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第21話 揺れる灯火と、交差する策謀

 あの夜、黒服の闇術者に襲われて腕を痛めたレオンは、仲間の支えと回復魔法のおかげでどうにか快復の目途をつけていた。まだ痺れが完全には消えていないものの、軽めのクエストなら問題なくこなせる程度だ。とはいえ、かすかに残る闇の残滓が気がかりで、万が一再び同じ相手が襲ってきた場合、自力で対処できるかどうかに不安を拭いきれない。


 その一方で、王都や神殿領との関係は、いまのところ静かに進行していた。王都の魔術師ギルドからは正式な“嘱託契約”についての再打診があり、レオンはこれを慎重に検討すると返答したままだ。神殿騎士団のイザベルも「闇術の対策を続けつつ、宝鍵を活かしていつでも神殿領へ来てほしい」と伝えている。

 いずれ、魔王軍が本格的に動き出すときには、彼らのいずれか、あるいは両方と連携せざるを得なくなるかもしれないが、今はまだ大きく身を預ける決断はしたくない。仲間との協力で守りを固めながら、独立性を守りたいという気持ちが強い。



「……それにしても、あの闇術者は何者なんだろうな。結局、未だ手掛かりなしだ」


 ある夕暮れ、トルディアのギルドの一角で、グラウトが怪訝そうに呟いた。隣にはマリス、そして斥候と女剣士が一緒に座り、ロビーの片隅で小さな丸テーブルを囲んでいる。レオンは相変わらず腕に軽い痛みを覚えつつ、椅子に腰掛けていた。

 黒服の男がレオンを奇襲してから数日が経っているが、追加の襲撃は起きていない。ただし、森で不自然な痕跡が発見されたとか、どこかで闇の印が新たに描かれたとか、相変わらず不穏な噂は絶えない。神殿騎士団も夜間パトロールを強化しているが、成果は出ていないという。


「このままだと、いつどこで再襲撃を受けるか分からないわ。レオンを狙ってるなら、一度姿を現した以上、手を引いたとも思えないもの」


 マリスが心配そうに顔を曇らせる。レオンは肩をすくめつつ、「正直、俺も怖い。けど、ずっと身を隠してるわけにもいかないし……」と苦笑した。実際、変に外出を控えてクエストに参加しなければ、冒険者として収入も経験も得られない。それに仲間が暮らす日常も止まってしまう。

 女剣士が「ならいっそ、しばらく王都か神殿領へ避難する手もあるわよ」と提案するが、レオンは「うーん……僕はまだ、この街を捨てられない。仲間と一緒にここで暮らして、闇術を防ぐ手伝いもしたいんだ」と首を振る。そう答えられた以上、仲間たちは無理に押しとどめる気もなく、結果的に“これまで通り”を続けるしかないという結論に落ち着いた。



 ちょうどその夜、王都の騎士団の一員だという使者がトルディアへやって来たとの情報がギルドに届いた。勇者パーティが再び近辺での大規模討伐を検討しており、王都からも合同作戦の調整役が派遣されるらしい。もし魔王軍が局地的に侵攻の手を伸ばしているなら、先手を打ちたいという思惑があるのだ。

 当然、レオンの“守護騎士”にも白羽の矢が立つ可能性がある。実際に王都や勇者パーティが大きく動けば、彼への協力要請はさらに強まるだろう。できるだけ回避したいが、いずれ逃げきれないかもしれない。


「もし勇者パーティと再会して一緒に行動、なんて話になったら……前に嫌だって言ってたよな、レオン」


「うん。アレンはともかく、セドリックたちとは今さら組みたくないし……何より、俺はここで仲間を作ってやっていく道を選んだから」


 グラウトの問いに、レオンはきっぱり首を振る。追放された過去の因縁を水に流せるほど気持ちが整理されているわけでもない。何より、いまのパーティで積み上げた経験こそが、最弱だった自分を変えてくれたと感じているからだ。

 マリスや斥候も頷き、「そうそう、もう遅いよね。向こうがどう動こうが、私たちは私たちの道を進むだけ」と言葉を添える。



 そんな話をしていた翌朝、ギルドで衝撃的なニュースが駆け巡る。「近くの村が魔物に襲われたようだ」との急報。小型の魔物や盗賊程度の事件は日常茶飯事だが、今回は目撃証言に「黒服の男が指揮していた可能性がある」という不穏な内容が含まれていたという。

 報せを受け、神殿騎士団や町の冒険者が慌ただしく動き始める。被害が大きいかどうかは不明だが、レオンは背筋が凍る思いを覚える。あの男が本当に魔物軍を操る力を持っているなら、より直接的な破壊活動を始めたのかもしれない。


「これは……行くしかない。被害が出てるなら、放っておけないよ」


 レオンが強く決断すると、仲間たちも迷わず同調した。マリスとグラウト、斥候、女剣士——いつものメンバーで、被害を受けた村へ調査と支援に向かうクエストを受注する。神殿騎士団との合同にする選択もあったが、彼らは別ルートから現場へ直行するとのこと。手分けして周囲を捜索したほうが効率的だという。



 馬車に乗り、半日かけて到着したのは森の入口にある小さな集落。家が十数軒ほど点在し、畑が広がるのどかな風景……のはずが、見るも無惨に破壊された建物があり、何軒かが焼け落ちた跡が残っている。農具や家畜が散乱し、血の跡も生々しい。

 レオンたちは慌てて村人の生存者を探し、話を聞く。どうやら昨夜、突如として魔物の小規模集団が襲ってきたという。ゴブリンや狼型のモンスターが多数おり、それらを指揮していたのが「黒いローブの男」だったと複数人が口を揃えて証言している。

 幸い、村人は一部が負傷した程度で、多くが逃げて無事だったらしい。だが家畜や倉庫の物資を奪われ、数軒の家が燃やされてしまった。男は「“時空を歪めるものをここに匿ってないか”」などと意味不明なことを叫んでいたという。時空を歪める——再びその不穏なキーワードだ。


(やはり……奴は俺を探しているんだな。でも何で村人に当たる? まるで「レオンが隠れてないか」みたいに……)


 歯を噛みしめるレオンに、グラウトが「野郎、今度は民間人を巻き込むのか……絶対に許せない」と怒りを露わにする。マリスも火傷を負った村人を癒しつつ、「このまま放置すれば、また別の村が被害を受けるかもしれない。早く追跡しようよ」と苛立ちを滲ませる。

 だが、黒服の男は襲撃したあと魔物を引き連れて姿を消したという。どの方向へ逃げたのかも曖昧だ。村人たちは夜闇の中、闇術者の移動を視認できなかったらしい。手掛かりはほぼ皆無に等しい。



「くそ……またか。無差別な破壊活動を始めたのか? それとも、俺をおびき出すためにわざと目立ったことをしたのか……」


 レオンは拳を握りしめ、悔しさに唇を噛む。自分を探すために罪のない村人に危害を加えるなんて、到底許せない。仲間たちも同じ気持ちであり、その場で即座に捜索を開始する。

 村の周辺に斥候が足跡や物の痕跡を探し、森の奥にある可能性を探るが、男が闇術で飛び去ったのか何らかの転移を使ったのか、痕跡は曖昧で追うのが難しそうだ。さらに日没が迫っており、夜間に森へ踏み込めば逆に奇襲されるリスクがある。


「このまま突っ込むのは危険だ。いったん村を守りながら、夜を越して明日また周辺を探ろう」


 グラウトや女剣士がそう提案し、村人たちの同意を得る。もし再襲撃があれば、ここで迎撃する形になるが、レオンとしては闇夜の戦闘は得策ではないと判断する。

 村人の中にも山狩りに参加したいという者がいるが、むしろ危険だと説得して控えさせ、仲間5人と村の有志数名で夜通しの見張り体制を組むことにした。レオンは守護騎士を呼ぶ準備を整えつつ、できれば“無駄遣い”は避けたい心境だ。



 そして夜が訪れ、辺りは静寂に沈む。村の中心部に焚き火を置き、家々の消失を嘆く人々が疲れた表情で座り込んでいる。レオンたちは交代で巡回し、万が一の襲撃に備える。

 だが深夜を過ぎても闇術者や魔物の姿は見えない。あまりに静かで嫌な予感さえ覚えるほどだ。やがてレオンの順番が来て、ひとり村の端を回っていたとき、再び「視線」を感じた。

 ピリッと空気が震え、思わず背を向けて盾を構えるが、そこには誰もいない。月明かりの下、低い茂みが揺れているだけ。肩透かしを食らった形だが、胸騒ぎは消えない。


(もしかして森の奥からこっちを見てるのか? このまま朝を迎えても真相は分からないが、怖くはあるな……)



 結局、夜が明ける頃まで大きな動きはなく、村には平穏な朝が訪れた。仲間たちと顔を合わせ、「襲撃はなさそうだね」と胸を撫で下ろす一方、このままでは手詰まりだ。

 斥候がもう一度森を探ると、「僅かに移動した足跡があるかもしれない」という指摘が出る。方角的には北東、さらに深い森を抜けて山裾へ向かうルートらしい。あの黒服の男がそこへ消えたのなら、捜索するしかない。

 村人への保護は一部の冒険者が引き続き担当し、レオンと仲間たちは朝食を済ませて北東の山裾を目指すことにした。いつ闇術者が出てくるか分からないが、放置していればさらなる被害が広がるだろう。


「もう、決着をつけないと……。あいつを放っておいたら、また無辜の人々が襲われる」


 レオンは不安を抱えつつ、短剣と盾を確かめる。腕の痺れはだいぶ引いたが、闇術者の呪いが完全に消えたわけではない。一方でグラウト、マリス、斥候、女剣士の4名も「状況によっては守護騎士を呼ばなきゃ無理だろう」と口を揃える。レオンもやるなら全力で挑むしかない。

 そう決断し、彼らは朝日が射す森へと歩みを進めた。この先に何が待ち受けているか分からないが、黒服の男と決着をつけなければ、自分たちも前へ進めない——そんな固い意志が、5人の胸に満ちている。



 森の奥は霧が深く、木々が生い茂って視界が悪い。斥候が足跡を辿るのに手間取るが、それでも少しずつ山裾へ近づく。昼近くになった頃、低い崖の脇を回りこんだ瞬間、微かに闇の匂いが鼻をつく。


「ここだ。何かいる……気をつけて」


 マリスが火球の魔力を溜め、グラウトが剣を抜く。レオンも盾を構え、紋章を意識しながら周囲を見回すと、崖に空いた小さな穴のような洞穴を見つけた。そこから薄く邪気を感じる。

 やがて、洞窟の入り口に見覚えのあるシルエット——まさに黒服の男が静かに佇んでいるのが見えた。こちらの気配に気づいたのか、男が小さく嗤う。


「やはり来たか、“時空を歪める者”……。ここが墓場になるかもしれんぞ」


 凍るような声と共に、男の背後から再び闇の靄がわき立ち、小型の魔物が数体姿を現す。ゴブリンとも違う、醜悪な小鬼の類いだろうか。さらに気配を辿れば、大型の狼型モンスターがうごめいている音もする。

 仲間たちが即座に戦闘陣形を取る。男が一息吹きかけるように指を鳴らすと、魔物たちが一斉に突撃してきた。森の木立に響く怒号と唸り声。レオンたちは斥候と女剣士が前衛を分散し、マリスが後方火力、グラウトが突進役として切り込む。

 闇魔物の動きは素早く、普通のゴブリンより遥かに動きが洗練されている。噛みつきや爪撃を繰り出す一体を女剣士が受け止め、マリスが火球で援護。斥候は弓矢を放つが、何匹かが狡猾に避ける場面もある。

 レオンは盾を前にかざし、短剣で近寄る敵を斬るが、男は自ら戦闘に加わろうとせず、一歩引いて闇術を操っているように見える。闇の靄が再度広がり、まるで魔物を増援するかのような不穏な波動だ。


(このまま魔物を相手にしてたら体力を消耗するばかり……あいつを止めなきゃ)


 レオンは歯を食いしばり、仲間に目配せする。グラウトが大剣で一体の魔物を叩き伏せ、「レオン、やれ!」と叫んでくる。つまり、騎士を呼んで決定打を叩き込むしかないという合図だ。

 一瞬、男の視線がこちらへ向き、薄く嗤うように口が歪む。まるで「またそれか」と言わんばかりに……。けれど、考えている暇はない。紋章に魔力を集中し、レオンは叫ぶ。


「来い、“未来のレオン”……!」


 閃光が溢れ、銀の鎧が姿を現す。男が闇の指を絡ませようとするが、今回はレオンも警戒しており、騎士が即座に盾を振るって影を断つ。勢いに乗って男へ詰め寄ろうとするが、森の木々と魔物たちが邪魔をする。

 男が「甘い」と呟いて指を鳴らすと、闇の魔物たちが騎士に一斉に群がってくる。短時間の騎士召喚を分散させる作戦か——騎士は瞬発力で何体かを斬るが、多勢に無勢、闇狼が背後から噛みつきかける。

 グラウトがそれを横から薙ぎ払い、マリスが範囲火炎を放って数体を焼く。斥候と女剣士も懸命に敵を引き裂いていく。騎士は残った2体を一閃で断ち切り、ようやく男と向き合う形になるが——男は軽く舌打ちをして距離を取りつつ、またしても闇の扉のような魔術陣を形成し始めた。


「また逃げる気か? このままじゃ……!」


 レオンが焦る。しかし男の闇術は相当強力で、かき集めた邪気が空間を歪めている。騎士が急いで詰め寄るが、あと少しのところで男が笑みを浮かべて闇の扉へ消える気配を見せた……その瞬間、一筋の火矢が横合いから飛んできた。


 シュッと音を立て、火矢は男の腕をかすめる形で命中し、黒いローブが燻りはじめる。男が「ぐっ……?」と動揺し、一瞬扉の完成が途切れた。見れば、マリスが新しい呪文“火矢連撃”を使っていたのだ。


「やった……!」


 レオンが息をつくが、男は苦しそうに体をかがめながらも、最後の闇術で強引に転移を成功させるのか、姿が不鮮明に揺れる。その際に、騎士がわずかな隙を突いて剣を振り下ろした——が、やはり間に合わない。男は「……時空の力、いずれ奪わせてもらう」と呟き、闇に溶けるように消えていった。

 騎士も剣を空振りする形で止まり、光の粒へ還っていく。短い召喚時間がほぼ尽きたようだ。深呼吸をするレオンも膝をつきかける。多くの魔物を倒したものの、黒服の男の捕捉には至らなかった。



「また逃がしたか……」


 グラウトが肩を落とし、女剣士も斥候も歯噛みする。でも、わずかに追撃できたことで男が負傷を負ったかもしれない。勢いを削ぐことはできたと言えるだろう。

 しかし今回もまた、決着はつかなかった。周囲には闇狼や小鬼の死骸が散乱しているが、あれほどの数を操る男はやはり“ただ者ではない”。マリスが息を切らしつつ、レオンの背中を軽く叩く。


「危なかった……でも、騎士が来てくれたから何とか被害を最小限に抑えたわ。ケガは平気?」


「うん、ちょっと魔力を使い切ってめまいがするけど……無理すれば大丈夫。今回も闇の扉で逃げられたが、少しはダメージを与えられたみたいだし……」


 レオンは弱々しく笑う。腕の痺れは前ほどではないが、連戦続きで体力が削られている。仲間たちが手分けして周囲を確認するが、男の痕跡はやはり闇に掻き消されている。

 しかし、魔物を操り民を襲う行為は明白な悪意。これが放置されれば、また別の村や冒険者を狙うだろう。レオンはもう逃げずに、神殿騎士団や王都とも協力して闇術者を追わなければならないと思い始める。



 森を出て村へ戻り、事の顛末を説明すると、被害は最小限ながらも再度襲撃があり得ると分かった以上、早急に防衛策を検討せざるを得ない。神殿騎士団が巡回を強化し、王都の騎士団にも援軍を求める案が上がっている。

 そんな中、レオンは仲間たちに決意を伝える。「多分、俺たちだけじゃ限界がある。王都と神殿領どちらか……あるいは両方に正式に協力を依頼しよう。もしあいつが再度狙ってくるなら、一緒に待ち伏せして捕捉できるかもしれない」


「やっぱり、そうなっちまうか。正直、気は進まないが……奴を野放しにしておけない以上、力を借りるしかないな」


 グラウトが唸り、マリスも黙って頷く。斥候と女剣士も「それがいいね。今のままじゃ夜道一つ歩けないし、村や街にまた被害が及ぶかも」と同意する。

 こうして、レオンは改めて“黒服の闇術者”を捕縛・討伐するための大きな動きに踏み込む決心を固める。王都か神殿領か、あるいは両方を巻き込む形で捜索網を敷くしかないだろう。もう意地を張って単独で頑張るわけにはいかない。


(もし魔王軍の一員だとすれば、早期に芽を摘まないと取り返しがつかなくなる。闇術の被害者をこれ以上出さないためにも、協力関係を築くしかないんだ)



 村を後にしてトルディアへ戻る帰途、レオンは腕の痺れをこらえながら馬車の揺れに身を任せる。仲間たちは周囲を見張るが、追撃の気配はなく、あの男もさすがに連戦は避けるだろう。

 守護騎士を使っても捕らえられない相手の強さが、レオンの胸を大きく締めつける。もし本格的に魔王軍が動くとき、ああいう強敵が複数同時に襲いかかってきたら、守りきれるのか? 仲間を傷つけずに済むのか? 絶えず不安が苛むが、同時にいつかはこの闇を断ち切る力を得なければならない。


「大丈夫。俺たちには“未来の騎士”がいるし、仲間がいる。神殿や王都とのパイプも持てば、立ち向かえる可能性は上がるはずだ」


 小さく自分を励ますように呟くと、マリスが「そうよ。今回だって勝てたとは言えないけど、魔物は倒せたし、あいつにも少しダメージを与えられた。焦らず一歩ずつね」と微笑む。

 レオンは苦笑しながら「ありがとう」と返し、馬車の窓から見える暮れ始めた空を見上げる。王都や神殿領——大きな勢力と協調すれば、きっとこの闇術者を追い詰められるかもしれない。いずれは魔王軍との戦いにも繋がっていくかもしれないが、やはり仲間と共に未来を切り拓く道を信じるほかない。



 街の灯火が点り始め、トルディアの町並みが見えてきた頃、レオンはふと紋章のかすかな脈動を感じた。守護騎士が一瞬だけ意思を伝えるような気配——「君の選択を信じる」とでもいうように、柔らかく胸を温める。

 そうだ、いくつもの厄介な問題が山積みでも、仲間と騎士がいる限り、自分は進めるはずだ。決して一人きりではない——その感覚がレオンを奮い立たせてくれる。


「次は必ず捕まえる。あの黒服の男を……。そして闇術者の脅威を取り除く。そのために、必要なら王都や神殿領と組む。俺は――もう最弱じゃない」


 誰にともなく呟き、レオンは馬車を降りて夕暮れの街路を踏みしめる。腕の痛みはまだ残るが、それすらも今は戦う意欲に火をつける要素だ。

 彼の瞳には決意の光が宿っていた。試練は続くが、闇夜の先にある一縷の光を追い求めて、守護騎士と共に走り抜けるしかない。時空の秘密を抱える召喚士は、ついに自ら大きな争いの渦へ身を投じ始めるだろう。その歩みを止めることは、もはやできないのだ。

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