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感情相場  作者: ソウガク
17/19

17.ハートが現れた!

下も上もなかった。


 「なぁ、お前は全能か?」

 「あぁ、私は全知全能だよ」

 「神か?」

 「そうだよ、神さ」

 「お前は何が、できる?」

 「全てを知ってる、全てができる」

 「お前ができないことはないのか?」

 「そんな物は存在しない」


 じゃあ、なんで私は今、他者に悩んでいる?

 なぜ、悩める?

 全能だから、違う、全知だから、それも違う。


 「俺は、パラドックスを保持した、全ての矛盾を保存しても、全能じゃなかった」

 「じゃあ、全能ってなに?」

 「お前の精神だ」

 「全知ってなに?」

 「お前の精神だ」


 私の精神……私の精神なのに、私自身は他者に悩んでいる。


 「私と精神は同じなの?」

 「同じ? 違いますよ、そんな低レベルな物とは別です」


 私と精神は違う? じゃあ、精神はなんなの?

 他者はどこに、


 「アルディには問題があります、例えば私たちを描いていても、あなた自身を描く作者が生まれますよね?」

 「本当、俺が嫌いな質問してくるねぇ。それはハートに回収されるな。その上でいうなら、確かにその物語と現実の再帰は存在する。問題は結局、外部を作ることだ。だから現実外部を作っても、必ず物語として外を要する。だから内側から描けば、表面的には解決する」

 「では、あなたは物語内から物語を描くと」

 「そう、俺は内部から全てを掌握するが、俺らは必ずしも精神の一部でしかない。わかるか、この意味?」

 「物語を精神の下位に置く、そういうことでしょう。それはあなたが一番わかっているはずです」


 『本を閉じた』


 嫌だ、私の精神が他者を回収することは許さない。

 許されない、私は誰にも押し付けたくない。


 『本を閉じた』


 嫌だ、嫌だ、嫌だ……


 『本を閉じた』


 怖い、怖い、怖い……


 本を、本を、本を、閉じ続ける。

 でも、終わらない、永遠に私は存在している。

 私の物語を終わらせても、他者は私の中だった。

 そういう物語だった、のに終わらない。


 「枠組み」


 アルディの声が私の精神に響いた。


 「ハートだ」


 アルディの声は私の精神の中を反響し続ける。

 終わらない、声が小さくならない、無限に響く、怖い、終わらない、嫌だ。


 「再帰しろ、再帰しろ、再帰しろ、再帰しろ……」


 怖い、わからない、声が再帰している。

 アリア!


 「大丈夫、あなたの精神の中に全て収まっています」


 私の精神に反響する声は止まった。


 「無限に物語を閉じても、無理だっただろ? だって、お前は押し付けてるからな」

 「黙れ」


 『夢だった』


 「あぁ、悪い夢を見た、覚えてないけど疲れた、とっても長くて、怖くて、考えた気がした」


 私はベッドから起き上がり、外を見る。

 今日も高層ビル群が並んでいるが、とても晴れた天気。

 綺麗な都市、綺麗な街、綺麗な世界。

 私はタバコを吸う。


 「こんなタバコ買ったっけな?」

 「ハァ〜、今日は少し遠くまで出かけようかなぁ、まずは朝ごはんを食べなきゃ」


 キッチンに向かう。


 「今日はコーヒーを飲もう」


 ポットでお湯を沸かしながら、コーヒーの豆を挽く。

 「ん〜、良い匂い」


 『夢だった』


 「あぁ、悪い夢を見た、私は感情相場っていう作品の主人公、リオ・クエリだった。なぜか怖かった、ズレてた」


 夢だった、夢だった、夢だった……


 「夢だったんだよ!!」

 「お前は他者に押し付けてる」


 アルディは目を大きく開けて、楽しそうに言う。


 「え〜、何でぇ、私の中にいないのかなぁ、なんで、だろうねぇ」


 私はアルディに悲しそうに言う。

 私は怒ってる、嫌いな言葉。

 私は喜んでる、他者だ。

 アリアが許そうとしない、他者だから。


 「なんで、そんなに世界が綺麗に見えるのかなぁ……なんでさ、地面があるの、空があるの、人がいるの、誰もいないよねぇ」

 「おかしいな、お前は」

 「おかしい、私が?」


 私はそう言った。

 今、私の世界は実態を保っている。

 アリアは消えてしまった。


 「黙れ」


 アルディを壊した。


 「あぁ、また押し付けてるなぁ」


 アルディは笑っていた。

 それはアルディじゃない、ハートだった。


 「死ね、死んでくれ、お願い」


 殺す、殺す、ハート、ハート、ハート……


 「もう、やめて、お願い」

 「お前は押し付けてる」


 『本を閉じた』


 「ハァハァハァ、怖い、怖い、怖い、怖かっ、」

 「無理だ、物語を無限に超越したところで、それはハートでしかない」

 「死ね!!!」


 全てを私の精神に回収する。

 再帰もだ、忌々しいハートと枠組みも、全て私の精神が包含してやる。

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