そう、じゃあ一回やってあげようか?
新たな次のステップはそう早くはやってこず、少しやきもきしていた時だった。
「……武芸大会!?」
「はい、陛下がご提案になったそうで…」
「だからって…半月前に言い出すなよ……あのバカ」
僕はガクリと肩を落とす。
なんか、いつだったか似たような会話をした気がする。
できれば今回は変なてだしがなきゃいいんだけど…
「…いえ。陛下がご提案なされたのはかなり前だそうです」
シエルの申し訳なさそうな声に嫌な予感がする。
「……まさか、また…なの?」
「はい…すいません、もっと早く気づければよかったのですが…」
「いや、いいよ」
あの演習以来、総司令官殿の中でのシエルの株は駄々下がっているらしい。
まぁ、僕らに恥かかせるつもりが自分が大敗しちゃったんだもんね…計画漏らしたやつ、つまりシエルに怒りの矛先が向いたみたいだ。
自分のせいだろが馬鹿が、とは思ったけど言わない。
「にしても、ずいぶんとコスい嫌がらせだなぁ…」
「シュビール家はここ数代うだつが上がらず新興貴族や栄誉貴族に負け続けになっていましたから…総司令官殿も今の地位についてはいますが本当は『黒の盾』に就任したかったそうですよ」
「いや、それは無理でしょ」
アスガルズ軍は大きく三つに分けることができる。
一つ目は警邏隊。あっちで言う警察と自衛隊と消防が混ざったようなもので主に町やアスガルズ国内の平安を司る部署。通称『黒の縄』
二つ目は近衛騎士隊。その名の通り王宮や王の守護を司る部署。通称『黒の盾』
最後の三つ目が僕たちが属している総統部隊。警邏隊や近衛騎士隊とは違い、守るためでなく戦うための軍隊。通称『黒の剣』
――――――で、コレは正直機密事項にんるんだけど…
警邏隊と近衛騎士隊のトップはもうすでにエルドに忠誠を誓っている。
不穏分子がいないわけじゃないが、ここよりかはずっと少ない。
反王派…というより、エルドに権力を持たせたくない貴族派のお貴族様達はここを死守しようとしていて、親王派だったり言うこと聞かなかったり使えなかったりする奴等を一緒くたにこの第七部隊に封じ込めてたってワケ。
でも、その目論見もそういうことに長けていない総司令官殿のお陰で打ち破られたんだけどね。
魔王陛下が送り込んできたことで警戒されているだろう僕たちをいかに第七部隊と繋がれるかっていうのが問題だったんだけど…何の策も弄さずに繋ぎがとれちゃったんだ。
総司令官様様、ってトコだよ。手加減なんてしてやんないけどね!
「まぁでも…ちょうど良かったよ」
シエルが動かした駒を見て、僕もまた駒を動かす。
ちょっと書類の息抜きにシエルとチェスをしてたんだ。今のところ状況は膠着してる…だけど。
「コレで状況は変わる…変えられる」
コトリ、と黒い石でできたポーンを敵陣の一番奥深くへと動かす。
「――――――――ステルメイト」
騎士に変わった歩兵は王の逃げ道を全て塞いでいた。
―――――――NG集
「……って、副隊長! ステルメイトにしてどうするんですか! 引き分けじゃないですかぁっ!?」
「えーだって…勝つのも飽きちゃったし? 余興的な?」
「真面目にやってくださいよ!」




