表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔王軍の軍師と将軍物語(仮)  作者: 神那 悠樹
―Digressione:断章―
38/59

へぇ、これは…ねぇ?

執務に疲れた体に鞭を打って自室に戻る。


――――――――あの御前試合からもう一年近く経ったが、あの無の……ごほん、総司令官殿はまだお冠(おかんむり。怒っていること)らしい。



ネチネチネチネチと、地味且つ僕たちだけではなく『黒の剣』…ひいてはアスガルズ軍全体に被害がでるような立場を弁えてるとか到底思えないような嫌がらせを連発していた。

…そのうち二割は嫌がらせじゃなくて、本気で失敗していたけれども。


普段はもっと早くできるんだけど…いろいろと重なってこんな夜更けになってしまった。




「あー、疲れた…」




椅子の背にポイっと何時も羽織っている黒いローブを脱ぎ捨て、中に着ているアスガルズ軍下士官のダークグリーンの軍服の襟と首元を緩め、ベッドに腰掛けて一息つく。


……本当は、僕が着ているこの軍服って僕にとっては正式なものではない。

一応はこの国のトップの子飼いだし? エルドも『王直属の部隊』って言うのをもう作っていたりする。



僕と雪杜とか、ユーリさんやローデヴェイグさんみたいなエルドの子飼いの本当の軍籍はそっちなんだ。ユーリさんの『黒の縄』隊長とか、ローデヴェイグさんの『黒の盾』団長ってのは兼任してる、ってことになる…予定だ。


―――――――何故予定かって? まだ秘密事項だからだよ…まだまだこの国にはエルドの邪魔が多い…その排除のために水面下で潜入したりしてるのにそんなん発表したら一発でばれるじゃん? まぁ、そんなに数がいないから苦労してるんだけど…



まぁ、そんなのは今はどうでもいいんだ。




「ところで、さ…誰? いるのはわかってるんだ…さっさと顔を見せたら?」




明かりをつけていないから、当然のごとく暗い部屋。

窓から満月に近いのか…それなりに明るい月明かりが入ってくるから余計に闇が深くなっているその場所に僕は声をかける。



――――――――闇が、揺らめく。




「………まぁ、聞かなくても大方のことはわかっているから、『誰』とか『何をしに』とかははっきり言ってどうでもいい。

………でも、ね?」




そっと枕の下に忍ばせている短剣の柄を握る。

…………あまり得意じゃないんだよね、これ。でも、他に護身用に使えるような武器ってないし。


ただ、表面だけは余裕たっぷりに笑ってみせる。

――――――実際余裕がないわけじゃないしね。ただ、無傷で勝つ自信がないだけで負けるようなことはない。




「僕、僕の貴重な睡眠時間を邪魔したヤツには誰であろうと容赦しないことにしてるんだ」

「――――っ、死ねッ!」




暗がりから飛び出した黒装束の、体格と声からして男は僕に懐に隠し持っていたらしい『ソレ』を向ける。

次の瞬間、数メートルという近さからかなりの速度で僕に迫る今となっては見慣れた蒼い色をした閃光。


――――――――氷雪系の魔力だった。



この距離で、ここまでの速さ…雪杜ならともかく、よけるのは僕では到底無理。




「―――――――――ッ!」




僕の目の前で閃光は輝きを増す。魔力は確かに魔術をする上で素材となる大事なものだが…それだけでも、十分な攻撃力を持つ。そう、僕の命を奪うことなど容易いほどに。




「―――――……なぁんて、ね。甘いよ!」




僕が展開した魔術障壁にぶち当たり、その魔力の働きは吸収される。

………そう、その働きすべて・・・・・・・が。




「何……ッ!?」

「意外と知らない人多いんだね、この対処法…」




男は驚いているけど、理論としてはそう難しくない。

―――――水の中に水滴を落としても、波紋が立つだけで何も変わりはしないだろう? ただ、普通なら「壁」としての性質を与える所を、与えなかった…ただそれだけのこと。




「――――――絡め取れ、『カナーテ』!」




僕の呪文スペル・ワードに反応して虚空からどこからともなく鎖が現れ、勢いよく黒尽くめの男に巻きつく。


…あ、これはこの間の祝勝会の後セイザークさんに貰った魔道書の中にあった魔術だよ。

なんだっけ…召喚魔術、って言ったかな。帰る手立てになりそうだから目下研究中だよ…まぁ、忙しさやらなんやらで難航してるけどね…




「副部隊長っ!? いかがなさいましたか?」

「曲者だよ―――――――口を割らせてから…できる限り『丁重に』送り返してやってよ」




騒音を聞きつけた夜衛兵は僕の部屋にいた暗殺者を引っ立てて去っていく。

さて……雪杜にはばれないようにしないとね。




「それに………いいものも手に入ったしね?」




男が落としていった、『ソレ』を拾い上げ、僕は笑った。


大して意味のないお話ですが、[拾い物]には大きな役割があったりします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ