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感情相場  作者: ソウガク
13/19

13.ダメ

私は思う。

 この世界はアリアが言う通り、とても素晴らしい。

 それを可能としているのは自然だと、


 「私は問いたい、そこにどのような成立条件があるのかを、」

 「自然について言っているなら……自然は私たちだからだよ。 私たちは自然と共にあるじゃん、みんな平等に、みな優しい感情に、私たちが生きてられる拠り所だもん。 だから私たちは自然に感謝する」

 「なぜ、感謝するんですか?」

 「そう、教えられるからじゃない?」


 みんな、そう教えられて育ってきた。

 自然に感謝すると、それはごく当たり前で誰も気にしないこと。


 「私は思うんですよ、教えられるは理由そのものではなく、可能にする条件。 社会が当たり前を構成して前提になっている。 なぜ、社会がそれを当たり前とするのか、わかりますか?」

 「アリアは自然に感謝しないの?」


 私はどこか不安そうに、アリアに聞く。

 なぜなら、わからない、だから言い表せない恐怖にも似た感覚がする。


 「自然を中心にして考えることは私は嫌いではないですし、否定したいわけでもありません。 ……あなたは神を信じますか?」

 「神……宗教とかの? 私は信じないけど、アリアは信じるの?」

 「私は、自分自身を信じます」


 自分自身を信じる? 神の話を振ったのに自分? 神、また何百年も前のすれ違った話。


 「私は私を信じる、だから私は自然を信じない」

 「自然を、信じない……信じる私たちだって、自然の一部でもあるのに?」


 私はアリアに少し、強く聞いてしまった。

 なぜなら、怖いから、信じていないことが。

 信じられないから。


 「もう一度聞いてしまいますが、自然を信じるのはなぜなんですか?」


 教えられることが理由ではないなら……信じる理由? ……自然が大切だから、いやでも……自然から生まれ……いや、もうわからない、でも、


 「ダメだから」


 いや、でもダメは理由なの? ダメがなんでダメなのかは? ダメ、


 「ハートなんですよ」


 「ハート」? さっきもアリアは「ハート」と言っていた。

 ハートって、あのハートの形なの? 多分、いやでもアリアはよく、違うことを言うからわからない。


 「何かに理由があり、その理由の理由を重ねていったら、理由になるんですか? ダメ、なんじゃないですか? それは理由としてはダメでしかない」

 「それじゃ、自然は……」

 「あなたの考えもある、だから私にはしてはいけない。 あなたの言葉です」


 私の言葉? そんな言葉を言ってはない。

 少なくともアリアと話した会話で言った記憶もない。


 「あ、そういえば、今って何時?」


 アリアと会ってどれくらい時間が経った、なぜかもの凄く時間が経った気がする。

 まだ、日は変わっていないはず、


 私はすぐに周囲を確認する。

 壁がなかった。

 時計もなかった。

 何もなかった。


 あれ、何もない? なんで? でも、元々こんな感じだったような気がするし、何かあったような気もする。

 わからない、よく、捉えられない。


 「あなたは今、私の考えに近づいています。 でも、私になったわけじゃない、あなたが私を模倣しているだけ、あなたはそれを認める」


 わからない。

 とても、モヤモヤとする、気持ちが、言語に言い表せない。

 何か、世界がおかしい。


 「理由が枠組み的になる。 自然は綺麗なのかもしれない、大切なのかもしれない、私はそれを断言はできない」

 「そうだよね、断言はできないよね」


 そう、自然が絶対とは言えない。

 だって、ただ、ダメなのだから。


 「差は徐々に溶けていきます。 あなたがあなたであることも、私は私へと収束していき、溶けていく、これが私の世界」

 「そこに何か、あるの?」

 「あなたが私を知るのはここまででいい」


 いつもの部屋がある。

 壁に、机、ベッド、目の前にアリアもいる。

 でも、時計はなかった。


 私は今回で、何か、重要な物がなくなった気がした。

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