか――」
「長期任務に出たいようだな」
カインを睨みつけた。
大袈裟に怯えたカインは、慌てて俺の後ろに下がった。
「俺が、そんな下手を打つと思うか?」
「い、いえ。そのような事は」
「なら黙っておけ」
しばらく静かな廊下に俺たちの足音だけが響く。
執務室前の護衛に『陛下に呼ばれた』と告げ、中に入れてもらった。
執務室の机上に広げた書類を見つめる陛下に、宰相が俺の来訪を告げる。
「待っていたぞ、第三王子」
「陛下、何のご用でしょうか」
俺たちは、表向きの顔で会話を交わした。
「例の件で話がある」
「王家の宝物絡みですね」
宰相が、俺に資料の束を持ってきた。
「そこに座って読んでおけ、もう少しで仕事が落ち着く」
促され、ソファに座り資料を広げた。
宰相が、侍従にお茶を用意させる。
お茶を持ってきた茶髪の侍従は、俺に「ちょうど良い熱さかと」と言った。
「ああ、砂糖もミルクもいらない」
「畏まりました」
カインは、そのやり取りを黙って見ていた。
あの侍従は俺の子飼いの一人だ。
これで、アントニオの商売はもう終わりだな。
もう少しもつかと思ったが、まあいい。
一族も連座だ。
「カイン、帰ったら塵を片付けておけ」
「⋯⋯承知致しました」
そんなやり取りをしている間に、陛下の執務がひと段落したようだ。
俺と向かい合ってソファに座る。
その表情には疲れが滲む。
「フィニアス、例の件を調べた。信じたくなかったが⋯⋯やはり、そうであった」
まあ、予想はついていた。
「王家に縁のある誰かが持ち出したということですね」
宝物庫に入れるのは限られているからな。
だが、勉強嫌いのアレが宝物の効果を知っているとは思えない。
予想出来る人物は――。
俺はそこで腑に落ちた。
「⋯⋯第二王子の、宝物庫の入退室記録だけが残っていた。しかし、覚えがないと」
「警備は?」
「両者とも、記憶が曖昧らしい」
という事は、何か魔法か?
宝物庫に、王家以外の者が一定時間いる場合。警報が鳴って陛下にも知らされるが、今回はなかった。
「⋯⋯どんな手を使ったにしても、王家に対する反逆行為に等しいですね」
「うむ。そうだな」
「それで⋯⋯誰ですか」
視線を下に向けた陛下は、堪えるような表情をしている。
「陛下、はっきりおっしゃって下さい」
陛下は、重い口を開いて声を絞り出した。
「⋯⋯アレクサンドラ嬢である可能性が、極めて高い⋯⋯信じたくはないのだが」
「という事は、クラリスが危険です」
その言葉に陛下はハッとして顔をあげた。
俺は、組んでいた両手を握りしめ立ち上がる。
「貸しひとつですからね」
「ああ、早く行け⋯⋯だが、クラリスとの婚約で貸し借りなしだろう?」
「父親なのにケチですね。息子のためではなかったのですか?」
「父親だが、国王としての判断だからな」
軽く舌打ちをしながらも、礼だけはきっちりしてから部屋を出る。
「カイン。兄上には貸しを作るぞ」
「分かりました⋯⋯うまくいきますかね」
「上手くいかせるんだ」
ブツブツ言ってるカインを放置し、闇魔法を展開する。
「影歩」
闇に覆われた俺は影と同化して歩いた。
これでクラリスの元へ早く着くはずだ。
「フィニアス殿下⋯⋯影歩ですか。確かに歩くより速いですけどね」
『いいから行くぞ』
俺は愚痴るカインを急かして、王太子の庭園へと急いだ。




