カフェ騒動の裏側で(フィン視点)
◇◇◇
質素な小屋の扉をくぐる。
「あら、フィン君久しぶりだわ。意外と早かったのね」
ピンクブロンドの髪を背中に流して、その人物は優雅にお茶を飲んでいた。
「お久しぶりです、聖女レイリア様。クラリスの為ですから」
そう言うと、彼女は少し眉を潜めた。
「クラリスちゃんの事は当然だわ。でも、私はもう聖女ではないの」
彼女は隣国で聖女として使い捨てられたのだ。クラリスの父と結婚し、クラリスが生まれてから力は少し衰えた。
だが、レンフィールドの小さな領地を潤すくらいの力は残っている。
クラリスは知らないが、彼女の兄と姉は実の従兄弟だ。
レンフィールド家の複雑な事情があるが、そこは彼女には教えない方がいいだろう。
俺は聖女様に向かって肩を竦めた。
「幼い頃からの癖ですから、仕方ありませんよ」
昔、父の外交に王子として付いていった。その時に、隣国でお会いした事がある。
父は聖女様を見るなり口説いて、周りを困惑させていた。
既婚者と知るとあからさまにがっかりした。俺は、そんな父を恥ずかしく思っている。
「……さて、本題に入らせて頂きます。俺の事は分かっていたはずです。クラリスの婚約を進めた意図はなんでしょうか?」
聖女様の反応を確認するように、じっと見た。
「運命を強固にするには、クラリスちゃんの婚約が大事だったからよ」
「運命?……俺は、運命なんて言葉信じていません」
「ふふ。クラリスちゃんもそうよ。二人とも同じ。でも、見えたからね」
彼女は静かな眼差しを俺に向けた。
「別に信じなくてもいいわ。ただ、絆を強くするには、障害が必要だったの。それが、今回の婚約の話よ」
「もしかして……先見ですか?」
「聖女とか、魔女と言われてるこの能力だけれど。娘の前では一人の母親なのよ」
彼女は一拍おいて、続けて言った。
「そのうち、あなたにも分かるわ」
そう言うと、彼女はお茶をひとくち飲んだ。
「このお茶はね、クラリスちゃんがアレンジしてくれたのよ。貴方も味わってみてね」
側にあったカップに、お茶を注いでくれた。
「フィンくん、どうぞ」
「俺が来るの、分かってたんですね」
笑って答えてくれない。
教えてくれないので、諦めてひとくちお茶を頂く。
「……美味しいです」
「でしょう?クラリスちゃんは、優しい娘なのよ」
味わうと、色々ブレンドされてるのが分かる。
「これは、健康にも気を遣われたブレンドですね」
「正解!カイン君は、そこまで気づかなかったようだけど」
「……精進させます」
「でも、カイン君も優しい子だったわ。ありがとう、フィン君」
優しく笑う聖女様。
「ごちそうさまでした。では、そろそろ彼女を迎えに行ってきます」
「ふふ。あの娘をよろしくね」
さあ、動くとしよう。
「行くぞ」
誰もいない空間に向かって命令した。
「「御意」」」
馬に跨がると、足下から影が飛び去っていく。
エレノアが、慌てて俺に相談してきたクラリスの『婚約』の話。
それは、影から俺の耳にはすでに届いていた。
だから、準備は全て整っている。
「さて、狩りの時間だ」
俺は、クラリスの元へと馬を走らせた。
フィニアス視点です。
クラリスとカインがカフェに行ったあとの、フィンの行動ですね。




