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比丘尼たち――1

こうしてマハーパジャパティは最初の尼となった。そして彼女に続いてさまざまな女性たちが仏陀の(もと)へやってくるようになる。

 シャーリプトラの三人の妹、チャーラー、ウパチャーラー、シースパチャーラーも出家し、厳しい修行の日々を送っていた。あるとき、彼女たちがシュラーヴァスティー郊外の(やみ)(のはやし)で静かに禅定を為していたとき、悪魔が現れて先ずチャーラーに尋ねた。

(おんみ)は何を喜ばないで、独りこの様な(ところ)に居るのか」

(いくる)を喜ばず」

チャーラーは悪魔の方を見ずに答えた。そして(うた)う。

「生あれば死あり、生まれては悩み知る。

 いましめ、なやみ、他かずかずの(わざわい)御仏(みほとけ)(のり)を説きまして、悩み離るる道示し、まことに導き給わりし。

 神の世の楽しみは沢にしあれど、(のり)しらざれば、再び迷いに(きた)るらめ」

 つけいる隙がない様子を見て、悪魔は次にウパチャーラーのもとへ行った。そこで、

天界(かみのよ)の楽しみに心を向けて求めよ」

 と、勧めた。

 悪魔をちらりと一瞥(いちべつ)したウパチャーラーは姉と同様、(うた)によって答えた。

「神の世の楽しみも、(けが)れに染みて、悪魔(まがかみ)の支配に降るなり、げに(いまし)めの世や。

 世はすべて燃え、世はすべて(けむ)る、世はすべて炎吹き、世はすべて震う。

 震わず動かぬ所、世の常人(つねびと)のいたらぬ所、魔の手の伸びざる所、そこにこそ、我が心、安けく憩う」

 斥けられた悪魔は、今度はシースパチャーラーのもとへ現れた。

(そなた)如何(いか)なる道を楽しむか」

 悪魔の問いに彼女は、

如何(いか)なる道も楽しまず」

 と答えてから、その理由(わけ)を歌い示した。

御仏(みほとけ)の道のほか、異見(ことつみかた)の道喜ばず。

 (さとり)まことにたぐいなく、悪魔(まがかみ)払いて(すべ)てをのがれ、なべてを()(たま)御仏(みほとけ)、世尊は我が師、我はよろこべ御教(みおしえ)えを」

 揺るぎない心の(さま)を見せられて、悪魔は彼女たちから去っていった。

 一方、マハーカーシャパは女性たちの僧伽が出来ると、妻のバッダー・カピラーニーを呼び寄せて共に(みのり)同朋(なかま)とした。

御仏(みほとけ)の後継であるカーシャパは前世を知り、また天上と地獄とを見た。そののち煩悩(けがれ)を滅ぼし尽くし、(さん)(みょう)[宿命通(しゅくみょうつう)天眼通(てんげんつう)漏尽通(ろじんつう)]をそなえた(まこと)の婆羅門となった……」

 後にバッターは詩句によってかつての夫カーシャパの徳を(たた)えた。互いを深く理解している彼女とカーシャパとは求道の仲間というだけでなく、枕を交わしはしなかったが、魂の半身ともいうべき間柄であった。

 そして祇園精舎が建立された際、仏陀の教えを聴いて感激したパセーナディ王の妹サクラーもまた、女性の僧伽が出来ると同朋の一人となった。

 彼女たちのように初めから道を求めて弟子となる者だけでなく、人生の辛酸をなめて仏陀のもとへたどり着いた女たちもいる。

「わたしは一人娘で、可愛がられ、喜ばれ、慈しみをうけました……」

 このように過去を述懐するイシダーシーはウッジェニー市の富商の娘であった。ところが嫁いでから彼女の不幸が始まる。どれほど尽くしても夫に疎まれ、三度結婚したが三度とも不縁となった。絶望した彼女は死ぬか出家するかと思いつめていたときに、ジナダッターという比丘尼が彼女の家を托鉢のために訪れた。この導きによってイシダーシーは尼となった。

 また、その名の通り蓮華の花のように美しいウッパラヴァンナー[蓮華(れんげ)(しき)]は、初めの結婚に破れ次に嫁した家で夫の連れてきた第二の妻が先の夫との間にできた我が娘であると知り、俗世を棄てた。

 

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