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乙女ゲームのラスボスですが、勇者と結婚することになりました。  作者: 一番星キラリ@9/2やられる前に発売:商業ノベル&漫画化進行中


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平和に生きて欲しい。

 ベッドに仰向けになった私を、シリルの天色の瞳がのぞきんでいる。

 その目に、まさにドキドキした表情の私が映りこんでいた。


「ただ自分の腕の中にオデットを抱きしめ、休息したかった。そうすることで心が癒される。それは自分にとって、とても大きな意味を持つ」


 ふわりと空気の動きを感じ、気が付くとキスをされていた。

 でもそれはやはりあっという間で、横になったシリルに抱き寄せられている。

 まるで綿菓子を食べた後のようだ。

 そのキスはあっという間で、甘く切ない。

 もっとその味を感じたいのに。

 もどかしさとじれったい気持ちが残る。


 だが……。


 その胸に顔を寄せると、規則正しいシリルの鼓動を感じた。


 昼寝さえも有言実行。ちゃんと眠りについている。

 もっと綿菓子を食べたいと、おねだりはできない。

 ねだる? 誰が? 私が? まさか!

 そもそもそんな、ねだるなんて無理だ……!


 一気に血流がよくなって、体が熱くなってしまい、深呼吸をすることになる。


 シリルの寝息以外は、天幕の布越しに外の喧騒が小さく耳に届く。

 すべてを遮断しているわけではない。だが大きな音を押さえる魔法が、この天幕にはかけられていると、シリルからは聞いていた。


 静まった頭でぼんやり考える。


 私はただそばにいて、こうやってシリルの腕の中にいればいいのか。


 シリルだからなのか。

 それとも男性は皆、こんな考え方をするのか?


 前世の気質が出て、何かしないとダメなんじゃないかしら?と思ってしまうが――。


 無理をしなくていいのだろう。気づいて自分ができることがあればやればいい。

 懸命に何かしなくちゃと慌てる必要はないんだ。きっと。


 そこでそっとシリルの胸に触れる。

 眠っているので、筋肉は弛緩していた。おかげで胸筋がないみたいに柔らかく感じる。

 でも力をぐっと入れたら、私が拳で叩いても、弾き返すぐらい強靭になるはずだ。


 そういえばシリルが十五歳で、騎士として従軍した時。

 私に会ったことがあるとお義母様は言っていた。

 一体いつ会ったのか、聞いてみたいと思っていたことを思い出す。


 セインとの決闘が終わったら、聞いてみよう。


 それにしてもセインは私を取り戻し、何をしたいのだろう?

 もうアビサリーヌは滅びたし、復興なんて無理だ。

 どこか新天地を見つけ、そこで第二のアビサリーヌでも建立するつもりなのか。

 いずれにせよその時、私を祭り上げる必要はないのに。

 セインの名だけで、十分、残された魔族は集まるだろう。

 いや、そんなことはせず、平和に生きて欲しい。


 そんなことを考えていると、いつの間にか瞼が重くなっている。

 シリルから遅れること五分後。

 私も眠りに落ちる。


 そして――。


「シリル様、時間です」


 テトの声に起こされる。


 「分かった」と素早く応じ、シリルはすぐに上体を起こす。

 まだ少し寝惚けた私の額にシリルが「チュッ」とキスをするので、一気に覚醒できた。


「テト、装備を身に着ける」「かしこまりました」

「私も手伝います!」


 こうしてセインとの決闘に向け、シリルの準備が始まった。


 いざとなってもそばにはレウェリンがいてくれる。

 ゆえに機動性を優先し、シリルが身に着けるのは、革製の胴鎧キュイラス籠手アームブレース、そして脛当て(レッグアーマー)だ。胴鎧キュイラスの心臓のところだけ、甲冑と同じ金属が使われている。


 テトと手分けし、装備を身に着けるのを手伝い、そして手入れの終わった短剣などもベルトへと収めて行く。最後にモンド公爵家の紋章のついた留め具で、はおったマントをとめた。


「ありがとう、オデット。おかげで準備が早めに終わった」


 シリルが黄金の髪を揺らし、綺麗な笑みを浮かべた時。


「シリル総司令官、カイテリアが率いる軍は大幅に撤退です。西の門から多数の魔族が逃げ延びたようなので、追跡を続けます。……いよいよですね」


「ブラウン指揮官。午後、カイテリアが動くことはないと思うが、もしもの時はハビエット指揮官と共に、ミルトンとレダとも連携をとり、動いてい欲しい」


 ブラウン指揮官が「イエス、サー」と背筋を伸ばす。


 レウェリンとキル、マーシャルソンが現れ、ミルトンとレダもやって来た。

 ハビエット指揮官は西の門から部下を連れ、魔族の追跡に加わっている。


「では後は任せたぞ」


 キリッとした表情のシリルが、集まったみんなの顔を見た。

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