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聖女候補とは



朝目を覚まして支度を整えて瑠香と一階の食堂に降りるといつも座っている場所にアイメルがいた。

いつものシスター服ではなく動きやすそうな服に急所を守るプロテクターを着けていて靴も金属製だ。

おはようございますと元気よく挨拶して俺達が朝食を終えるのを黙って待っていた。

そして俺達はゆっくり朝食を終えて迷宮へ向かいいざ四十一階層へ足を運んだ。


「まずは私にお任せください」


アイメルが自信ありげに言ったので最初を任せることになった。

以前戦えると言っていたのだがどう戦うのかは実際に見て欲しいと言っていたので聞いていない。

アイメルは杖は持っておらず両手に盾のような物を持っている。

盾と呼んでいいのだろうかそれは盾の部分は丸みを帯びており細長く先は尖っていてトンファーを思わせるようにクルクルと回して見せた。

盾のような先の尖ったトンファーとしか言いようがない。

しばらく歩いていると少し先にホワイトファングが二匹見えた。

向こうもこちらに気付いて走って来た。


「力の恵みをここに。怪力マイト。行きます!」


フッと小さく息を吐いたアイメルが右足を一歩引くとそこに飛び掛かったホワイトファングにタイミングを合わせた回し蹴りが突き刺さり真横に吹き飛ばした。

続けて来たホワイトファングを一匹目を蹴った勢いのままクルリと回転して盾のような物で頭を横からぶん殴って同じように吹き飛ばした。

そしてすぐさま吹き飛ばしたホワイトファングに向かって走りながら軽く跳んで盾のような物をクルリと回して先端の尖った部分で起き上がろうとしている所に上から首を突き刺し、もう一匹の頭を踵で床に叩きつけて踏みつぶした。

後には結晶が二つ。

この間わずか数秒である。


「いかがですか。足手まといにはならないと自負しております」


自慢げに胸をはるその姿はリッシュを思わせ疲れている様子もない。

何だこれ。

武闘家か何かかな。

達也君のパーティーではリッシュと同じ服を着て杖を持って一番後ろにいたはずだ。

杖は基本魔法の威力を上げたり魔力の消費を抑えたり出来るから魔法使いは持っているが今のアイメルは持っていない。

戦えると言っていたから持っているので何かするんだろうと思っていたんだが蹴りは考えていなかった。

マリンは殴っていけど蹴りは無かったし。

アイメルは俺の言う事が意外だったのかアレっと不思議そうな顔をした。


「以前言いましたように私はベール様とライラ様に助けて頂きました。ですから聖火隊になりたいと願いましたが反対されまして」

「まあ反対するだろうね」


あの人達が幼い子供が自分達のようになるのを良しとするとは思えない。

だがアイメルも簡単に諦めるとは思えない。

だから最初は聖火隊ではないにしろリッシュと同じように天秤の針で戦うと勝手に思っていた。

それがこれだ。


「ならばせめて戦う術を学びたいとお願いしましたところ守護者の方に手解きを受ける事になりました」


なら普通は剣か槍を教えると思うんだ。

アイメルが軽く回して見せる両手の武器はどう考えても一般的な物ではない。

大きさは俺の持っている盾より全体を見れば少し小さいが厚みがあり結構重そうだ。


「ですが生憎と剣や槍などの扱いがどうもうまく行かずこのシールドバトンを勧められて扱ってみた所、才能があったようです。これは盾であり武器でもあります」


慣れた様子で振り回す様子から高い練度がうかがえる。

盾として受けられてぶん殴れて刺す事も出来ると。

はじめて見たぞそんな武器。

それに靴になにか魔力を感じる。


「その靴は魔道具なのか」

「そうです。これは魔力で重さが変わります。あと私は蹴打術を修めておりますので接近戦はお任せください」


つま打撃と蹴り技か。


「リッシュもそうだったけど俺の知っている聖女と違うんだが」


聖女は物理攻撃なんかしないと思っていたけどリッシュは天秤の針でぶん殴っていたしカルラは剣士だった。

聖女候補の序列のつけ方を聞くまではアイメルは違うと思っていたが結局これだ。

結局三人とも近づいて殴る蹴る斬るである。

アイメルは接近戦に関して間違いなくリッシュより強い。

そしてカルラはもっと強かったと。

聖女候補が目指すのは聖女なんだよな。

聖女ってそんなんじゃないよな。


「タツヤ様と共にある時は私が戦う必要はありませんでした」


カルラが言っていたアイメルとリッシュは勇者に合わせるとはこの事か。


「神聖魔法ではリッシュに及びませんが戦いならばお任せください」

「そっかうん。よろしく頼むよ」


こうしてアイメルが正式に仲間になった。

早速三人で四十一階層をしばらく進むと瑠香が足を止めた。


「来ます。この先動く鎧右から三。左から一」


片目を閉じた瑠香が告げるとアイメルは構えながら不思議そうな顔をした。

まだ音が聞こえないからな。

俺も最初は驚いた。


「私は右目を捧げました。しかし式を使い補っております」


しばらく待つと瑠香の言葉通り少し先の十字路の右からリビングアーマーが三体現れ少し遅れて左から一体。

その上には一羽の白い鳥が飛んでいる。

瑠香の使い魔だ。


祝福ブレス。行きます!」

「錆よ」


アイメルが駆け出すと同時に瑠香が魔法を放った。

すると見て分かる程にリビングアーマーの動きが遅くなる。

金属を錆びつかせる魔法である。

リビングアーマーは百キロを超える金属の鎧。

アイメルが地を蹴って体を二回捻って頭を勢いよく蹴ると鈍い音と共にリビングアーマーの頭がひしゃげそのまま倒れた。

そこに大きく跳んで宙返りし両足で首の辺りを勢いよく踏みつけるとドンっと鈍い音と共にリビングアーマーは結晶に変わった。

リビングアーマーを倒すには一定のダメージを与える必要がある、

一応頭が弱点なのだがそれでもそんなに簡単に倒せるような物ではない。

リッシュは魔法と篭手で強化して天秤の針でぶん殴ってたのに比べてアイメルは明らかに戦いに慣れている。


「影よ」


瑠香が次の魔法を放つとリビングアーマーの足元から影が巻き付きその場で動きが止まった。

そこに走り寄ったアイメルは軽く跳んで空中で体をひねって回転しリビングアーマーの頭に踵を落とすと鈍い音と共に頭がひしゃげて胴体にめり込んで結晶になった。

最後のリビングアーマーにアイメルが駆けよると剣が振り下ろされるがシールドバトンで受け流して上段回し蹴りを放つとつま先が頭に突き刺ささってリビングアーマーが倒れた。

そこに片足を大きく上げてから勢いよく踵落としが決まり結晶が残った。

何故ここまで圧倒出来るのか考えたら気づいた事が一つある。

リビングアーマーは盾を持っているがアイメルがフェイントを混ぜているせいか見てから蹴っているのか分からないが盾を一度も蹴っていないし頭を確実に潰している。

つまり単純に戦闘技術が高いんだ。


「最後は俺がやる」


最後に左から来た一体は俺が魔法で片付けて終了である。

瑠香の使う魔法は攻撃系統が少なく相手に不利な状態異常を与える物が多い。

瑠香と二人でやっていた時よりもずっとやりやすいというより俺が必要ないくらいだ。

今後は戦いが楽になるが瑠香は近いうちに必ずいなくなる。

それがどうしても頭から離れない。



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