先輩の使徒二人
一度移動方法が確立されれば以後はそれになる。
王都からカダルまで二日で到着。
宿を取りギルドで地図を購入。
迷宮の地図は割と高いが必要経費と割り切って買った。
ローさんが緊急と言ったからには急いで片付けないといけない。
おそらく誰かが女神の翼を手にしてしまうんだ。
夜のうちに地図を重ね合わせて最短距離を考えて朝から迷宮に向かった。
カダルの迷宮は王都と比べて圧倒的に人は少ない。
しばらく歩いているとボンヤリと浮かんでいる白い何かが現れた。
幽霊と言われると納得出来るような出来ないようなそんなレベルである。
「戦いは私にお任せください。全て薙ぎ払って御覧に入れます。神聖武器付与」
アイメルの両手のシールドバトンと靴が白く薄っすらと輝いた。
武器に魔法を付与するあれか。
「行きます!」
トンっと軽く宙を蹴るように駆け出したアイメルはまるで舞うように戦う。
ゆっくりに見えたと思えば鋭い蹴りが放たれ幽霊は霧散して結晶が残りアイメルは得意げに胸を張った。
やっぱり強いなこのお嬢さん。
拾い上げた結晶は小さく、ギルドに持って行けば一つ十カナ程度。
上層なのに探索者はほとんどいない。
ここカダルの迷宮は他と大きく違う点が二つある。
ここは基本的に幽霊などの物理無効の魔物しか出てこない。
倒すには魔法か魔法の掛かった武器か武器に一時的に魔法をかけるか等の魔法がなければどうにもならない。
魔法のかかった武器は高い。
一般に武器屋で売っているロングソード一本二万カナ。
だがそれが魔法の掛かったロングソードとなれば値段が跳ね上がる。
かけられている魔法にもよるが一番多いのが頑強の魔法。
これは刃こぼれしたり折れにくくなる。
値段は一千万。
一般的なゲーム出ててくるような属性付与の魔法剣は最低が土で五千万。
最高が神聖九千万。
捨て値でその値段はするとの事。
それらは作る事が出来ず迷宮の奥や未発見の遺跡などで発見されたりする事がある。
何せ大気から魔力を吸って魔法を発動するので使うのに魔力が要らないのだ。
だから一般に魔法剣と言えば武器屋で売っている武器に魔法の刻印を刻まれたタイプの魔法剣を指す。
魔力を流すと刻印に刻まれた効果を発揮するがこれを発動させるのにはかなりの魔力が必要になる。
常にそれで戦わなければならないためここの人気がない理由の一つであり、もう一つは物理防御が出来ないからだ
「この先の十字路で右から三。倒してそこを左。次を真っすぐ。その次を右です」
「了解です」
瑠香は地図を見ながら指示を出している。
残念ながら今回戦いで瑠香の出番はない。
時間がないから以前やったように穴を開けて一気に七十階層を目指す。
場所は三階層の端からが一番分かりやすいので三日目には穴掘りを開始し十日程で目的地に着く。
その予定だったんだが二日目に転移陣から出ると声をかけられた。
「アンタら日本人か」
振り向くと男女二人組。
男の方は二十歳くらいで簡易プロテクターと俺と同じくおそらく一山いくらの剣。
女の方は中学生くらいで茶色いローブに杖。
どちらも瞳は黒いが髪は茶色で顔立ちは日本人っぽい。
「そうだ。君達もそのようだね」
前に使徒について聞いた事がある。
確かカダルには使徒が二人いて迷宮で魔法をぶっ放して稼いでいると聞いていたけどこの二人か。
何やら面倒な予感がするがとにかく挨拶だ。
「初めましてだね。俺は周防甲斐。カイと呼んでくれ」
俺の自己紹介にアイメルははっとした顔をした。
「し、失礼いたしました。私は正道教会司祭アイメル・シャトヤーンと申します。アイメルとお呼び下さい」
「私は星乃宮瑠香。どうぞ瑠香と」
アイメルは聖女候補とは名乗らなくなった。
「俺の事はゴウって呼んでくれ」
「アタシはショウコね」
こちらが名乗っても本名及びフルネームを名乗らない。
最低限の礼儀を知らんと考えるか名乗りたくないのでこの世界での愛称的な物で名乗ったと考えるべきか。
何にしろそう名乗るのならそう呼べばいいか。
俺がこの世界に来た時にはすでにいたから先輩なのは間違いないから詳しい話を聞くとしよう。
使徒はアホが多いと聞いたが今まで出会った中にアホはいかなっかった。
さてこの二人はどうかな。




