13.ダメ
私は思う。
この世界はアリアが言う通り、とても素晴らしい。
それを可能としているのは自然だと、
「私は問いたい、そこにどのような成立条件があるのかを、」
「自然について言っているなら……自然は私たちだからだよ。 私たちは自然と共にあるじゃん、みんな平等に、みな優しい感情に、私たちが生きてられる拠り所だもん。 だから私たちは自然に感謝する」
「なぜ、感謝するんですか?」
「そう、教えられるからじゃない?」
みんな、そう教えられて育ってきた。
自然に感謝すると、それはごく当たり前で誰も気にしないこと。
「私は思うんですよ、教えられるは理由そのものではなく、可能にする条件。 社会が当たり前を構成して前提になっている。 なぜ、社会がそれを当たり前とするのか、わかりますか?」
「アリアは自然に感謝しないの?」
私はどこか不安そうに、アリアに聞く。
なぜなら、わからない、だから言い表せない恐怖にも似た感覚がする。
「自然を中心にして考えることは私は嫌いではないですし、否定したいわけでもありません。 ……あなたは神を信じますか?」
「神……宗教とかの? 私は信じないけど、アリアは信じるの?」
「私は、自分自身を信じます」
自分自身を信じる? 神の話を振ったのに自分? 神、また何百年も前のすれ違った話。
「私は私を信じる、だから私は自然を信じない」
「自然を、信じない……信じる私たちだって、自然の一部でもあるのに?」
私はアリアに少し、強く聞いてしまった。
なぜなら、怖いから、信じていないことが。
信じられないから。
「もう一度聞いてしまいますが、自然を信じるのはなぜなんですか?」
教えられることが理由ではないなら……信じる理由? ……自然が大切だから、いやでも……自然から生まれ……いや、もうわからない、でも、
「ダメだから」
いや、でもダメは理由なの? ダメがなんでダメなのかは? ダメ、
「ハートなんですよ」
「ハート」? さっきもアリアは「ハート」と言っていた。
ハートって、あのハートの形なの? 多分、いやでもアリアはよく、違うことを言うからわからない。
「何かに理由があり、その理由の理由を重ねていったら、理由になるんですか? ダメ、なんじゃないですか? それは理由としてはダメでしかない」
「それじゃ、自然は……」
「あなたの考えもある、だから私にはしてはいけない。 あなたの言葉です」
私の言葉? そんな言葉を言ってはない。
少なくともアリアと話した会話で言った記憶もない。
「あ、そういえば、今って何時?」
アリアと会ってどれくらい時間が経った、なぜかもの凄く時間が経った気がする。
まだ、日は変わっていないはず、
私はすぐに周囲を確認する。
壁がなかった。
時計もなかった。
何もなかった。
あれ、何もない? なんで? でも、元々こんな感じだったような気がするし、何かあったような気もする。
わからない、よく、捉えられない。
「あなたは今、私の考えに近づいています。 でも、私になったわけじゃない、あなたが私を模倣しているだけ、あなたはそれを認める」
わからない。
とても、モヤモヤとする、気持ちが、言語に言い表せない。
何か、世界がおかしい。
「理由が枠組み的になる。 自然は綺麗なのかもしれない、大切なのかもしれない、私はそれを断言はできない」
「そうだよね、断言はできないよね」
そう、自然が絶対とは言えない。
だって、ただ、ダメなのだから。
「差は徐々に溶けていきます。 あなたがあなたであることも、私は私へと収束していき、溶けていく、これが私の世界」
「そこに何か、あるの?」
「あなたが私を知るのはここまででいい」
いつもの部屋がある。
壁に、机、ベッド、目の前にアリアもいる。
でも、時計はなかった。
私は今回で、何か、重要な物がなくなった気がした。




