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次の仕事



今俺はジェットコースターさながらの速さで空を飛んでいた。

飛ぶと言うより滑空している。

何度も言うが俺は乗り物に弱い。

営業で外に出る時の移動はもっぱら電車と歩きで誰かと同行する時は仕方なく酔い止め飲んで車。

バイクは持っていたが乗る機会がなかった。

用事もなくあてもなく走るのが好きだったがあの仕事をしていて何時乗れと言うのか。

この世界の移動は馬車が多いがその酷い揺れに耐えられないので俺は歩きが基本。

何せ予想よりはるかに揺れる。

痛いし狭いしガタガタと揺れて気持ち悪くなる。

そのせいで移動に時間がかかってしまう。

だから自転車を考えた。

魔法とかあるならゴムとかなんとか出来ないかと思ったが何とかならかった。

結局歩きが基本になるし今回もそうなると思っていたが今回本当に時間がないとの事でローさんが用意してくれた移動手段。

それがこの翼の輪という名のアンクレット型の神器。

効果は浮遊魔法レビテーションを魔力消費なしで永続。

これで百メートル程浮いている状態で用意した風魔法突風ガストのスクロールを使うと反動で吹き飛ぶ。

スクロールの魔法が切れたらそのうち空気抵抗でスピードが落ちて止まる。

もし止まりたければ前に向かって風魔法ウインドのスクロールを使えばブレーキをかける事が出来る。

少し練習が必要だったが慣れたらアクションゲームを思わせる変態的移動が可能になった。

魔道具屋で大量のスクロールを買って移動を開始。

今の時期そちらへ風が吹くため歩きなら一ヵ月はかかる距離がわずか六日。

これが向かい風だったらそうはいかなかった。

山を越え初めて国境を越えて隣国サイアンの端の街シーフラに到着。

街に入るために入り口に並ぶと思ったより入る人が少なく、朝に到着したが昼前には入る事が出来た。

街を歩いてみるがセカイエやノリンと街並みは変わらないが北から魔王軍が来ているため物々しい。

肉の串焼きを売っている屋台で一本買って食べてみると王都で食べた物よりも味付けは濃いが固くて値段が高い。

客が俺しかいないから店主に声をかけてみたが大した話は聞けなかった。

ただ一つだけ。

勇者様と予言者様がいるから大丈夫だと。

アレだろうか。

勇者はゲームのように無双するのだろうか。

聖剣の一振りで百の敵千の敵を薙ぎ払うのだろうか。

特殊な聖剣と言っていたが黒騎士と一緒に戦ってかなりの被害が出たが何とかしたと言っていたからビームで薙ぎ払うとかは無いはず。

それに予言者ってなんだ。

ローさんからそんな話は聞いていない。

そんな事を考えながら歩いていると街の東のはずれに目的の屋敷に到着。

高い塀に覆われており正面には年月を感じさせない綺麗な門がある。

そこには入らせないとばかりの薄い青色の魔力の壁。

風上さんの屋敷である。

一人で住んでいたらしいが一人で住むには大きすぎる気がする。

一見すると正面だけだが屋敷全体が強力な結界で包まれており壁を乗り越えての侵入も出来ないようになっている。

入るためには正面から結界を越えなくてはならい。

そして千年誰も屋敷に入った者はいないわけだ。

話は聞いていたが余程誰とも関わりたくなかったのか。

やりすぎな気がするが、もしかしてこっちでも何かあったのだろうか。

屋敷の前には二人の女性がなにやら話をしている。

二人ともおそらく二十才くらいか。

一人はゆったりとした黒いローブと対照的に腰まである白い髪。

手には大きな結晶のついた杖。

魔法使いなのは分かるがローブも杖もかなりの魔力を感じる。

他にも色々な指輪やイヤリング、腕輪やネックレス等身に着けているどれも魔力がこもっている強力な魔道具だろう。

王都の店でも見た事がないレベルだ。

もう一人は赤いマントを羽織りスラリと背が高く、肩の辺りで切りそろえられた赤い髪。

何より腰に差した剣。

あれは聖剣だ。

なら勇者か。

ここで会うのは想定外だが仕方ない。

とにかく問題を片付けるとしようか。

近づく俺に気づいたのかに二人が俺に目を向けた。

そして何か言われる前に俺から話しかけた。


「そこを通してもらいたい」


用があるのは屋敷の中なのだ。

それに勇者の方が少しおどろいたような顔をした。


「貴方はここがどこだか知って言っているのか」

「知ってるよ」

「ならここには入れない事も」

「知ってるよ」

「なるほど。どうするのルカ。アナタがずっと言っていたのはこの人なのでしょう」


勇者がそう言うとルカと呼ばれた黒くて白い女性は俺をじっと見ていた。

よく見ると右の目は光を失っている。


「ずっとこの日を待っておりました」


俺がここに来る事は誰にも言っていない。

ローさんが誰かに言うわけもない。

ならどういう事だ。


「初めまして英雄様。私は瑠香。星乃宮瑠香と申します。東方のなもなき国よりここに参りました。どうかこの身が貴方様のおそばにいる事をお許しください。炊事洗濯夜伽まで何でもいたします」


そう言うと彼女は三つ指ついて深く頭を下げた。

どういう事だこれ。

教会の対応とは違うがむしろこっちの方が目立つ。

教会よりもさらに扱いがアレだ。

幸いにもこの辺りは普段から人がいないのか見ている人はいなかったが。


「とにかく立って」

「賜りました」


俺の言葉に星乃宮さんはスッと立ち上がった。

これはまずいかもしれない。

営業をやったから分かるがこちらに落ち度があって頭を下げたら頭を上げろと言われても簡単には上げない。

だが彼女は俺を英雄と呼んでおきながら俺の言葉に迷う事なく立ち上がった。

つまりそういうふりをしていたのでなければ俺の言う事には絶対従うと言っている事になる。

大体待ってたとか英雄様とか言ったし厄介事の予感がする。

それを見ていた勇者はフムと頷いて口を開いた。


「ここではなんだ。教会に行かないか。ルカは嘘を言わないが信じてもらうにはその方がいいだろ。申し遅れた。私はクローシェ。クロと呼んでくれルカの英雄殿」


いきなり出鼻をくじかれた。

だがこれは話を聞くしかない。

こんな事ローさんは何も言ってなかったんだが。

相手はこの国が認めた勇者だ。

仕方ない付き合おう。




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