孫の数は……
「ああ、オデット。心配する必要はない」
人間であるシリルの寿命について、ふと不安になる私に、キルが心配ないと声をかけた。
「シリルの件で、何か知っているのか?」
「エルエニア王国には、聖女がいるだろう? 聖女フィオナ。彼女は自身の伴侶に、長寿のギフトを与えることができた。だがフィオナの伴侶はエルフだ。元々長寿だろう。その一方で、長寿である魔族のオデットと結ばれたシリルは、ただの人間。そこでシリルに対し、聖女から長寿のギフトが与えられたんだよ」
これには心底安堵することになった。
魔族の女は魔力はないが、長寿ではある。
人間のシリルと魔族の私とでは、愛する人との別れが、あっという間にやってきてしまう。そう思ったが、それはないと分かった。
しかも聖女から長寿のギフトを賜ったその時の年齢を、キープできる。
これでずっとシリルとは一緒にいられると、思わず嬉しくなってしまう。
「そう言えば叔父上。私は封印されているはずの記憶を思い出したぞ」
封じられていた魔力暴走時の記憶には、シリルとの出会いも含まれていた。
今回、暴走時の出来事を思い出すと同時に、シリルのことも思い出せたのだ。
ワイン煮込みの牛肉を頬張りながら、このことを報告した。
するとグラスを口元に運んでいたキルが、動きを止める。
「魔力暴走した過去の記憶が、蘇ったのか?」
コクリと頷くと、キルはワインをゴクリと飲み、こんな推測を立てた。
「今回、魔力暴走したことで、あまりにもその魔力が強く、記憶を封印していた魔術を破壊したのかもしれないな。それだけあの魔力は、すさまじいものだった」
「そうだった、叔父上。暴走していたとはいえ、私は何度も叔父上に、魔術を行使した。そこは本当に申し訳なく思う。すまなかった」
「ははははは。そう恐縮するな。らしくないぞ、オデット」
キルはチーズをのせたパンを口に放り、しばらく味わい、こんな風に告げる。
「ここではない世界には、魔力を持つ女も存在すると聞いたことがある。“魔女”と呼ばれるものがいると。もしかするとオデットは、その魔女の血を継ぐ者なのかもしれないな、その魂が。正直、あの時のオデットの魔術の威力は……。本家本元の私をしのぎそうなものだったぞ」
「封印されていた記憶は夢で蘇った。逆に今回、魔力が暴走している間の記憶は……少し断片的だ。でも確かに叔父上に、いくつもの魔術を行使したことは覚えている。だがそんなに威力が……」
「まあ、安心しろ。今回ガス抜きしたから、魔力暴走はしない。そのチョーカーを外しても、普通に理性を保ち、魔術を使えるだけになるはずだ。でもシリルとはうまくいっているようだし、そのうち魔力は落ち着くさ」
そこで思い出す。キルがシリルにその件を話したことを。
思わずキルを睨んでしまい、彼は話すのを止めていた。
だが、「もしや」という顔つきになり、私へ尋ねる。
「なんだ、オデット。シリルに私が話したことを、怒っているのか?」
「と、当然だ! なんて話をシリルにしてくれたんだ!」
「では何か、オデットが自分でシリルに話したかったのか?」
これには「な、なんてことを……」と絶句してしまう。
だがキルは意外にも正論を並べる。
「それとも話すつもりはなかったのか? でも夫婦なんだ。シリルとの間では秘密はなしだろう? そこはいずれ話すことになったのでは?」
「そ、それは……」
「まあな、そんな話、臆面なく言える関係になっているかもしれない。とはいえ、あくまで生物学的な話であり、生理現象の話でもある。だから男同士で話した方が、いいとは思わないか」
そう言われると、まさにそうだ。
できればこんな話、シリルに私からはしたくない。
どんな顔をして話せばいいかも、分からなかった。
結果として、例の件をキルがシリルに話したのは……。
「叔父上。理解した。私からこの件をシリルに話すのは無理だったと思う。よって叔父上がシリルに話してくれて、正解だった。……ありがとうございます」
キルにペコリと頭を下げると。
「まあ、この前話した通りだ。孫の数は……」「叔父上!」
時に大声が聞こえるキルと私の昼食の様子を見て、セイン、シアとペルは、少し離れた場所で、クスクスと笑っていた。























































