レイス
レイスの魔法使いは中央諸国などには魔族と看做された。レイスにおける魔法教育は一貫した学校制であり、魔法適性があれば入学できた。一般に12歳で検査が行われ、13歳の年から入学し、5年から6年、それ以上で卒業した。
カリキュラムとしては一例として、1年目に主に魔力感覚、防御、回復、副に魔法倫理、魔法具、体力訓練。2年目に主に防御、非殺傷攻撃、強化、副に索敵、撤退、応急治療。3年目に主に攻撃、強化、対魔物戦、副に通信、地形操作、祝福・呪い基礎。4年目、主に飛行、戦術、連携、副に高位防御、名望及び名靡魔力対策。5年目以降、主に結界、封印、専門戦闘、副に研究、実地任務、魔王・竜・異界対策。
4年次に進めるかどうかを試験によって決め、落ちたものは離脱となった。
1. 入門段階:魔力感覚・身体保護・応急回復
最初に学ぶべきなのは、厳密には回復魔法そのものより前に、魔力を感じること、暴走させないこと、身体を壊さないことである。たとえば初等課程では、・魔力の流れを感じる・自分の魔力と外界の魔力を区別する・魔法陣、詠唱、手印、視線などの基本・魔力切れの症状を知る・魔法酔い、魔力焼け、呪痕の応急処置・自分に簡単な防護膜を張る・小さな傷や疲労を癒やす。
このあたりを学ぶ。ここで重要なのは、回復魔法を「優しい魔法」としてだけ扱わないことである。回復魔法は肉体の構造に干渉するので、下手をすれば傷を塞いだまま毒を閉じ込めたり、骨を曲がったまま癒やしたり、痛みだけ消して死に近づけたりする危険がある。したがって、この世界では初歩の回復魔法は、命を救うための魔法であると同時に、命に触れることの恐ろしさを教える魔法として位置づけられている。
2. 基礎防御段階:盾・避難・耐性・撤退
これは非常に大事で、攻撃魔法より前に置く。防御魔法にはいくつか種類がある。
「身体防御」
皮膚や骨、筋肉を一時的に守る魔法である。初心者向けだが、過信すると危険である。
例・刃を浅く弾く・炎の熱を一瞬だけ逸らす・落下時の衝撃を弱める・矢や石を少し逸らす
「盾魔法」
前方に魔力の壁を作る魔法である。戦闘用魔法教育の基本中の基本にできる。ただし、盾魔法にも限界がある。・正面には強いが側面に弱い・長時間維持すると魔力を消耗する・強い攻撃を受けると術者の精神にも反動が来る・名のある敵の攻撃は盾を貫きやすい
有名な魔剣士や魔王の一撃は、単なる威力だけでなく「その名が持つ重さ」によって防御を割る。だから防御魔法の教育では、単に術式を覚えるだけでなく、相手の名・二つ名・地域での評判を読む戦術眼も必要になる。
「撤退魔法」
戦闘教育として意外に重要なのが撤退魔法である。・煙幕・幻影・足場の生成・味方を引き寄せる・敵の視線を逸らす・一時的な遮蔽物を作るこの世界では「戦える魔法使い」よりも「死なずに帰れる魔法使い」が重視される地域がある。特にカンやラティス魔大学系の教育では、攻撃より撤退を重く見る可能性がある。
3. 攻撃魔法段階:小威力・精密・属性・殺傷判断
ここでようやく攻撃魔法を学ぶ。攻撃魔法は、単に火球を撃つ段階から始めるよりも、最初は小さく、狭く、制御しやすい攻撃にした方がよい。たとえば、・石を弾く・空気を圧縮して打つ・小さな火花を飛ばす・水を刃のように細くする・土を隆起させて足を止める・光で目を眩ませる
最初から大火力を教えない理由は明確である。攻撃魔法の本質は威力ではなく、どこまで傷つけてよいかを判断することだからである。戦闘用魔法教育では、攻撃魔法を学ぶ時に必ず「殺傷判断」を学ばせる。たとえば、次のような段階。1. 非殺傷攻撃2.戦闘不能化3. 魔物への殺傷攻撃4. 人間相手の実戦攻撃5. 魔王・竜・魔族・呪われた者への特殊攻撃
人間相手の攻撃魔法はかなり後回しにしてよい。むしろ教育機関によっては「人間に向ける攻撃魔法」は卒業直前まで禁じられている。
その方が、戦闘魔法がただの便利な武器ではなく、社会的に危険な知識として扱われる。
4. 強化魔法段階:身体強化・感覚強化・武器強化
攻撃魔法の次、または同時並行で強化魔法を学ぶ。強化魔法は戦士・冒険者・騎士との連携に向いている。魔法使い本人が前線に出る場合も、強化魔法が必要になる。
分類すると、
「身体強化」
・筋力強化・反射速度強化・耐久力強化・跳躍力強化・疲労軽減
ただし身体強化は危険である。筋力だけ強化して骨や腱が耐えられなければ、自分の肉体を壊す。したがって、回復魔法と防御魔法を先に学んでいることがここで効いてくる。
「感覚強化」
・暗視・遠見・聴覚強化・魔力感知・殺気感知・呪いの気配を読む
強い者、有名な者、土地に刻まれた名を持つ者は、ただ近づくだけで気配が重くなる。感覚強化の授業では、それを読み取る訓練ができる。
「武器・防具強化」
・剣に魔力を通す・矢に追尾性を与える・盾を硬化する・鎧に耐熱性を加える・杖や魔法具の出力を安定させる
これは魔法使いだけでなく、騎士や冒険者との共同授業にできる。
5. 飛行魔法段階:移動・偵察・高度制限・落下対策
空を飛ぶ魔法は、攻撃魔法や強化魔法の後で学ぶ。理由は、飛行魔法は便利ですが危険度が高いからである。飛行魔法には少なくとも三つの段階がある。
「浮遊」
地面から少し浮く。初心者向け。
・沼地を渡る・罠を避ける・崖から落ちた時に減速する・短距離だけ滑る
「滑空」
高所から空中を移動する。中級者向け。
・風の流れを読む・着地地点を選ぶ・空中で姿勢を保つ・矢や魔法を避ける
「飛行」
自力で空を飛ぶ。上級者向け。
・長距離移動・空中戦・偵察・高所からの魔法攻撃・竜や飛行魔物との戦闘
ただし、この世界には空帝や竜の権威があるので、飛行魔法には宗教的・政治的な規制がある。たとえば、一定高度以上を飛ぶには許可がいる。竜道と呼ばれる空の通路を侵してはならない。空帝の結界圏では、無許可飛行は墜落する。軍事的飛行魔法は都市ごとに登録制。
6. 戦術魔法段階:索敵・通信・連携・地形操作
攻撃、防御、回復、強化、飛行を学んだ後、次に必要なのは「戦場を読む魔法」である。戦闘用魔法教育では、以下を学ぶ。
「索敵魔法」
・魔力反応を探す・生命反応を探す・魔物の巣を見つける・罠を察知する・隠れた呪物を見つける
「通信魔法」
・短距離念話・信号光・魔力印による合図・鳥や獣に伝言を載せる・魔法陣を介した報告
地形操作
・土壁を作る・溝を掘る・足場を固める・橋を仮設する・泥濘を作って敵の足を止める・炎の延焼を防ぐ
このあたりは、戦闘を「殴り合い」から「作戦」に変える。特に冒険者が多いフィーネシア王国では、魔物退治の実用技能としてかなり重視される。一方、カンの魔術師教育では、より理論的に「戦場構成術」として教えられる。
7. 呪い・祝福・名望魔力への対処
有名になることで魔力的に強くなる。強い者の心の中で大きな存在になることで祝福や呪いを与えられる。そのため戦闘用魔法教育には次の科目が必要になる。
「名の防護」
他人に名前を利用されないための訓練である。
・本名を隠す・戦場名を使う・二つ名の扱いを学ぶ・敵に名を呼ばれた時の対処・名声が呪いに転じる仕組みを知る
「祝福の制御」
味方に力を与える技術である。
・士気を高める・味方の傷の治りを早める・盾魔法を強める・有名な英雄の名を借りる・戦旗、紋章、歌、記録映像などを媒介にする
「呪いへの抵抗」
敵の悪意や名声による圧力に耐える技術である。
・恐怖を弱める・悪夢を防ぐ・呪詛の付着を切る・敵の二つ名に呑まれない・魔王の名を聞いても精神を保つ
この過程により単なる魔法学校ではなく、名前・評判・記憶・畏怖・信仰が戦闘力に関係する世界の軍事教育になる。
8. 結界魔法段階:領域支配・守護・隔離
最後に結界魔法を学ぶ。結界魔法は高度で、しかも政治的に危険である。結界は防御魔法の延長に見えるが、本質は違う。防御魔法は「身を守る」。結界魔法は「空間の規則を変える」。
なので、かなり上級に置くべきである。結界魔法でできることは、・魔物の侵入を防ぐ・呪いを遮断する・敵の魔法を弱める・一定範囲内で飛行を禁じる・火を燃えにくくする・亡霊や魔族を閉じ込める・都市全体を守る・遺跡や禁域を封じる
ここで、カンの「魔術師が王になることを禁じられている」思想と強く結びつく。なぜなら、結界魔法を極めた者は、領土を支配できてしまう。都市の出入り、魔物の発生、通信、天候、飛行、魔法使用を制御できるなら、それはもう王権に近い。だからカンでは、結界魔法を学ぶ者は、支配者になってはならない。結界を張る者は、結界の内側を所有してはならない。という倫理があるとよい。
9. 封印魔法段階:最後に学ぶ禁域に近い技術
封印魔法も最後に学ぶ。むしろ、全員が学べる必要はない。封印魔法は、倒せないもの、殺してはいけないもの、殺しても戻るものを扱う。
対象はたとえば、・魔王・竜・悪魔的存在・呪物・暗断裂に触れた者・狂った魔術師・亡霊・暴走した魔法都市・異世界への扉・霜の世界の火口のような異界接続
封印魔法は「勝利」ではなく「未解決を管理する魔法」である。ここが重要で、攻撃魔法は敵を倒す。結界魔法は場所を守る。封印魔法は、世界がまだ受け止められないものを、時間の中に押し込める。この考え方によれば、封印魔法は非常に重い技術になる。
また、封印魔法には失敗の歴史がつきものである。・封印が弱まる・封印された者が内側から名を広める・封印を守る一族が堕落する・封印の維持に犠牲が必要になる・封印が結界化し、地域全体を歪ませる・封印された魔王が夢の中で信徒を増やす
レイスにはブレドツリュウゲ、ダーカン・ドレマゾマン、エボゴ・エンナキア、ベドセスなどの都市国家、カンドセパネ、シリングリーチ、レイノウ、エピス、メナス、タルス、オストラコンなどの国家があった。オストラコンでは山羊を生贄に捧げる教えが信仰の中心だった。
月魔世の終結後千二百年ほどして2020年頃の地球世界の日本から錦戸咲良が転移し、九年ほど後次いで2018年頃の日本から西野雄太が転移する。「天国行きから異世界へ」を参照のこと。彼らは事実上の夫婦となり生涯共に過ごした。ハーンヴァール王国、ブレドツリュウゲなどに住んだ。(西野雄太と錦戸咲良の双子の娘は彼らが名付けた陽彩花、璃耀華がいるともされる)西野雄太はデゴルボルン投獄のきっかけを与えた名もなき東の魔法使いとして知られた。
錦戸咲良はレア湖上のメヒャステラ神殿などでの試練を乗り越え王選に勝利し、王となる。国名をサクライロド(サークレイロッド、Kingdom of Sacrairod)にした。レーヴィア帝国連邦の一員であり、第十魔法大隊が駐留した。彼女は強い呪いの影響(女性器が開かない)で子を残せないということも口実として伴侶である西野雄太に妾を与えた。その正確な数は分かっていない。その後宮を「はるかぜ西野」と名付け、当の本人が「春風」に改めさせた。彼女はまた暴虐の魔女というきつい愛称としての呼ばれ方をして、極端な改革を進めた。まず娼館は廃止された。
錦戸咲良の王宮はハナン城と呼ばれた。料理人の責任者にはチョン・リウォンという異世界人を採用し、故郷の料理を振る舞わせた。また彼女は劇場を作り、地球世界から来たウィリアム・オドワイヤーの娘サラ・ドワイト・オドワイヤーは歌手として有名になった。咲良女王主催のフェリクス音楽大会の声楽の部で優勝した。またその妹リサ・エヴァンズ・オドワイヤーは魔法使いになった。彼女らは二人ともグランスノー教会で出会ったカイという命級冒険者と結婚した。なおこの男は後に魔王教徒魔族であることが密告され、処刑された。国内法ではなく国際法が適用された。サラの息子アレックスことアレクサンダーとリサの娘アレックスことアレクサンドラはそれぞれデゴルボルンに幹部として仕えた。なお西野雄太は自身は錦戸教徒だと冗談で言っていた。
(またドレイスの王ハンベスはドレイスの塩湖の近く平野に一つ聳える山に巨大な城を築いていた。錦戸咲良により再発見されたのだが、残されていた文書によればそこにはアマネという魔女が少女時代に拠点としていた。彼女の配偶者西野雄太は彼女を「失われ魔女ん」と表現した。)
大魔王デゴルボルンが現れ、勇者ジンが彼に勝利する。世界は一時全てが大魔王の支配下に置かれたが、その支配は結果的に長期間には及ばなかった。(彼はポロゼロログにザナレルの砦を再現し、ザナレルポロゼロロガルザナレルを実現して、そこに住んだ。その体を魔の結晶と化したが肉体を保存していて、子孫を残すために多くの女性と交わった)その以前に錦戸咲良は死に(正確には生きながら天に上り)、西野雄太はその前後に死んだ(正確には生きていて40年後に死んだ)。彼ら二人は池田誠一の子孫との関係と、封印されていた聖書の知識からイエス・キリストに信頼を置いたと言われる。これは西野雄太が書いたこの世界の歴史に加筆を加え編集したものである。
陽彩花と璃耀華はそれぞれ池田の子孫と結婚して世界宣教を行なった。姉はアルミニウス主義に近く聖霊派とされ、妹はカルヴァン主義に近く洗礼派とされる。
璃耀華の息子イケダス・ニシキドス・ライトは全ソルカティヤ=キリスト教協議会の会長になった。また彼の五代の子孫レグムは冒険者として光の階級に到達した。
新海の帝国東は福音化された。
世界は不安定になり、霊化した英霊が彷徨いながら世界の安定を取り戻すために延々と戦いを続ける場になった。世界は荒廃し、光が取り戻されることはなかった。
七大魔力列強。第一位、名のない魔術師。第二位、魔王ザナレル。第三位、ゼウンンレエエル。第四位、スウヤーウルウン。第五位、ダエーセン。第六位、ツォーレヌー。第七位、西野雄太。




