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01-25:【閑話】レオナの休日

 こういうの良いな、と思う。

 女友達と店を冷やかして歩いて、休憩がてらお菓子を食べて――なんて休日を私は過ごしたことがない。そもそも女友達がいないんだから仕方がない。闘技士だった頃、周りにいたのは大半だったし。


 冒険者になってからも女友達が出来た記憶はない。

 いや、誘えば遊んでくれる人は居たと思う。だけど、私をレオ様と呼ぶ子達と遊ぶのは息苦しくて嫌だった。彼女たちはありのままの私を見て好きになってくれたわけではなく、私の外見から「こうあるべきだ」っていう理想を重ねて見ている気がするから。


 自分で言うのも何だけど、顔は良い部類に生まれたって事は分かっている。

 女としては魅力的じゃないだろうけれど、男に生まれていたら人生楽しかっただろう。闘技士時代にはこの顔も使ってファンを獲得していたから恨んじゃいないけど。ただ、外見から中身を想像されて、勝手に失望されるのが嫌なだけで。


「レオナ? 大丈夫ですか?」


 腹筋のトレーニング方法なら何パターンも言えるけれど、お芝居や音楽の話も、人気のドレスメーカーの話にも詳しくない。誰と誰が惚れあっているの浮気しているだのって話にも興味がない。浮気するくらい体力有り余ってんなら筋トレでもしろ、くらいの感想しか湧かない。


 そんな私と話しても彼女たちは幻滅するだけだろう。

 残念な中身を曝け出しても普通に接してくれる相手は、私にとっては貴重でホッと出来る存在。馬鹿だの脳筋だの言ってくるザイードとフレッド先生とか、多分私に何も望んでいないだろう隊長とか――今のパーティに会えて良かったなと思う。


「うぅん、何でも無い。パンケーキの味で迷っちゃって」


「ですよね! 迷いますよね! 私もベリーソースとチョコソースで悩んでいる最中なんです」


 最近一緒に動くようになったリアも、ホッと出来る一人。

 頬を染めながら食い入るようにメニューの絵を見つめている姿は、何ていうか普通。よく見れば素材は良くて可愛い顔立ちなんだけど、素朴な小動物みたいな雰囲気がそれを帳消しにしているタイプ。


 その普通な外見と、中身は普通じゃない部分があるっていうアンバランスさ。失礼な言い方ではあるけれど、自分と共通点があるような気がして嬉しくなる。仲間だってだけじゃなく、成人してから初めての女友達になって欲しいと思っている。


「じゃぁさ、半分ずつにするのはどう?」


「おぉぉ! レオナ天才じゃないですか!」


 満面の笑みで注文するリア。

 店員が微笑ましい目を向けているのも仕方がない。

 リアは若いというか、幼く見えるからね。年配の方みたいな格好をしている私と並ぶと親子くらい年が離れて見えるかもしれない。ヘロン亭で初めて会った時は私も十五歳になったか怪しいと思っていたくらいだし。


「ウサギが高値でウハウハですね。美味しいものも食べられるし」


 口いっぱいにパンケーキを頬張る合間にリアが言う。

 普通の女の子なら口にしない言葉だろうけれど、リアも私も冒険者だ。もう少しで開催される春祭りは卵とウサギ系魔物の肉を使った料理が目玉。特例として値段が上がっている今はウサギを狩りまくっている。


 私達だけの時は普段通り討伐依頼を受けるだけだったけど、リアが加わって話は変わった。狩りの方法を指南してくれるお陰で納品数が増えて、日帰りで出来る低級魔物の納品依頼のわりに良い収入になっている。

 “魔物狩り”は常に討伐依頼を受けて動き回っているわけじゃないから、私達――特に私とザイードにはありがたい収入だ。


「おかげさまで。半端な日も稼げて助かってるよ」


「いえ、一人じゃ出来なかった方法ですから。一緒にやらせてもらえ助かっているのは私の方です」


 ウサギ系とは言え魔物だから、狩り尽くすってことはない。その日全てを狩り尽くしたと思っても、数日経てばうようよ湧いてくる。それが魔物だ。

 E級魔物であれば一般人でも倒せるから、湧いても脅威とは言われないけれど。


「私とザイードの二人じゃウサギ狩りに参加しようと思わなかったよ。どうせ一匹、二匹しか狩れないんなら近くの森で良いやって。先生はもちろん、隊長もお願いしないと来なかっただろうしねー」


 嘘は言っていない。

 普通の女の子に見せかけて、リアの狩りの腕前はすごいの一言。

 私達よりもずっと魔物に詳しいし気配察知にも優れている。あの隊長が驚いていたから相当なものだろう。私とザイードでウサギ狩りに行くと言っても来なかっただろう隊長が、リアの様子見と言いつつ何度も参加しているくらいなのだ。


「……にしても、春祭りってそんなにウサギ肉必要なんですか?」


「家でも屋台でも飯屋でも、どこでも使うからねー。そうそう、料理だけじゃなく卵とウサギの形をした小物も集まるから見て歩くだけでも楽しいよ」


 残念がられるポイントでもあるけれど、私は甘いものと可愛いものが好き。小動物からぬいぐるみ、細々したアクセサリーまで幅広く。

 商業が盛んな街だけあって、そちらの意味でもアルカクのお祭りは楽しい。春祭りであれば定番はウサギのぬいぐるみと、装飾を凝らした卵の殻。


 そのほか幸運のお守りになるウサギの尾のアクセサリーもあれば、春っぽい雰囲気のある布まで様々なものが売り出される。男は食い物、女は飾り物の販売を楽しみにしている人が多いんじゃないかなと思う。


 一緒に街を歩いた感覚だと、リアも可愛いものや飾り物に興味がないわけではないらしいから――。


「そっか、これだけ大きな街ならお祭りも盛大ですよね。ウサギの串焼きとかパイ、食べたいですね!卵は目玉焼きかな、オムレツかな? あっ! 卵を使ったものなら焼き菓子系も入りますよね。えへへへへ」


 残念ながら食い気が圧勝しているらしい。

 パンケーキを食べながら、更に別の食べ物を想像して完全に頬が緩んでいる。食べ物も色々あるし、普段は敷居が高い店も屋台売りしたりするからね。

 残念系女子同士、食い倒れの旅でも良いかもしれない。




 その後も仕事の話や最近倒した魔物の話なんかをして解散。

 リアはヘロン亭の手伝いに入って、私は自主トレーニングだ。


 ちょっとした贅沢が出来るくらいの稼ぎを目指して程々に働こう。

 そんな緩いモットーで動いている“魔物狩り”ではあるけれど、冒険者であることには違いない。仕事をしていない時でも体が鈍らないようにすべきことはある。

 聞いたことはないけれど、ザイードや隊長だって休みの日は食っちゃ寝している訳ではないはず。フレッド先生は謎だけど、多分何かはしていると思いたい。


「おう、お帰り」


「ただいま。ちょっと庭借りるね」


 私が住んでいるのは自由区にある元闘技士夫婦の家――にある離れ。

 アルカクに来てすぐの時は宿屋暮らしをしていた。けど、女の子が宿屋の前でウロウロするようになって苦情を言われて。困ったなーと思いながら酒を飲んでいた時に、家主夫婦が声をかけてくれたのでお言葉に甘えている。


 お互いに闘技士として舞台に立っていた時期が違うから、現役の同業としてお会いしたことはない。けど闘技士は真っ当な稼業じゃない、信用できないって目で見る人もいるからね。仲間意識があって、自分にできる限りの手助けをしてくれる人は多いんだ。

 しっかり家賃は払っているけど、ありがたい事には違いない。


 もう一つ住まわせてもらって助かっていると感じるのは、()()()()()()()()があること。剣を振ったり、筋トレしたりしても誰にも気にされないで済む。家主も前職が闘技士だから気にしてない。


 筋トレしながら考え事をするのは良い。

 黙って考えてると、思考は悪い方に悪い方に行っちゃうからね。


 スクワットをしながらリアのことを考える。

 最初は見た目通り地味目な子だと思っていた。頭に葉っぱと花をつけて森から出てくるような天然さはあっても、そんなに活発なタイプじゃないんだろうなと。


 その印象は何度か一緒に狩りに行ったり、お菓子食べに行ったりしているうち変わった。根っこの部分は活発な方なんだろうなと思う。

 ラボルって所で上手く行かなかった事とか、私達への接し方が分からないから、一歩引いているって言うのが今の印象。この短い期間でも話しやすくなったし、よく笑うようになったから間違いないはずだ。


 リアは冒険者としても人としても謎が多い。

 自分の話をしたがらない冒険者ってのは珍しくない。私だって闘技士を辞めた理由は聞かれたくないし、聞かれても話さない。だけど私やリアくらいの年齢なら、冒険者になった理由とか目標とかを意気揚々と語る方が普通でもある。訳アリ冒険者って、もうちょっと年齢が上だから。


 リアは山での暮らしやラボルという田舎町のことはチラホラ話してくれる。言葉を濁すとすれば、育ててくれたという祖母や両親についての部分だろう。実際に突っ込んで聞いたことはないけれど、何となく勘で分かる。


 狩りの方法や弓を教えたのが祖母(ばあ)ちゃんだって話は聞いた。

 どうやって育てられて今のリアがあるのか――気にならないと言えば嘘になる。あのリアを育てた祖母ちゃんって、絶対只者じゃないはずだし。


 もちろん、無理やり秘密を暴き立てる気はない。

 話したくない部分に土足で踏み込まれるのがどれだけ面倒臭くて、嫌なことかは私も知っている。それに、魔物にやられて両親は死にました、なんて話を聞き出してしまってもお互いに嫌な思いをするだけだろう。


 同じ理由で“魔物狩り”のメンバーの過去も、ぽつりぽつりと語られる断片的なものしか知らない。私が闘技士を辞めた理由だって誰も知らないだろう。強いのに冒険者として大成するつもりの無いことから、訳アリだなと察しが付くくらいだ。


 パーティとして組んで動く中で自分に害がなければ良い。

 そう思って一緒にやってきたし、実際に気軽で居心地が良かった。

 だけど、親しくなるほどリアも他のみんなも、今よりも自分のことを話してくれるようになったら嬉しいと思うようになった。

 仲間に語れるようになれば、自分の中で区切りがついた証でもあるのだろうし。

これで本当に1章終了です。お読みいただきありがとうございました。

誠に勝手ながら、明日9/2より投稿時間を22時に変更させていただきますm(_ _)m

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