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8. 剣士の事情


魔王城1階 応接室―――



黒い服の魔族にこの部屋に案内された。

魔族による拷問が始まるのだと思っていたのに、ここは客人を迎え入れるような部屋に見える。

座って待つよう伝えられたが、立ったまま部屋を見回していた。


一体、これからどうなる?

考えているとノックの音がして、扉が開いた。


「おや、どうぞそちらに掛けてください」


先程まで玉座の間にいた執事服の男と淡紫の髪の美しい魔族が入ってきた。


リンゼ、と名乗った魔族の女性に部屋の奥のソファに導かれた。その姿は魔王城4階で魔法使いの攻撃で倒れたはずの四天王だった。


「驚いたでしょう、実は四天王は皆生きてるの」

「......」


まだ状況がのみ込めない。

ただ、あれだけ余裕で勇者の剣を回避していた彼女が、魔法の一撃であっさり倒せた事に違和感はあった。

それに、魔王と四天王は簡単に倒れる存在じゃないことは知っていた。



「ハーブティーと紅茶、どちらが好みかしら」

「...どちらでも」


こちらの会話を受けて、執事がお茶の準備を始める。


「あの、これは、どういう...?」

「そうね、まず私達は人間と敵対したいと思っていないの。国や貴族の思惑で送られてくる勇者達は、できるだけ傷つかない方法で送り返してるわ」


リンゼ、と名乗った魔族は私から一人分離れた場所に座って話す。ほぼ初対面の相手なのに、なぜか警戒心を感じさせない、穏やかな空気を纏っていた。


「あまりに酷い態度だと、後でちょっと、いろいろさせてもらう事もあるけど」


ハーブティーが目の前のテーブルにそっと置かれる。自国でも馴染みのある香りが微かにする。


「こちらは、執事さん。貴方のお話を聞かせてもらいたいの」


リンゼに簡単に紹介された執事は、向かい側のソファに腰をおろした。私から斜め前の位置。


「率直に聞きます。貴方は何か勇者に味方しなければならない理由があったのでは?」


ハッとする。どうして?


「戦いに積極的には見えませんでした。勇者を守らされている、そういう印象です」


「何かが、あるのね?」


正面からと隣からの視線。そうだ、戸惑ってる場合じゃない、これだけは言わないと!


「お願いします!私を隣国に帰らせてください。妹が勇者に捕まり、閉じ込められているんです。

勇者が戻る前に忍び込めば...助け出せるかもしれない。万が一でも、助けに行きたいんです!」


成したい事を、一息に言う。


勇者パーティーとして魔王城に入った私がこのまま帰れるはずない。わかってるけど...後で自分がどうなっても、妹だけは救いたかった。



「今も勇者に味方する人達が妹を捕らえています。

勇者があの街に戻れば、命が危ない。

私に監視をつけてください。妹を助け出せたら、必ず戻って罰を受けます」


剣士は、長椅子から降りて膝をつき、両手と頭を床について懇願した。

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