集落の危機
すみません。用事が長引いて投稿が遅くなりました。今日からふっかつです!
※別視点です
「リーファ起きろ!逃げるんだ!」
私はお父さんの鬼気迫る声で目を覚ました。
逃げる?お父さんは何を言ってるのかな?私たちの集落があるこの森は暗死の森って呼ばれるくらい強い魔物がいっぱいいるけど、お父さんのお父さんのお父さんの代ぐらいからずっと続いていて、集落から出なければそんなに危ないことも起こらないわよ。
だがそんな私の寝ぼけた考えは、お父さんの次の一言で跡形もなく消し飛ばされる。
「ゴブリン……ゴブリンの大群が集落を襲ってるんだ!」
「えっと…なんでゴブリンが?今までそんなことなかったよね?」
起きたばかりであまり働かない頭でそう考える。
「いいから逃げるぞ!」
お父さんに引っ張られて外に出て、私はようやく現状を把握したのだった。
木の上に建てられたら家から見下ろす景色は何時ものものとは違う。切り倒された木々、悲鳴、誰のものか分からない赤い赤い血。あの血は誰のなの!?ゴブリンのものだきっとそうに違いない。
「おいっ行くぞ!」
再びお父さんに引っ張られて景色はグングン変わっていく。…こんなに荒ぶったお父さんみたの初めてだな…こんな状況になるといつも穏和なお父さんもいつも通りとはいかないよね。
世の中では人は簡単に死んでしまう。でも心のどこかで私は死なないと"思っていた"赤い水溜まりに沈んでいる小さな子供を目にするまでは。
「ッ!クソがぁぁあ!!」
お父さんは私の手を離し一直線に駆けて行き、その子供を殺したであろう血塗れの剣を持ったゴブリンの心臓をナイフで突き刺した。お父さんの手にはどっぷりと血が絡みついている。
「くっ…もう息が無いのか」
私も死ぬかもしれない!あそこで倒れているのは私だったかもしれない!
木の陰や建物の陰、私の陰からたくさんの黒い手が伸びてくる。
「お父さん…」
私は急に怖くなってお父さんに手の手を握ろうとする。
「…リーファ急ぐぞ」
だけどお父さんは私の手を握ってはくれなかった。
私はお父さんの背中だけを見て走る。黒い所を見るとあの不気味な手が私をあっちに引きずり込もうとしてくるからだ。
さっきから視界の端がジリジリと蠢いている気がする。気のせいだと思って見ないようにしていたけど、目の端っこを小さな虫が飛んでいるような感覚は消えるどころかどんどん大きくなっていく。
ジリジリゾワゾワジリジリゾワゾワジリジリゾワゾワジリジリゾワゾワジリジリゾワゾワジリジリゾワゾワジリジリゾワゾワジリジリゾワゾワジリジリゾワゾワジリジリゾワゾワジリジリゾワゾワジリジリゾワゾワジリジリゾワゾワ蠢いている"何か"が一瞬だけ私の視界の真ん中まできた。
小さな子供の手の形をしていた
「嫌ァァァアア!!嫌!嫌だっ!怖い死にたくない怖い怖い怖い!」
私は耐えきれなかったみたいだ。
足は鉛の様に重くなり、視界ももう半分くらいになってしまった。
「リーファ!大丈夫か!?…もう少し、もう少しだけ走れば皆がいるところに着くんだ!」
お父さんは手を伸ばそうとしたけどまた引っ込めてしまった。
ゴブリンが向かってくる。三匹のゴブリン。私が大きな声を出してしまったせいで気づいてしまったんだ…
「逃げろリーファ…ここは私が食い止める」
「で、でも私はーーー」
「いいから行くんだリーファ!!!」
私は恐くて悲しくて走り出した。こんなに強く怒られたのは初めてだ。
それからは、走って走ってとにかく走ってーーーそして止まった。
ゴブリンと言えば気持ちの悪い笑みを浮かべているものと思っていたんだけど、それは違ったよ。
何故なら目の前にいるそれは、血走った目をギョロリと動かし双眼で私を睨み、必死の形相で私を見つめているからである。
いつの間にか黒い手は見えなくなっていた。だけどその代わりに私から見える世界の全てが黒ずんでいる。
どうやら私は黒い手に捕まってしまったみたい。
頑張ってくれた私の足も、ついに力を失う。
「もう…いいよね…」
逃げなくても。だって私は手に捕まってしまったんだから。
ゴブリンが剣を振り上げる。
『ん?…この世界で初めて人を発見だな』
声が聞こえた気がした。
剣が振り下ろされるのに合わせて、私の視界も赤く染まる。
……痛くない?……何か聞こえる…
「ーーーか?大丈夫か!?お~い生きてるぞー」
恐る恐る目を開けるとそこには黒い髪で私と同じくらいの男の顔が映った。横に何か明るい緑色で動いてるのがある。
「よ~っし【ヒール】!」
緑色の何かは小さな女の子だったみたい。ヒールをかけてくれたおかげて鉛のように重かった足が再び動くようになったみたい。
「それで…なにがあったんだ?」
黒い髪の人が聞いてくる。何がってーーーっ!そうだお父さんが!
「お父さんがねっ!大変なの!ゴブリンがたくさん、三匹も、お父さんちっちゃいナイフしか持ってないのに!」
自分でも何を言っているのかよくわからない。でも早くしないとお父さんがーーー
「つまり君のお父さんが危ないってことか………道案内宜しく」
男はヒョイと私を持ち上げて走り出す。
ええっ、ここ、これってお姫様抱っこってやつじゃーーー
「どっちに曲がればいい?」
「えっと左です!」
何を私はこんな時に下らないこと考えてるんだ。
そして私は道案内を続けるのだった。
お父さんが戦ってた場所には三匹のゴブリンの死体が転がっていた。お父さんは無事なようだ。
「…!お父さんっ…」
思わず安堵から涙が溢れだす。
ギギャ グガァ
ギギィ ゴァア
前方からたくさんの鳴き声が聞こえる。
「ゼェ…ゼェ……やっと……追い…ついた…」
何気に緑の子凄いな…遅れてるとはいえこのペースに着いてきてる。
「取りあえずあっちに行ってみるか」
「ちょっ…と……非道い…」
緑の子を無視して走り出すーーー可哀想だなぁ。
広場にでると…半分くらい集落の人が集まっていた。その中にはお父さんの姿もあった!本当に良かった…
しかしそれに向かい合うようにゴブリンの一団。三十匹くらいいる…そしてその中で一際大きいのが群れをまとめているみたいだ。
両者睨み合うようになっている。
「あれ…やってみようかなぁ」
黒い髪の男はそう呟きながら私を降ろす。
そしてどこからともなく綺麗な透明な石を取り出す。
「あーっと……皆さん下がって下さい!」
集落の人々はよく分からないまま下がる。
それをみた大きなゴブリンが雄叫びを上げこっちに走ってきて、それにほかのゴブリンたちも続く。
それに対して男は何か一言呟く。
直後、世界は炎で埋め尽くされた。
その時私は、よく分からないけど助かったんだなぁーと思った。




