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14. 魔王様と帝国勇者


下方から追撃が放たれ、魔王は空中で身体を

ひねって軌道から逸れる。


作物が植わっていない所に着地した瞬間、目の端に銀色の人影を捉えた。その場に更に斬撃が届く前にかわし、剣の側面を蹴り上げた。  


銀の影は剣を手放さず、そのまま後方に跳び勢いを

いなすと、宙で一回転して着地した。



長い銀髪が陽光を弾く。澄んだ青空の色の瞳。

白い立襟のシャツ姿に白銀の胸当と手甲をつけた

だけの簡素な装備で立っているのは、

帝国の勇者、イリア・グランリットだった。


「おひさしぶり!魔王さん」


剣を鞘に収めて、ふつうに挨拶してくる。


「悪ふざけがすぎるぞ、イリア」

「鈍ってないか、不意打ちしてみた」

「そんな気遣いはいらんから。今日来るって聞いてないぞ」

「サプライズで来たからね」


「突然来た時は水でもてなすことにしよう」

「えー困るなぁ。執事(ロイメテル)のお茶が目当てなのに」

「お茶飲みに来たのか」

「もちろん!ついでに仕事もね」



慣れている帝国勇者は、魔王の先に立って城の方に歩き出す。

ガーゴイル像の監視が唯一通用しない相手。

まあ、執事は既に察知してるだろうけど。



「...これから配達行く予定なんだが」

「それは邪魔できないね。うちの宰相が喜んでたよ

リクエストの苦い大根よかったって」

「おお、そうか。魔野菜はどうだ?」

「市場での売れ行きは上々。魔野菜というか

魔国産の新種の野菜としてかなり広まってる」

「新種...」

「うちのシェフは大ぶりで食感もすばらしい、

もっと使いたいって大絶賛してた」

「よしっ!今日とれたてのやつ持って帰っていいぞ」

「いただきまーす!」



城の裏口に向かって歩きながら、畑との間にある

演習場が目に入る。


「あ、そこで今サウロが新しい四天王を指導してるから」

「そうなんだ!挨拶して、ついでに混ぜてもらおうかな」


イリアはご機嫌な様子で向かった。

魔族に対する忌避感は一切ない。こっちに年数回は遊びに来るし。魔族の血を引いているからか....。

いや、本人の性格だろうな。



この間に俺は魔野菜の配達に行こう。

自分の魔力で育てたものが畑で実るのも嬉しいが...

やっぱり届けに行った時に、魔国の皆の笑顔が

見れるのが最高に嬉しいから。



・*・*・*・*・*・*・*・*・*・*・



魔国の民に畑の作物を配った後、5階の応接室に

足を運ぶ。城の1階にも来客用の部屋があるが、

こちらは親しい客用のプライベートな空間だ。


入室すると、イリアとリンゼが真剣勝負の

最中(さなか)だった。


黒と白の駒が盤上を動く。


イリアの指が移動し、白のルークとキングが

黒のキングを捉えた。


「イリアちゃん、やっぱり強いわ」

「リンゼちゃんも腕を上げたね」


帝国から入ってきた盤上の遊びは、魔国でも

人気が出て広まりつつある。


「魔王様が戻ってきたし、私はもう行くわね」

「うん。リンゼちゃん、また相手してくれる?」

「ええ、喜んで!」


リンゼはこの後アトリエに、行く予定だったか。

俺と執事に挨拶をして退室した。

執事はサイドテーブルで茶の準備を整えていた。


帝国勇者とテーブルを挟んで向かいのソファーに

腰かけて茶を飲む。帝国の使者との、いつもの時間だ。


「昼食はどうしたんだ?」

「リンゼちゃんと一緒にいただいたよ。

野菜のグラタンが絶品だった」

「そうか」


「そういえば、リンゼちゃんから聞いたんだけど」


何だ?最近のことといえば隣国の話か?


「魔王さんって小さい頃、るーくん呼びされて

たんだって?」

「ぐっ...」


思いっきりむせた。


「母親が呼ぶから周りもそうなっただけで、昔の話だ」

「ふうん、先代様からそう呼ばれてたんだ。

私も、るーくんって呼ぼうかな」

「いや、ルークラテルってそのまま名前で呼べばいいだろ」

「長いよ、るーくん」

「るーくん呼びはやめて」


デカい図体して、るーくんはないだろ。


「じゃ、やめとくよ」


イリアは茶と一緒に出された菓子を口にして、

満足そうにしている。

畑では着けていた僅かな防具すら外して

くつろいでいる。



「毎回、軽装備すぎないか?」

「私を移動中に追撃できるのってロイメテル

くらいだよ」


イリアには個人で使える移動手段がある。

ある意味では、最も安全といえる。


「俺でも無理だな」

「でしょ。武器もいらないかも」

「それは一応持っとけ。仮にも聖剣だろ?」

「正真正銘のね」


イリアは皇帝に選ばれた帝国の正式な勇者だ。

定期的に魔国を訪れ、皇族と友好派の意を汲む

【使者】の役目を果たしている。


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