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感情相場  作者: ソウガク
3/19

3.運命

私はなぜか雨の中、歩いていた。

 私にもわからなかった。だから、それを運命と思った。


 空が厚い雨雲で覆われ、周囲は薄暗くなり、大雨の中、公園の噴水の目の前にリオが傘もささず、濡れた長袖を着て立っていた。

 リオの表情はどこか嬉しそうで、気分がいいような、曖昧ながらもプラスの感情であることがわかる。


 リオはポケットからタバコの箱を取り出し、箱からタバコを取り出して、手で雨を防ぎ、ライターで火をつける。

 リオはタバコを吸い、暗い雨雲で覆われた空を見上げながら、息を吐いた。

 リオの態度には、まるで何かを待っているようなものがあった。


 あれは突然だった。

 背後から、あの声が聞こえた。


 「タバコですか……」


 それは運命だった。

 そして私の聞き慣れた、最も好きな声だった。


 リオは後ろへ振り返る。


 私と比べると少し高い身長で、私よりも少し歳上に見える外見をしていて、

 顔は綺麗に整っている。

 私より少し短い緑髪に、左耳にはいつも同じピアスをつけている。

 緑の虚ろな瞳。

 服装は今日も白のワイシャツに緑のエプロン、革のブーツ。


 リオは言葉を放つ。


 「なに?」


 敵意はない。

 リオが言葉を返す。


 「いや、私も昔はカッコつけてタバコ吸ってましたよ。

 ただ……なんか、懐かしいな、と」


 私はその虚ろな目を見つめていた。

 吸い込まれていくような、あの緑の綺麗な瞳を。


 私はあの言葉で変わった。


 リオは考えて理解するような素振りをした後に、


 「え?」


 私は困惑した……。

 私の人生で、そんなことを言われたことはなかった。

 私は意味もわからず、その言葉の意味を考えていた。


 リオが意味のわからないことを聞いたように目を丸くして、口を開けていた。


 「リオじゃね?」


 後ろから男性の声がかかった。


 その声も私は聞き慣れていた。

 聞き慣れるはずのない声であるのに。


 「アルディ? え?」


 リオが振り向くと……驚いたような顔をした。


 私の友達であったアルディが立っていた。

 アルディとは幼馴染で、ずっと知っている。

 アルディの見た目は、男で黒いパーカーを着ていて、あんまり言うことがない、普通の人だ。


 「いや、なんかお前見っけたから声かけてみたんだが……」


 リオは納得したような顔をしていると、焦ったような顔になり、


 「私は邪魔そうなので帰りますね」


 私はまだ話していたかった。

 まだ聞きたかった。

 問いたかった。


 だが、私はそれを言えなかった。

 運命は本当に嫌いだ。


 あの時のアルディは、私を見て申し訳なさそうな顔をしていた。


 「なんか、ごめんな」

 「いや、大丈夫」


 「大丈夫」と言いながらも、リオの顔には喪失感が浮かんでいた。


 「……なぁ、普通にさっきの奴、お前の友達か?」

 「いや、なんかさっきタバコ吸ってたら話しかけてきてさ」


 リオが持っている吸いかけのタバコを見て、少し考えてから言葉を発する。


 「……なんかタバコがカッコつけ? とか言ってたけど、どういうこと?」


 私にとっては、その言葉は違和感だった。

 私は、自分がズレているのかと思った。

 だから、アルディに聞いた。


 なんとも言えない違和感を解消するために……。


 だが、もちろん、私から違和感は消えなかった。


 「ん? そんなこと思ったことないぞ」


 私は、あの純粋なアルディの「思ったことない」という言葉に、自分はズレていないことに安心した。

 だが、違和感は増し、疑問も増えた。


 私はまた会いたいと思った。


 「まぁ、そうだよね……」


 リオが相槌を打つように言い、


 「どっか行くか? 今日は雨だぞ!」

 「あ、うん」


 アルディが私を誘ってきたが、私は「カッコつけ」という言葉……いや、あの虚ろな瞳……。

 全てが離れなかった。

 離れるわけがなかった。


 リオが数秒沈黙した後に、


 「家帰ってゲームでもしよ」

 「あぁ、わかった」


 私が断ったから、アルディは落ち込んでいた。


 そのまま、公園の噴水から私とアルディは逆方向へ、雨の中を歩いて行った。

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