チートチート
二人に先導され入った店は落ち着いた雰囲気だった。
席に着いた瞬間に分かった事はそこそこ値段のする店だと。
メニューを見ると俺がよく行く和食の店より高い。
俺達がおすすめと書かれた物を頼むと二人はいつものと言った。
すると店員はスッと去って行ったのでどうやら常連らしい。
「日本人に会うのは二回目だぜ」
ゴウは見た感じ軽いと言うかチャラい大学生。
ショーコはギャルっぽいが多分中学生くらいか。
「会ったのはどんな人だったんだ」
ヒロ君がこの迷宮に来ているからヒロ君だろうがマリンは一緒じゃないのか。
「ヒロって奴でさ。剣三本も持ってたな。けどあいつチート無いって言ってたな」
「そうそう死んでないから女神にも会ってないって。チート無いとかかわいそうだよね。後マリンって言うゴリラ女」
出た。
チート。
異世界の手引き曰く。
異世界に転生あるいは転移して凄い能力を手に入れた奴の大半が口にする言葉。
現地の人間からすればとんでもない力で主人公達は何の努力もなく手にする。
そして口をそろえて言うのだ。
これはチートだと。
何がチートじゃ。
馬鹿の一つ覚えみたいにチートチート言いやがってと。
言いたい事は分かる。
ケン2の小説にも『異世界行ったらチート貰った』とか『俺はチートで無双する』とかあったな。
最悪なのはその中で登場した現地の王女までチートですと言った事だった。
本当に何考えて書いたのか馬鹿じゃねえのかと思ったよ。
しかし本当にいるんだ。
加護をチートとか言う奴がと書きなぐられていた。
別に自分に害が及ぶわけではないけどチートチート言われるとイラっとすると。
確かにイラっとしたわ。
マリンはゴリラ女か。
「そうか。けど彼は一人でセカイエの迷宮を踏破したんだ。特別な力なんか無しに」
「マジかよ。あいつチート無いって言ってたけど絶対嘘じゃねえか」
「かわいそうって思った私の気持ち返してよ」
言いたい事は分かる。
確かに飲み食いなしで平気と言うのもある意味反則ではあるか。
それでも女神からの力を持たずに戦い続けて最下層のボスも倒した。
強くなるための努力をし続けている結果だ。
さてここからが問題でこちらの質問に答えてくれるかどうかだ。
「女神様に会ったんだね。それでどんな力を貰ったのか聞いていいだろうか」
後でアイメルに聞けば大体分かるが聞いておこう。
大体と言うのは本人が言わない限り外から見て多分でしかないからだ。
「俺は相手の能力をコピー出来るんだ」
「私はすっごい魔法の才能だよ」
出た。
コピー能力。
異世界の手引き曰く。
とあるゲームが流行って以来何かをコピーすると言う物が増えて行った。
武器に始まり相手が頑張って身に着けた技、果ては特殊な魔法やスキル等々。
それが制限なしなら無敵だ。
昔はそんなバカみたいな事もあったらしいがそんな能力を持った者はいつの間にかどこかに消えていったらしい。
だからこそ今はその能力には制限があるはずとの事。
ケン2の小説で『お前の力は俺の物!あらゆる力をコピーして最強の俺』で主人公がコピー能力を持っていたがとにかく出会う人から片っ端からコピーして収拾がつかなくなったらしく更新が止まった。
もちろん鑑定の力も持っていて登場するキャラ全てのステータスをズラズラと書いていてそれを飛ばすと一話の本編が四分の一程しかなかった。
お前はキャラのステータスを書きたいのかと思ったが毎日更新と書かれていたので行稼ぎだったと思わる。
「それはアレだろ。コピー出来る数に制限があるんだろ」
だからゴウの能力も制限が必ずあるはずだ。
もちろん正直に答えてくれるとは思ってはいない。
「良く分かったな。一つだけだ」
ゴウは軽く答えた。
チラリとアイメルの方を見ると何ですかと小首をかしげられた。
ゴウの言っている事が本当か知りたかったんだ。
どうしたものかと考えていると瑠香が俺の足を軽く一回指で叩いた。
それはリッシュと決めていた相手が嘘を言っていない時の合図だった。
それには触れずにショーコの方を見ると嬉しそうに口を開いた。
「私は魔法の加護を貰ったんだ。それと三レベルまでの魔法なら呪文いらないって力も」
レベル。
魔法にレベルだと。
「三れべると言うと中級魔法ですね。雷撃や火球などがそれにあたりますが詠唱が不要とは」
瑠香が俺に分かるように自然に答えてくれた。
そうか魔法にもレベルがあったな海外のTRPGに。
それで言うなら範囲魔法はレベル四以上だが一人で迷宮に行かないのなら必要ないか。
「そうだよ。それ以上は呪文は必要になるんだ。一応憶えたから使えるけどレベル高い呪文唱えてるくらいなら低レベルの魔法連打した方が効率良いしね」
「そりゃそうだ」
「で、俺はそれをコピーしてるってわけ。で、アンタは」
瑠香はまたトンと一回叩いた。
これも嘘ではないらしい。
「俺は耐性だな。あらゆる毒や病気、呪いの類を受け付けない」
嘘ではない。
それを聞いた二人は微妙な顔をした、
どうやらこれがどれほどか分からないらしい。
「この世界には特有の病気や呪い毒の類がある。その手の治療薬は恐ろしく高いし、そもそも治せない物もある。探索者が引退する理由の一つだ」
「えっ、毒とか呪いとかって教会で治してもらえないの。ほらゲームじゃよくあるじゃん」
ショーコの目がアイメルに向いている。
まあ普通そう思うよな。
「残念ながら癒せない物もあります」
「マジで」
「まじです」




