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フィーネシア

 以下は伝説。


 セオドロプ・ギドローザには魔王エルン・シンベイが占拠していた。その地の周辺にはエクサオン王国があった。王国の王家は古三十朝に幾らか連なるとされるマグダミン家であって、大臣に国家運営を任せていた。エルン・シンベイは竜化し、人の命を求めてエクサオン王国の街や集落を襲撃するということがあった。彼の拠点はイドネアーザの森にあった塔であり、そこを幾つかの竜と共に治めていた。それを倒したのが勇者エギンバルドであり、かつての勇者の子孫でありながら貧しい暮らしをしている者だった。彼はデンバクドゥルが作った聖剣を操り、エルン・シンベイの首を切り落とした。その血が溢れ出して、森は死んだが、今では蘇っている。人々はエギンバルドを称賛し、彼は王女と結婚して、貴族の地位を得て、エギング領を治めるようになった。彼の子孫が代々その地位にありながら、時の王たちに仕えて、現代に至る。


 ナマネクタデウムを支配していた魔王はエンヤーガキナーヤである。その周辺にはダーべレンス諸侯領があり、ナザグゼッペン帝国が影響力を及ぼしていた。エンヤーガキナーヤは七頭の竜を引き連れて、ダーベレンス諸侯領の領地にある集落を襲撃した。彼は金銀財宝を集めて、それを洞窟に秘蔵していた。その頃冒険者として全世界を旅していたエルン・サガがナザグゼッペン帝国の王位にあったオーカンドーデンの協力を取り付けて、ダーベレンス諸侯領に領地と城を受け取る約束を得た上で、帝国の軍勢と共にナマネタクデウム攻略に乗り出すことにした。エンヤーガキナーヤは魔物によって居城を守っていたが、軍勢はこれらを突破。魔王に接近する。エルン・サガは勝利目前のところで魔王の配下に殺された。エルン・サガに従っていたアクスは魔王との一騎打ちに持ち込み、遂には勝利を収めた。軍勢は勇者の死を悼んだが、同時に魔王を打ち破ったことで高揚していた。彼らはアクスを殺し、誰が魔王の首を持ち帰るかで闘争があった。しかし全ては有耶無耶のままで、約束されていた領地も城も計画は宙に浮いたままとなり、エルン・サガ・アクスという名前のついた道が整備され、その先にあるナマネタクデウムは四人が争って覇権を握ろうとした。オーカンドーデンはエンヤーガキナーヤのメノウを宝物庫に収めた上で、今後このような混乱が生じた場合には反乱軍と見做して鎮圧すると宣言した。しかしナマネタクデウムの元魔王領は戦争の絶えない地域となって、そこを統一的に支配する者が現れないまま月魔世を迎えた。


 アバキエスという魔王はカンマンドーゼスの釜という地域を支配していた。そこはかつてフェオルデュレ王国の領土であったのだが、アバキエスが結界を張って以降は人が住めない地域となっていた。魔王は軍勢を作り出し人々を襲い、自らの命を長らえさせようと努力していた。そんな中でフェオルデュレ王国の同盟国であったナガスメニア王国の騎士団の騎士であるレイキセルが立ち上がり、魔王討伐に乗り出した。彼らは結界魔法を破壊すべく、魔法使いを送り込んだのだが、レイキセルも中心的な役割を果たした。逆に魔王の領域内に巨大な結界で包み込んだことによって、魔王は急激に老化し、死に至ったと考えられている。魔王軍の残党が禍根を残す結果とならないように絶滅を目指したのであったが、最終的に月魔世にその影響が魔王たちに利用されるほど解決しなかったと言っても良い。アバキエスは消えたが、アバキエスの釜という名でその地域は呼ばれるようになり、レイキセルはそこをナガスメニア王国の管轄にして、フェオルデュレイ王国の騎士団と共にその地域の魔物の暴走を防いだ。多くの冒険者が送り込まれたのだったが、犠牲となった者も少なくなかった。


 エーデルマンには魔王ビグゼラントがいた。その周辺にはシカズカスカ王国があり、エンコーディライト朝の王エンゲルは冒険者ギルドを通して魔王の討伐を呼びかけた。ウェシュトゥミスという集団はシーバケナイが率いていたのだが、彼は集団の中から四人を選りすぐって魔王の支配するエーデルマンに乗り出した。結界魔法によって封じられていた地域を突破し、竜によって守られていた塔を占拠した上で魔王軍が攻めかかってきたのだが、ウェシュトゥミスの輝きと呼ばれるような光の魔法によって応答し一騎当千の勢いだった。最終的に魔王と対話するに至り、魔王はその座を降りることを選んだ。ビグゼラントはエグロー・マズローの監獄に収監され、月魔世までは完全に閉ざされていたのだが、その時代が訪れた時にダイマゴンテイロクに解放されて、再びエーデルマンを治めるようになった。しかし善き魔術師によって世界の隙間に追放されてからは永遠の苦しみの中で呻いているとされる。ビグゼラントの声がエーデルマンには今でも時々聞こえると言われる。


 ドレイスの東に位置した森にイッサという名で知られる妖魔が根城として生息していた。白い背広姿で、踊り、迷い込んだ人々を呪いにかけて消失させた。最終的に森ごと攻撃し灰燼に帰すという方法で一応の解決は見たものの、その影響を受け継ぐ妖魔の誕生は完全に防ぎきれたとは言えない。


 132年冒険者ギルド「微笑みの影」が設立された。155年冒険者ギルド「華の団」が設立され、優秀冒険者を多数輩出した。227年冒険者ギルド「嘆きの大壁」が設立された。229年「空飛ぶ星の欠片」234年「蛙の子」235年「声の両主」238年「妖精求むる時」249年「髑髏騎団」


 池田誠一はフォルミナ大森林から出て二つに分かれて海に注ぐ川の名をジェイムス川、ジェイソンボールド川と名付けた。また彼は、濃い血同盟、或いは良い血同盟を各地の国と結んだ。彼が設立した凪の森病院はよく知られている。また魔法都市シサイアノイア、ハテノウォーノード、カヘランジェネシスを建設した。彼は16人の正妻を持っていた。りら、咲希(さき)、焔楽(ほむら)、雪乃(ゆきの)、エライア、イドレア、ヘスケミ、イアム、カーシャ、シッパ、ゴーメ、ウェンズディ、リフィア、タクティス、ルーシィ、恵美子(えみこ)。誠一の息子に池田蛍、娘に池田奏がいて、前者は仏教的な土壌を受け継ぎ、後者はキリスト教的な土壌を受け継いだ。彼は半ば冷笑的に空帝を暴食のサブワウゴ、怠惰のベラルディ、嫉妬のヴェラドー、傲慢のクレイル、強欲のカベス、色欲のゼカード、憤怒のラティレーと呼んだ。

 レーヴィア帝国の対魔王軍第三魔法大隊との戦いでフォルミナ森林を通る回復魔法攻撃とレニオン将軍による爆撃でイケダ王国は壊滅した。


 フィーネシア王国での最優秀冒険者魔法使い、彼らは映像記録や結界再現で有名である。203年205年異界の虹銀カズキ・ヒロサキ(弘前一期)、、227年230年231年スィン・ジェケイ、228年232年グナッキー・サタムス、229年フォルト・ダ・キリ、270年イーゼンサルト、272年ディーター・リーパー、292年へマン・アレクサンダー、300年大牙のアギト、311年アシュタリゼド、313年ダンケス、330年魔法剣士ギメル、354年マグド・ゼネバ、363年獣面エゾホ・マン・キース、413年異界のジェイコブ・エドワーズ、450年451年ハンステュルス・ハンステュルス、452年ダークルフ・ミゼン・バールド、456年457年459年ディゼン・ゼウノレール・ダウール、433年パスワ・グデイシェンド、521年ガウス・オゴセディア、545年髑髏騎団よりイ=マジンド・オウン、556年ゴイムズ・ビアーダ・ウィルベンス、613年ガルサワフ、618年華の団よりエクブ・サ・ギヒト、619年華の団よりミカテナア、624年微笑みの影よりエイコ・ミィ・ダン・ハーレ、630年華の団よりエディナ・スキーンス、641年華の団よりアプライド・エンフォーシス、703年ゲルノット・スティンザー、745年サグ・ナディア・ハー、793年静海の魔女エステル・ハーティア、827年アクア・サス、936年ア=カレディア・ハデス


 204年、弘前一期は一之瀬愛花と結婚した。その年、息子の英悟がフィーネシア王国ダークロード領に生まれる。彼は魔法使いとなった。弘前一期はダークロード領に伯爵として領地を持った。


 300年代、地球世界から来た吉野晴臣が料理人として世界的に有名になる。


 ダンケスとギメルは師弟関係にあった。ギメルはダンケスが果たせなかった竜王祭優勝を勝ち取った。ギメルにはガメルという兄がいた。


 600年代、華の団などのギルドが優秀冒険者を多数輩出した。


 152年、ジンユエン・リン(林静遠)が冒険者階梯で7位になる。455年、サイリサ・メローヒ・ルフォリシスが階梯で4位、ネディク・スホル(本名シヤウルン・エ・ディーフー)が7位、同一魔術学校卒業の男女が饗宴に名を連ねるのは初めてだった。


 甲魔暦1200年頃の時点で大地の中央部を支配しているのはフィーネシア王国、セムル王国、ドーブニウ王国、フェンフレイユー王国、フォーンフェヴォー王国、イクツドゥーク王国、アーゲスティア王国、デレクタード王国である。これら八ヶ国を主とし、中央八主国(ちゅうおうはっしゅこく)と、その属国などを含め中央諸国と呼ばれる。カンから無尽森林を含む北東域を支配する魔法大国ヤアマがある。その国で一度魔導列車が実現したが、撤廃された。エンスの北西にはクドゥルの都市国家連合が、東側にはリギュル王国が位置した。北原平原にはミュオガ、ヤパン、ソルキアは健在。ドーブニウ山脈の西の海に面した地には聖王国が位置する。この頃までにこれらの国家を含む大陸がソルカティヤ、或いはゼオンカディヤ(ゼオンハディヤ)と呼ばれるようになった。ただし特にレイスではエルン・フィーンと呼ぶ。

 中央諸国では乗竜術は禁じられた。

 旧ドレイスの人口3000万人、旧ルガムの人口600万人、旧カンの人口800万人、旧エンスの人口1000万人。

 フィーネシア王国は甲魔歴25年成立。教会と冒険者ギルドが一体、更に魔術ギルドが一体となった組織が支配的だった。王は既におらず、首都とされるのはフィーンで内域を含んでいた。ドレイスからレイスに跨る。評議会に主権が移るまで十人の王が支配した。レグナード一世、セルフィア女王、オルドヴァン一世、フィアネ二世、アデリア(アデルマ)女王、ザムトール一世、エルセイン(エンセヴァン)一世、ミラディア(ミディアム)女王、レグナード二世、セルディオン三世。

 ダークロード領、タンジェント領、エーリア属州(大エーリア)、ゲルルム自治区、ヘルヌン自治区、シルムウ自治区など。西部には星穀峡谷があった。セムル王国とはアラルガル平原によって隔てられていた。その平原にはドブリアン・ロミニと呼ばれる悪魔とその眷属が潜んでいた。


 その国は魔術師連盟とも協力的な関係にあった。その国では冒険者と魔術師となることが人々の幼い頃の憧れのようであった。冒険者・魔法使いは毎年、「階梯」として序列化され、上位七名は王国主催の饗宴に招かれた。魔術を扱う者は魔術師やトークレムではなく魔法使いなどと呼ばれ、サンフィネス神殿とその下部組織の神殿でその人の使用可能な魔法が制約の上で決定された。

 数十年の周期で、竜王祭、魔狼祭、大猪祭、月熊祭、猿鬼祭が繰り返された。期間中それらの魔物を討伐すると、記録として残され、報酬をより多く受け取れた。


 フィーネシア王国は半軍事、半魔術、半開拓国家である。総人口2500万人。寄留者700万人。そのうち1000万人が何らかの冒険者・魔法使い登録を持つ。しかし、実際に専業として生きる者は10万人にすぎない。王国は魔法使いを大量育成した。そのおかげで国は繁栄した。しかし、魔法が社会の隅々まで浸透した結果、王国は魔法なしでは維持できなくなった。魔法使いを抑えれば国が弱る。魔法使いを自由にすれば国が割れる。冒険者を厚遇すれば農民が不満を持つ。農民を守れば冒険者が搾取される。魔物を狩れば資源が増える。しかし魔物が減ると冒険者の仕事がなくなる。

 大多数は農民、職人、兵士、学生、商人、神官、地方役人などであり、必要に応じて魔法的・軍事的任務に動員される。この制度によって王国は魔物、遺跡、魔石資源、辺境開拓を管理しているが、同時に巨大な魔法官僚制と冒険者階級を生み、王権との緊張を抱えている。記録者、再現師などがいた。記録された映像は公開された。また情報を元に結界の中に冒険記録を再現する文化があった。

 魔法・戦闘・探索・護衛・採集などに関わる登録人口。専業10万人。それだけで生活する上位・中核層。兼業990万人。農民、職人、兵士、学生、商人などが副業・徴用・訓練として参加。戸籍・徴兵・資格・ギルド・魔法教育が結びついた身分/資格制度に近い。

 産業としてあるのは魔石採掘(魔法都市・結界・武器・医療に必要)、魔物素材(皮、骨、角、血、臓器、魔核)、護衛業(商隊、巡礼、貴族、学者、採掘隊)、遺跡探索(古代魔法、失われた道具、禁書)、結界維持(都市・農地・街道の安全確保)、魔法教育(初級登録者を大量育成)、治癒・薬草採取(医療と宗教の中間領域)、軍事請負(王国軍を補助する半民間戦力)

 冒険者ギルドは王立冒険者庁によって管理されていた。依頼の斡旋だけではなく、登録、等級認定、犯罪者管理、魔法使用許可、遠征命令、緊急徴用、危険魔法の封印を扱った。

 専業10万人は王国の力であると同時に危険でもあった。特にこの世界では魔術師が王になることや、マラキの影響で魔王化の問題があるので、フィーネシアでも「魔法使いは国家に仕えることはできるが、国家そのものを所有してはならない」と言う原則があった。カンの魔術師自治の理念とは違って、フィーネシアは王国であることから、魔法使いを制度に取り込む方向だった。

 社会問題として、1. 冒険者崩れ。専業になれない者、依頼に失敗した者、負傷して戻った者が大量に出る。彼らは盗賊、私兵、違法魔法使い、傭兵団になる危険があった。2. 魔法格差。魔法教育を受けられる都市民と、登録だけの農村民の間に格差が生まれる。同じ「登録冒険者」でも、実力差は圧倒的だった。3. ギルド利権。依頼の配分、魔石の買い取り、等級試験、危険地域の通行許可などで腐敗が起こる。フィーネシア王国は大国であるほど、冒険者ギルドが巨大官僚制になる。4. 王権と魔法使いの緊張。王は魔法使いを必要とする。しかし魔法使いが強くなりすぎると、王権を脅かす。この緊張がフィーネシア王国の政治劇の核になる。


 フィーネシア王国には魔物が多く、何度殺しても出現する。土地そのものが魔物を発生させる仕組みを持っている。フィーネシアは魔物を討伐する国ではなく、魔物の再発生と共存しなければならない国である。魔物は「湧く」のではなく、世界の傷口から再構成される。フィーネシア王国の地下や森、古戦場、沼地、廃都、山脈の裂け目には、かつての大戦や古代魔法によってできた魔素の澱みがある。魔物はそこで自然発生するが、完全な無から生まれるわけではない。魔物は・死んだ魔物の残留魔力・土地に染みついた血と恐怖・古代の魔法陣の残骸・異界から漏れた獣性・人間や獣の死骸・竜や魔王の眷属の薄い痕跡、などが混ざって、一定周期で形を取る存在である。

 フィーネシア王国はドレイスとルガムに跨る大国であり、かつて魔法戦争期に激戦地であった。古代の魔術師たちは、この土地で大規模な結界、召喚、封印、竜殺し、魔王討伐、都市防衛を行った。その結果、地脈が壊れた。本来なら地中を静かに流れる魔力が、フィーネシアではあちこちで噴き出す。その噴出口を人々は、「魔湧き穴」「獣門」「黒い泉」「魔素溜まり」「骸の胎」「再出の窪地」などと呼ぶ。魔物はそこから出現する。魔物が多い理由は過去の魔法文明の負債を現在の王国が処理しているからである。また魔王眷族の悪魔が潜んだ「亜空」も各地に存在した。

 ある意味で魔物は完全に殺せない。フィーネシア王国は強い。冒険者も魔法使いも多い。それでも魔物を根絶できない。理由は三つある。第一に、魔物の発生源が多すぎる。王国全土に魔湧き穴や魔素溜まりが点在している。第二に、発生源を完全に塞ぐと地脈が暴走する。つまり、魔物を生む穴は危険だが、同時に余分な魔力を逃がす排出口でもある。第三に、魔物は王国経済にも組み込まれている。魔物素材、魔核、魔石、討伐報酬、冒険者ギルド、魔法研究。魔物を完全に消せば安全になるが、同時にフィーネシアの魔法経済も崩れる。かなり嫌な深みが出るとすれば、王国は魔物を憎んでいる。しかし、魔物がいるから王国は強い。魔物がいるから冒険者制度が成立し、魔法研究が進み、軍事力が保たれている。つまりフィーネシアは、魔物を討つことで生きている国である。

 魔物の発生には周期がある。第一に小湧き。数日から数週間ごとに起こる局地的発生。ガブリグのような小魔物、獣型魔物、毒虫型魔物などが出る。村や町の自衛団で対応できる。第二に中湧き。季節ごとに起こる発生。街道封鎖、農地被害、商隊襲撃が発生する。王立冒険者庁が討伐依頼を出す。第三に大湧き。数年から十数年ごとに起こる。複数地域で同時に魔物が出現し、王国軍と専業冒険者が動員される。第四に黒湧き。数十年から百年単位で起こる災害級発生。魔王の前兆、竜の再出現、古代魔法陣の暴走などと結びつく。

 魔物の発生地には以下のような型がある。1. 古戦場型。かつて多くの人間、魔法使い、魔物が死んだ土地。鎧をまとった骸骨、首のない騎士、血を吸った獣、戦場の記憶をなぞる魔物が出る。ここでは魔物は「死者」ではなく、戦場の怨念と魔素が作る模造品である。2. 森林型。森の奥で魔素が濃くなり、獣が魔物化する。狼、鹿、猪、鳥、虫などが異常変化する。3. 廃都型。古代都市の地下施設、壊れた魔法炉、封印された研究所などから出る。人工魔物、魔法人形、合成獣、結界の守護者の成れの果てが出る。フィーネシア王国の魔法研究機関が欲しがる素材もここに多い。4. 裂け目型。異界との薄い接点から魔物が染み出す。別世界から魔獣や聖獣が供給されることにも繋がる。フィーネシアでは小さな世界の隙間が多数あり、そこから異界の獣性だけが漏れる。完全な生物が来るのではなく、断片がこちらの魔素で肉体化する。5. 魔王残響型。過去の魔王、あるいは魔王候補が滅ぼされた場所。そこでは魔物が通常より統率的に出る。群れを作る。武器を使う。人語をまねる。時には「小さな王」を立てる。こうなると、単なる討伐ではなく、政治的・軍事的事件になる。

 フィーネシア王国の成立とはもともとドレイスとルガムの境界地帯は、魔物が多すぎて小国や都市国家では維持できなかった。村は滅び、街道は寸断され、商人は通れず、農地は何度も放棄された。そこで、複数の領主・魔法使い・都市・神殿・冒険者団が連合し、やがて統一王国になった。つまりフィーネシア王国は、「魔物の再出現に対抗するために生まれた王国」である。これはかなり強い国家理念になる。フィーネシア王は単なる支配者ではなく、「魔物の湧く土地を人間の土地として保つ者」王権の正統性もそこにある。

 魔法使いが多い理由。魔物が再発生する土地では、魔法使いの役割は戦闘だけではない。・発生源の観測・魔素濃度の測定・結界維持・死骸の処理・魔核の回収・汚染された井戸や畑の浄化・魔物化した獣の判別・魔物の群れの予兆分析・子供への防衛教育・地図作成・討伐後の封印。つまり魔法使いは、戦士であると同時に、技師、医師、測量士、役人、災害対策官でもあるフィーネシア王国に魔法使いが多いのは、魔法が「便利な才能」ではなく、「国土管理に必要な技術」だからである。

 フィーネシア王国の冒険者ギルドは、酒場で依頼を受けるだけの組織ではない。むしろ、「魔物災害対策庁の民間化された末端組織」に近い。ギルドは以下を担う。・魔物発生情報の収集・討伐依頼の発行・死傷者補償・魔物素材の買い取り・登録者の等級管理・危険地帯の通行許可・王国軍への応援動員・違法討伐や素材密売の摘発など。

 まとめると、フィーネシア王国の地には、魔法戦争以前から存在した古い地脈防衛機構と、魔法戦争期の破壊、さらに異界の獣性が混ざってできた「魔湧き」が多数存在する。魔物はそこから周期的に再構成されるため、倒しても根絶できない。王国は魔物を討伐しながら、魔素の流れを管理し、発生源を完全封印せずに制御している。冒険者と魔法使いが異常に多いのは、この魔物災害を日常的に処理するためであり、フィーネシア王国そのものが魔物再出現への対抗制度として成立したからである。


 フィーネシアにおいて観測は魔術師だけに任された特別な仕事ではなくなっていた。魔物が繰り返し発生する土地を維持するためには、発生した後に討伐隊を送るだけでは不十分であり、平時から土地の状態を調べなければならなかった。このため魔法使いの仕事には発生源の観測、魔素濃度の測定、魔物の群れの予兆分析、地図作成などが含まれた。

 地方では一定の地点について定期的に魔素を測り、以前の値と比較した。測定場所は魔物の発生地だけではなく、井戸、農地、森林の入口、街道、廃墟、魔石鉱山の周辺などにも置かれた。一度の異常値によって直ちに危険とされることは少なく、数日、数ヶ月、場合によっては数年の変化を見ることが重視された。季節によって自然に魔素が増える土地もあれば、雨の後だけ高くなる土地もあるためである。

 異常が疑われた場合には、その地域を利用する登録冒険者や住民からも情報が集められた。家畜が特定の方向へ行かなくなった、夜に聞いたことのない鳴き声がする、井戸の水が僅かに温かくなった、魔法の効き方が以前と違うなど、測定器だけでは拾えない変化も記録された。これらはそれだけでは魔物発生の証拠とはならなかったが、複数の変化が重なった時には調査隊が送られた。

 調査隊は必ずしも強力な冒険者だけで構成されたわけではない。魔素を測る魔法使い、地形を記す者、魔物の痕跡を知る冒険者、必要なら記録者などが同行した。危険が確認されれば討伐を専門とする者が後から派遣され、そうでなければ一定期間の監視へ戻された。このため現代の冒険者にとって、何も倒さず帰還する依頼も珍しくなかった。

 王立冒険者庁と各地の冒険者ギルドにはこのような報告が蓄積された。どの地域で何が現れたかだけではなく、何も現れなかったことも記録された。同じ森で十年間異常がなかったという記録は、十一年目に起こった変化を異常と判断する基準となるからである。古い魔術師が一つの土地を百年見続けた方法は、形を変えて多数の登録者が少しずつ記録を残す制度へ受け継がれていた。

 ただし王国が全ての魔物発生を予測できたわけではない。何の兆候もなく現れる魔物、観測された値には異常がないまま集団化する魔物、魔王の残響によって意図的に観測を欺くものも存在した。予兆分析は未来を確定する魔法ではなく、過去の記録から危険の可能性を高く見積もる仕事であった。

 記録された映像もこの制度の一部となった。討伐や探索の記録は功績を残すためだけではなく、後に同種の魔物と戦う者や同じ土地を調査する者の資料として用いられた。一方で、特に価値のある記録は選別された上で人々にも公開され、再現師によって結界の内部に過去の冒険が組み立てられることもあった。そこでは実際に残された映像と後世の再現とを組み合わせ、一つの出来事を立体的に見ることができた。

 こうした公開記録によって無名の新人が知られることもあり、優れた冒険者を早く見出したい者にとって記録は重要なものとなった。しかし公開されるものは膨大な記録のごく一部であり、日々王国に集まる大半は人々の目に触れなかった。井戸の魔素に変化がなかったこと、森で魔物を見なかったこと、街道の結界に異常がなかったこと、そのような記録もまた王国の観測を成り立たせていた。


 フィーネシアの魔石は自然鉱物というより、地中に沈澱した魔力の結晶である。普通の宝石や鉱石と違い、魔石は「掘れば出る資源」ではあるが、完全に物質ではない。地層、地下水、古い結界、死んだ魔物、昔の魔法戦争の残滓、時には人々の祈りや呪いなどが長い時間をかけて凝固したものである。

 フィーネシアの場合、魔石は次のような性質を持つ。魔石は地の血であり、魔法使いの火薬であり、王国の銀貨であり、同時に眠っている災厄でもある。つまり、便利な資源でありながら、掘りすぎると世界の底を傷つける。暗断裂が大元にあり、下位に赤断裂、青断裂、黒断裂が地脈を走る。


 赤断裂は、血・犠牲・怒り・殺傷・戦争に反応する断裂。これは戦場跡、処刑場、古い虐殺地、魔法戦争の激戦地などに走りやすい。赤断裂が地脈を走ると、そこから採れる魔石は攻撃魔法に向く。しかし使う者の殺意を増幅したり、怪我の治りを歪めたり、人の血に反応して暴走したりする。フィーネシアでは表向き採掘制限されているが、戦時には密かに掘られる。赤断裂は「力になるが、人間を戦争の方へ引っ張る」ものです。

 青断裂は、記憶・映像・幻視・遠隔感応・死者の残響に関係する断裂。それが走る鉱山では、過去の映像が壁に浮かぶ。まだ起きていない未来のようなものが見えることもある。鉱夫が、死者や遠くの家族の声を聞く。ただしそれは真実とは限らない。青断裂は「記録」と「幻覚」の境目を曖昧にする。だから、フィーネシアの映像記録職や記録映画的な公開制度に、青脈魔石が使われる。でも青断裂由来の記録は、完全な客観映像ではなく、見る者や編集者の心に少し侵食される。

 黒断裂は、封印・重力・沈黙・死・停止・魔物化に関係する断裂。暗断裂に最も近い下位断裂である。黒断裂が地脈を走ると、鉱山の中で音が消える。灯りが吸われる。魔法が重くなる。死んだものが腐らず、眠るように残る。黒脈魔石は結界や封印、魔王級存在の拘束、軍事防衛に使える。しかし、人間の魂や影を石に引き込む危険がある。鉱山事故で死んだ人間が、黒断裂の近くで魔石と結合し、半ば眠った魔物になる。

 地脈は「一本の管」ではなく、地下に広がる魔力を帯びた層・筋・湿り気・圧力の流れである。地脈は、大体五つの要素でできている。1. 地下水。魔力を運ぶ媒体。水がある場所では地脈が流れやすい。川、泉、湿地、井戸、地下湖は地脈と関係しやすい。2. 鉱物層。魔力を溜める器。水晶、魔石、金属鉱床、黒い岩盤などが地脈を固定する。フィーネシアの魔石鉱山はここに関係する。3. 死骸と有機物。動植物や魔物の死骸が長い時間をかけて地層に混じり、魔力の栄養になる。これが入ると、地脈が綺麗すぎず、少し汚くなる。「地の豊かさ」は死の堆積でもある、という具合である。4. 古い魔法の残滓過去の結界、戦争、儀式、封印、都市の廃墟などが地中に影響を残す。これにより、地脈は歴史を記憶する。5. 大地の圧力地形そのものの力。山脈、谷、断層、砂漠、内海、火山、巨大森林などが地脈の方向を決める。つまり、地脈は「魔力の流れ」なのだが、気分で流れているのではなく、地形と歴史によって流れ方が決まる。

 地脈は地相に環境の偏りとして現れる。

 地脈の上では植物が異常に育つ。しかし豊かとは限らない。正常な地脈なら、薬草、巨木、濃い苔、青い草、実りの多い果樹が育つ。赤断裂が混じると、棘のある赤い草、血のような樹液、獣を興奮させる花が出る。青断裂が混じると、夜に光る苔、記憶に反応して揺れる花、見る者によって色が変わる草が出る。黒断裂が混じると、枯れない枯木、腐らない落葉、音を吸う黒い菌糸が出る。地脈はまず「植物の変さ」で分かる。

 地脈の近くの水は、普通の水と違う。正常な地脈の泉は、傷の治りを少し早めたり、魔法の消耗を和らげたりする。青断裂が混じった水は、飲むと昔の夢を見る。赤断裂が混じった水は、獣を荒くし、人の怒りを呼び起こす。黒断裂が混じった水は、冷たすぎないのに体温を奪い、死体を腐らせない。地相では「井戸水の味が違う」「川魚の目が青く光る」「水面に自分ではない顔が映る」などで表現できる。

 地脈が強い場所では、石が変わります。石が割ると内側に筋がある。岩肌に脈のような模様が走る。夜になると石が微かに鳴る。採掘した石が温かい、あるいは異様に冷たい。磁石のように魔法具を引き寄せる。魔石鉱山では、地脈の流れがそのまま鉱脈になるわけではなく、地脈が長期間滞留した場所に魔石が育つ、とすると良いです。地脈は流れ。魔石は、その流れが石の中に沈殿したもの。

 地脈の近くでは、生物が変わる。普通の動物が大きくなる。角や鱗が生える。寿命が伸びる。夜行性になる。方向感覚がおかしくなる。魔物が発生しやすくなる。特に断裂地脈では、動物が魔物化しやすい。赤断裂なら凶暴化。青断裂なら幻惑性、擬態、声真似。黒断裂なら不死性、影化、腐敗停止。これにより、冒険者魔法使いの仕事が自然に発生する。

 地脈は人にも影響する。正常な地脈の上に住む人々は、魔力感覚が少し鋭い。魔法使い・トークレム・トークレドが生まれやすい。病気が少ないが、特殊な体質も増える。断裂地脈の上では、逆に歪みが出る。赤断裂の村では、血気盛んな者、兵士、狩人が多いが、喧嘩や殺傷事件も多い。青断裂の町では、記録師、占い師、幻術師、芸術家が多いが、夢と現実の境が薄い。黒断裂の集落では、封印師、墓守、鉱夫が多いが、口数が少なく、子供の影が濃い。

 地脈は気候にも影響する。正常な地脈では霧が出やすい、雨が安定する、泉が涸れにくい。赤断裂では乾いた雷、赤い夕焼け、血の匂いのする風。青断裂では青い霧、音が遠くから届く夜、星が水面のように揺れる。黒断裂では霜、無風、音のない雨、腐敗しない湿気。


 地脈には「結節点」がある。これは複数の地脈が交差したり、魔力が滞留したりする場所のことである。結節点には、以下のようなものができたり、作られたりする。・泉・巨木・祠・古代遺跡・魔石鉱床・迷宮・魔物の巣・都市・結界施設・魔法学校・墓所。フィーネシアの都市や鉱山は、この結節点を中心に発展した。王都や大都市は安全な結節点にある。鉱山町は危険だが豊かな結節点にある。禁鉱区は断裂が絡んだ結節点にある。

 地脈とは、地下水と鉱物層と生命の死骸と古い魔法残滓を媒介にして、大地の魔力がゆるやかに流れる地下の筋である。地上では、植生・水質・石の鳴り・魔物の発生・人間の体質や文化の偏りとして現れる。

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