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お約束の国


さて改めて考えてみると俺が断る事も分かっていたはずだ。

何せそれを受ける理由が俺には無いんだから。

いやちょっと待てそれが分かってるならこれはどうなんだ。

それとも俺に言う事に意味があるのか。


「おっしゃりたい事は分かりますがこのままでは英雄様は」


瑠香はここで止めた。

滅茶苦茶気になる。

瑠香がじっと俺を見ている。

色を失った片方の瞳を見ていると何故かすごく不安になる。


「ちょっと待ってくれ。俺はどうなるって」

「英雄様は二度の不幸に見舞われ命を落とされます」


瑠香がとんでもない事を言ったがシスターは青く光った。

ちょっと待ってくれ。

俺死ぬの。

リッシュがいなくなったのが俺の想像以上に大きいのか。

思えばリッシュに頼ってばかりだったし。


「お待ちください!」


瑠香の手を握っていたシスターが立ち上がって顔の布をつかんで投げ捨てた。

ああなるほど。

なんか聞いた声だと思ったんだ。


「リッシュがいないのなら私がお供いたします。カイ様に降りかかる不幸など私が」

「詳しく申しますと、あいめる様は英雄様を庇い命を落とし、後に英雄様も命を落とされます」


シスターはアイメルだった。

勢いよく声を上げたアイメルが青く光って固まった。

瑠香はアイメルが加わるその未来さえ見て俺が死ぬと言ったのか。

それで二度の不幸か。


「ですが私が英雄様のお側にいれば不幸を退ける事が出来ます」


そう言うと瑠香はもう一度三つ指ついて頭を下げた。

名前と言いこの土下座姿勢といいやはりあるのか日本とよく似た国。

異世界の手引き曰く。

中世ヨーロッパをベースにした異世界では結構な確率で日本に似た国が出て来る。

もちろんキャラは侍。

主人公が男ならポニテ美少女侍が出て来る。

当然武器は日本刀。

本来西洋剣に比べて耐久性が圧倒的に劣るはずが、曲がる刃こぼれ折れる等が一切ない。

そして当然強い。

たまに主人公が武器屋で日本刀を手に入れて使うパターンがある。

主人公が刀を使うなら当然強くて必殺技は居合抜きだ。


『術が使えないと故郷を追い出されたけど俺の刀で斬れない物は無い。全部斬ってしまう最強の剣士」

作者ケン2


「なんだそんな細い剣で俺と戦おうってのか?」

「そうだ。お前こそやめておいた方が良いぞ」

「うるせえ!ぶっ殺してやる!」

キンキンキン!キンキンキン!

「馬鹿な!俺は大剣使いカマセ!ランクBだぞ!」

「ならランクBっての大した事ないんだな。今度はこっちから行くぞ!」

ヒュン!キン!カランカラン・・・。

「お、俺の剣が!」

「お前達は剣の重さと力で叩きつけて斬るが本当の剣は速さと技で斬るんだ」



ひどいな。

本当にひどい。


「どうか私をお側に。英雄様」


これは断れない。

断ったら死ぬとかひどい話だ。


「分かったよ。だが君は勇者と一緒に戦って来たんだろ。別れていいのか」

「構いません。元よりその約束です」


一体瑠香は何処から何処まで見たんだ。

いや全部か。


「それでどうやって俺の未来を見たんだ」

「いえ、英雄様を見たわけではありません。英雄様の周りを見たのです」

「俺の周り」

「英雄様の住まわれる街、りっしゅ様、街道、この街、あいめる様などあらゆるものをです」


つまり七魔人との戦いから逆算していったのか。

途方もない作業だったんじゃないか。

それで片方の目と耳を捧げたのか。

いやそれでは少ない気がするしもう一つ問題がある。


「うう、ルガァ。お、おら一人じゃ無理だべよぉ」


泣いているクロだ。

出会った時の凛とした態度は何処へやら。

きついなまりが出てる。


「くろ。そういう約束だったでしょう」

「で、でもぉおらキラキラした人と話せねえべよぉ」


キラキラした人ってなんだ。

あれか貴族とか騎士とかか。


「大丈夫よ。はい、これ」


瑠香がゴソゴソとローブの内側から何かを取り出した。

ベルト、いやもっと短い。

魔力を感じるから魔道具だろうが。


「ルカこれ何」

「じっとして」


瑠香はクロに近づくとそれを首にパチッとはめた。

チョーカーか。

クロが口を開いたが何か驚いたような顔をして必死に口をパクパクさせた。

これはもしや、よくある奴隷とかを黙らせる装備か。


「これは沈黙の首輪。着けると話せなくなるの。使うとすれば奴れ、まあ呪いの道具と言われているけど、私が着けないと死んでしまうと言うから着けたと言えば大丈夫。それに改良したから貴女が外したいと思えば外せるわ」


今絶対奴隷って言いそうになったよな。

話せなくなる首輪なんかまっとうな物じゃないから当然か。

当たり前だがクロが慌てて首輪を外した。


「ひどいべ。でも呪いなら簡単に解かれてしまうべよ」

「私がそうしないといけないって言ったから大丈夫よ。それにその時は何も話さなければいいの。話したくても話せないと何かに書きなさい。それは嘘じゃないしね。そうすれば周りは勝手に色々考えてくれるわ」


これはひどい。

だが瑠香が俺について来るのなら頑張ってもらうしかない。

この様を見るにとても不安だが。


「その、そう言う事なら我ら正道教会から事情を理解した者を勇者様のお供として派遣いたしますが」

「ほっ本当べか」

「お任せください。傷の癒しや守りなどを得意とする者を選びましょう」


俺は教会の人がどれくらい戦えるのか知らない。

見た事はないが教会で守護者と呼ばれる人達はかなり強いとリッシュは言っていたしノリンのゴーレムを探索者だけではなく守護者の人も倒したらしいから強いのは間違いない。

けど今回クロのお供は戦いを求めるわけではないなら必要なのはある程度の能力と性格。


「お供の方はななりいさんをお願い致します。他の方では面倒がおきます。特にじゃくりさんは絶対に駄目です」

「む、分かりました。ではそのように手配しましょう」


それさえも見たと言う事か。


「あのカイ様。リッシュは一緒ではないのですか」


アイメルがずっと聞きたかったのだろう事を聞いてきた。

あくまでこちらの用事を優先して聞きたいのを我慢していたようだ。


「知らないのか」

「はい私は何も」


いや別れたのは少しだから当然か。


「リッシュはどうしてもやらなければならない事があると言って少し前に別れたんだ」

「やらねばならない事ですか。しかし自分の都合でカイ様と別れるなどあの子何を。えっまさか」


アイメルがサッと顔を青くして瑠香を見た。

瑠香は黙ってうなずいた。

アイメルには心当たりがあるのか。


「そうです。りっしゅ様の願いは叶いました」

「そんな、なんて事。カイ様失礼します。すぐ、すぐに戻りますのでしばらくお待ちください」


アイメルは慌てて出て行った。

何かは知らないがリッシュの願いは叶ったと。

アイメルの態度が気になるが己をかけて願った事が叶ったならそれでいいと思う。

例えそれがどんな事であったとしても。


「では行きましょうか」

「待たなくていいのか」

「はい。後で戻ってくればよろしいかと。ここで待って一緒に行きますとあいめる様は亡くなります故」

「なら急いで行こうか」


そんなすぐに死ぬか。





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