侯爵
「バニル様、こちらも何とか倒せました。」
ジークさんは2人に手こずっていたが何とか倒したようだ。倒された二人は胸に大きな傷があり失神していた。まあ、そこまで深傷ではないので死にはしていないであろう。
僕のほうもできるだけ殺さずに戦ったのでまだ息がある。ほとんどは炎によるやけどで倒れている。ほかは僕が剣で腕を切り落として、痛みで失神しているものだ。まあ、僕の『リカバリー』で全員治せるであろう。
「まず、侯爵家の手当てから行うので、ジークさん、手伝ってください。」
僕がそういうと彼女はうんとうなづいた。
見たところ結構重症だ。戦っていたと思われる男3人は結構重症だ。子供の2人の方も骨折をしていたり、腕があらぬ方向に曲がっていた。
「リカバリー」
僕は一人一人リカバリーをかけた。もちろん成功はしたが、まだ眠っているようであった。まあ、仕方がないであろう。
「ジークさん、次に盗賊を手当てしますので、手当したらしっかり縛ってください。」
「えっっ!あ、はい。」
ジークさんは僕が盗賊を手当てすることにびっくりした。確かに彼らは人を殺そうとしたり窃盗をした。しかし、独断で裁くわけにもいかない。よく問題になるのがスパイダーマンだ。あの話は第三者である主人公が裁きを与える話で、これは問題にもなっている。実際今、僕は第三者ではないのでいいのだが、まあ、罪を償って反省させることにする。
「リカバリー」
僕は盗賊に治癒魔法をさせていった。やけどしたものの肌はきれいになった。手を落とされたものは手が元に戻ることはないが、傷は元に戻る。
「よしこれでおっけいだ。」
「バニル様、この者らはどうしますか。」
「治安管理局に連絡して、彼らに任せることにします。」
治安管理局とは、この国の警察庁みたいなものだ。もちろんこの国、というかこの時代の治安が悪いので治安維持が全然進んでない。それでも、法律は現代日本の刑罰より重いのである。
「では、警備隊を呼んできますが、バニル様はどうしますか。」
「僕はこの人たちの看病をするのでジークさん一人でお願いします。」
「わかりました。一応、盗賊どもは身動きが取れないよう、きつく縛っているので安全かと思われますが、もしもの時は自分の身を大切にしてください。」
そういってジークさんは馬車を走らせて言った。まあ、基本的に何も起きないであろう。することもないし、バイタリティを増やす訓練をする。
「おいてめえ、この縄ほどきやがれ。」
1時間すると傷が浅い盗賊がおきた。まあ、何もできず吠えているだけである。僕は彼の言葉を無視し、訓練を続ける。しかし、まだ、侯爵家と思われる人は起きていないようであった。
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しばらくすると、馬車がたくさん来た。大群といってもいい。馬車は10台ほどで、騎兵が20人以上いる。まあ、侯爵家と聞いたらこんなに来るのであろう。しかし、考えてみれば、どうしてこんな子供らが森の奥に行ってしまったのであろうか。
「バニル様、ご無事ですね。良かったです。」
馬車が着き止まると、真っ先にジークさんが僕のところに来た。その後続々と騎兵隊が馬を下りている。馬車からも何人か出てきたようだ。その時であった。
「おお、君がバニル君かね。」
貴族の服装をしたものが出てきた。相当偉い貴族なのであろう。執事を10人ほど連れていた。男は周りを見渡すと、急に驚く表情になる。
「おい、ユリアとダグラス。大丈夫であるか。」
彼は横たわる子供二人を見るとそう呼びかけ、子供らのもとへ向かった。
「彼女らは大丈夫です。リカバリーをかけたので時期によくなると思います。」
「そうであったか。取り乱してすまないな。ニコラスという。今回は世話になった。」
彼はそういうと僕に頭を下げた。ニコラスで侯爵ということは、カルム王国に面するニコラス領の領主であろう。そこから考えるに、子供らは王都からニコラス領に帰るところであったのと考えられる。理由は、ハップンベル領から王都に行くにはニコラス領を通るからだ。
ニコラス侯爵は三大名家のひとつである。カルム王国はこの国と友好的な国であり、ニコラス領はこの国と貿易する商業町であるのだ。
「ニコラス侯爵でありましたか。これは失礼しました。」
「よい、こちらが助かったのだ。そう固くなるな。この子らは、国立中学の受験での帰り際でな。私は執政のため王都に残っていたため、2人だけ先に帰らせたのだよ。」
ニコラス侯爵は、執政官でもある。主に貿易や商業の政治に関して執り行っているのだ。しかし、この子らも試験を受けているとは。ということは、このダグラスという子はもしかしてエイリーさんの言っていた凄腕の剣士であるのかもしれない。
「そうでしたか。実は僕も試験の帰りでして、ちょうど通りかかったのです。」
「そうであったか。そう、君にはお礼がしたい。うちに一緒によって行きなさい。」
ニコラス侯爵は僕に立ち寄るよう要求した。もちろん早く帰りたいし、お礼も別にいい。しかし、侯爵のご好意を断るのは失礼であるし、ダグラス君もちょっと興味がある。
「わかりました。」
「よし。お前たちは、このものどもを保安にひっとらえろ。あと、うちの護衛を馬車に乗せるのを手伝ってくれ。」
彼がそういうと子供ら2人を抱えて馬車に乗った。僕もジークさんの馬車に乗る。
「ジークさんよろしくお願いします。」
僕らの馬車は侯爵の馬車に続いて走り始めた。
「今日中に帰れるであろうか。」
【次回】8月13日




