ねぇ?冗談でしょ?②
アスガルズ王国…人間界での通称、魔国。
その首都『ギムレー』もまた、人間界においては魔都と表される。
けれどそんなこと知ったことではないと言うかのようにギムレーの都は活気に溢れ返っており、人(と言っても魔族だけだけどね? ……正直な所、僕には狂化と魔力の許容範囲量以外の違いはわからない)もまた相当に多かった。
「へぇ…意外に活気、あるんだな…」
「そりゃそうだよ。ここ、王都だし」
おのぼりさんもかくや、ってな具合にきょろきょろと町を見回す雪杜の頭を引っぱたきながら町を歩く。
………あ、ちなみに私服ね? いくら城下町で軍本部とかが近いとはいえ、ほら…目立つでしょ? やっぱり。それに、無駄な威圧感与えちゃうって言うのもあるし…城下の、と言うか各地にある町の治安維持はアスガルズ王国軍警邏隊――――――『黒の縄』に一任されている。
まぁ、対立なんかは表立ってはないけど…小規模のレベルでは若干仕事内容が被っているせいか張り合って足りするし、貴族出身のやつらの中には何も知らないくせに平民階級出身やさらに下からの出身が多いってだけで最初っから馬鹿にしてかかってるバカも一定数いる。でも、不思議と『黒の盾』ではそういう話はあまり聞かないんだよねぇ…教育の差なのか持って生まれたものの差なのか…はぁ…
……まぁ、話を戻すけど、そういうわけで『黒の剣』と一発でわかる軍服でノコノコ出歩くわけにも行かないから私服にわざわざ着替えたのでした。まる。
まぁ、『黒の縄』のトップさんは僕らと同じでエルド側らしいし…セイザークさんにも一回ぐらい挨拶しておいて損はないって言われてたしね。ま、いい機会でしょ。
「あ、すいませーん! これと、これと…あー、こっちのも!」
「はいっ、毎度あり! 兄ちゃん、細そうなのに結構食べるねぇ…」
「へへっ、結構食べないとすぐガス欠になっちゃうんですよ、職業柄!」
「へぇ…兄ちゃん、傭兵さんかい? そう強そうに見えないけどねぇ…」
「ひっでぇよ、おばちゃん!?」
……そんなことは絶対考えてないだろう発案者は出店の屋台で店員のおばさんのからかいを真に受けて結構ショックを受けている。
………え、なんなの? あいつ、バカ?
―――――――――いや、問うまでもなかったか…それ以外認めないし、認める気もない。事実だしね。
え? 流石に酷くないかって?
あー…まぁ、普段の僕なら確かにここまでは言わないだろうさ。……たぶんだけど。
でもね、誰だってこの状況を見たらそういうことを言いたくなると思うんだよね…
「――――――だっから! このサンドイッチは俺が先に目ぇつけてたんだ!」
「はっはっはっはっは。しらねぇな…買ったモン勝ちだろ、こういう場合はさ」
「………雪杜、何やってんのお前…?」
そう、自分の連れが「どっちが最後に残ったサンドイッチを買うか」、なんていうしょーもない上にどーでもいい理由で往来のど真ん中で言い合い…しかも子供のケンカかと思うくらい低レベルなそれを始めたとしたら………ね?
「どーでもよくないししょーもなくない! すっげぇ美味いんだぞ、ここのサンドイッチ!」
「そうだそうだ! 坊主、お前食ったことねーだろ!? 一度食ってみろ。そしたらわかるから!」
こっちに来てからと言うもの…生活のバランスが崩れたからなのかそれとも『能力』の弊害なのか、どうにもこうにも食に関心がわかない。
まぁ、もともと気にする性質ではなかったんだけど…うん、最近じゃ最長一週間、間食だけだった時もあるね。
まぁ、まともに食事する気も失せる程すっごく忙しかった、ってのもあるんだけど、まぁ…なんでかは悟って。
「初瀬…ホントお前、最近ワーカーホリックなんじゃね?」
「ん? わーかーほ…? んだそりゃ?」
「仕事中毒って意味。仕事仕事、って仕事のことしか考えらんなくなんの」
「え、何それ怖い」
っていうか、さっきまで喧嘩してたのに共通の話題ができたとたん仲良くなるってどういうこと??




