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レベル上げ



今日も朝起きて当たり前になって来た朝食を取る。

時間を気にせずに食事を取るなんて何と贅沢な事か。

そんな幸せを噛み締めている俺と向かい合う形で眠そうにパンをモソモソ食べていたリッシュだったが、ローさんの話をするとカッと目を開いて冷たい水をカブ飲みした。

強引に目を覚ましたらしい。

そしてまた水をコップに注ごうとしてだばだばとこぼした。


「その、41階層に行くのが手っ取り早いかと」


何やら言いにくそうに言っているのが気になる。


「俺もそれは考えた。けど危険すぎるんだ」


装備を少し上の物を買ったし、飛ばされた時よりもレベルも上がっているだろう。

だがそれでも厳しいと言わざるをえない。

 

「階段を拠点とし、魔物を倒してすぐに引き上げるを繰り返せば短時間で強くなれるかと」


それは俺もゲームでやった事がある方法だ。

アイテムなどで勝てる方法を確立してから1戦か2戦だけ全力で戦って、回復に戻ってまた戦う。

非常に効率がいいのだがたまに事故が発生して全滅する危険がある。

 

「私も全力で戦えばリビングアーマー1体くらいなら何とか出来ます。連戦となれば2、3戦が限度ですけど」


それでも十分凄いと思う。

俺では理力エーテル魔法を使わないと歯が立たない。


「ホワイトファングは」

「あの動きには追いつけませんね」


アレは目で追うことさえ難しい。 

とにかく素早くて見つかったと思ったら目の前にいた。

アレに攻撃を合わせるなんて想像出来ないが、それが出来なくてはあの階層では戦えないだろう。


「焦ったら駄目だ」

「それは分かります。分かりますがここは少し無理をしてでもやるべきでは」


リッシュの言う事も分かる。

1戦して得られる結晶1つで2万カナくらいはする。

しかも経験値も多いと思う。

だが危険も多い。

魔物は階段に踏み込めないからそこから魔法を撃てば良いかといえばそうでもない。

見えない触れない壁のような物があって双方の攻撃が通らないのだ。

いや、俺の魔法ならそれも無視出来る気がするが、そもそも魔物は基本的に何故か階段のそばに近づかない。

なら直接41階層で戦わないといけないが、そうなるとホワイトファングは見た瞬間に魔力エーテル魔法を撃つしかない。

それはどうなんだ。 


「カイさんの懸念も分かります。加護に頼っていてはいけないと思っている事も」


その通り。

防御不可の散弾をぶち込まれたらどんな相手も死ぬしかない。

だからそれに頼っていたらレベルは上がっても俺自身の成長が無い。

つまり戦いがうまくならない。

無いとは思うが理力エーテル魔法が通用しない敵に遭遇した時、何も出来ずに死ぬ事になる。 

ゲームによってはレベルを上げて物理で殴ればいい物もあるが。この世界ではそうに行かないらしいし。

どんな攻撃でも当たらなければ意味がない。


「私もそれは同じですが、こんな機会はおそらくもうありません。ですからここはそれを飲み込んででもロー様のおっしゃった、そのレベル上げと言うのをするべきです」

「そうか、そうだな」

「そうです。いきなり41階層なんて行けば普通は死にます。例えそこで戦う強さがあっても地道に攻略していかなくてはなりません。あの性病のに感謝する気はありませんが使えるものは使いましょう」

「それで思い出した。アイツはどうしてあんな場所にいたんだ」


ドラゴンが迷宮に用事なんて無いだろう


「どうせくだらない理由ですよ。聖女様がらみですよ間違いなく。そう思って知り合いに聞いたらやっぱりそうでした」


リッシュは深いため息をついた。


「リビングアーマーの中には稀に強い固体が現れます、そいつを倒すと特別な盾を落とします。それを性女様に見せたかったとか」

「何だそれは」


好きな女に良い恰好したかっただけ。

そんな理由で巻き込まれて死にかけたのか。

ジンが色ボケトカゲと言っていたがなるほど。


「俺はあいつに顔見られてるんだけど特に反応なかった。一瞬だから気づかなかったのかな」


ローさんの使徒と名乗ったらいきなり殺しに来たから、インパクトはあったと思うけど。


「おや、あの方をご存じですか」

「以前1度会ったことがあってね。ローさんの使徒と聞いたら殺しに来た」


ブレスが来た時には死んだと思った。


「よくご無事で」

「全くだよ」


朝そんな話をして俺達は41階層でレベル上げを始めた。

実際の所、俺はリッシュを少し侮っていた。

接近戦が出来るのは知っていたが、聖女候補だったから本職は回復魔法なんだと。


「貴女の恵みをここに。祝福ブレス


リッシュの体がうっすらと光に包まれた。

以前も使っていた、おそらく能力を向上させる魔法。

 

「行きます!」


そしていつもの掛け声と共にこちらに向かって来るリビングアーマーに突撃。

ひねりも無く真っ直ぐであるが速い。

リビンアーマーが盾を構えた。

リッシュはその横を走り抜けるように盾を正面から殴りつけた。

その瞬間、両腕のガントレットにはまっている綺麗な玉が眩しい位の光を放った。

リビングアーマーは基本盾で受けながら反撃が基本。

その体が轟音と共に吹き飛ばされた。

リビングアーマーは中身は詰まっていないらしいが重装備で、聞いた話では100キロ以上はあるはずだ。

リッシュはそのまま吹き飛ばされて転がる所に走りよりゴルフのようにフルスイング。

今度は壁まで5メートルは吹き飛ばされて叩き付けられた。

盾は殴られた所が完全に陥没し、それを持っていた腕が変な方向に曲がっている。

リッシュはそのまま走りより、ヨロヨロと起き上がろうとしているリビングアーマーの頭目掛け天秤の針を振り下ろした。

耐久が尽きたのかリビングアーマーは砂のようにサラサラと崩れて消え、後には結晶が残った。 

あれ1つで2万カナはする。

リッシュはそれを拾って戻ってくると大きく息を吐いた。

ガントレットの光は消えていた。

 

「なんとか、なりますね」


たった1戦だがかなり疲れているようだ。


「いや、凄いな」


とんでもない攻撃力。

それに曲がりもしない天秤の針と魔法のガントレットか。 

俺の視線を感じたのか無意識なのか、ガントレットを触って感触を確かめていた。


「これは竜爪ドラゴンクロー。竜の篭手とも呼ばれる魔道具があればこそです。祝福ブレスだけではとても」

「それはまた凄そうな道具だけど」


ゲームとかなら終盤に出てきそうな装備品だ。


「魔力と引き換えに力を与えてくれる最高ランクの魔道具です。リビングアーマーは任せてください」

「結構つらそうだけど」


1戦だったが、かなり魔力を使ったらしい。 

 

「少し休めば大丈夫です!」


事前に言っていた通り、連戦なら2、3戦が限界なんだろう。

なら主力は俺で、リッシュは出来る限りやるで行くか。

レベルが上がればそれだけ楽になって行くからつらいのは最初だけのはず。

 

「だからどうか私を連れてください。お願いします」

 

ギュッと手を組んで俺に訴えてきた。

ああなるほど。

俺達は一緒に1階層ずつ攻略して強くなっていくのがベストだ。

パーティーを組んでいる仲間だから。

しかしリッシュは女神からの依頼を考えて俺が強くなるためにこの階層での戦いを薦めた。

俺が強くなるには単独で魔法を撃ちまくるのが効率的だから。

だがそうすれば俺だけが圧倒的に強くなってリッシュを置いていく事になる。

片方だけが強いとなるとパーティーとして力を発揮出来ない。

だから何としても俺に着いて行かなければならない。

リッシュはそんな覚悟で俺に薦めたんだ。

 

「大丈夫だ。女神様も慌てなくて良いって言ってから少し戦って休んでを繰り返そう。ここでならそれで十分だ」

「ありがとうございます」


リッシュが深く頭を下げた。

ある程度の無理はするが安全に行こう。

だがそれよりも気になる事がある。


「前に来た時はここに壁がなかった気がするんだが」


確かになかった。

逆に壁のあったところに壁がない。

これには自信がある。


「30から40階層は大体半年毎に地形が変わるそうですよ」

「ああ、そんな話が合ったな」


迷宮の地形が変わる。

ゲームではたまにある。

入るたびに地形の変わる迷宮だが現実になると面倒だ。

いや迷っている最中にならなくて良かったというべきか。

結果を言うと少しひやりとする場面もあったが安定して戦えるようになりしばらくした頃、ローさんから仕事が入った

これがまたなんとも言えない内容で準備に五日かかった。


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