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魔王軍の軍師と将軍物語(仮)  作者: 神那 悠樹
―soldatesca:入隊―
21/59

…覚悟、しといてね?


「――――なー、知ってるか? ギルベルトー」

「………なんだ」




第七部隊の待機室でぼんやりと思い思いにすごす数人の中、炎のように真っ赤な髪をした若干チャラそうな青年が不意に隣にいた友人に向かって声をかけた。




「今日付けで上司がまた・・来るらしいぞー」

「………そうか」

「でさでさ、それが噂の『陛下御寵愛』の人間なんだってー」

「…………ほう」




先ほどまで読んでいた本から顔を上げ、その黒髪の生真面目そうな青年――――ギルベルト・シェーゼルは普段から表情が顔に出ずらい彼にしては珍しく興味を露にした。




「おお? 流石のギルも気になっちゃう?」

「……いや、だがその『上司』が今までのようなものではないならば、それでいい」




そのとき、静かに待機室の扉が開きお茶のポットと茶菓子を携えた、淡い金髪に緑色の眼のこの二人よりもいくつか幼い少年が入ってくる。




「あれ、何のお話ですか?」

「おー、お茶汲みご苦労さん、シエル。

いやー、な…今日また新しい上司が来るって話聞いてさぁ…で、噂の『陛下の気紛れ』でこちらに来た人間がそうらしいんだよ」

「―――――どうぞ、レインバルトさん。

うーん、人間、ですか…私は陛下がお気に入りになるほどなら相応の実力はあるんじゃないかな、って思います」

「………シエル、陛下のこと尊敬してたな」

「~~~~っ、だってかっこいいじゃないですかぁ!」




照れる少年――――シエル・レウス・アウグスイールを片や寡黙に、片や騒がしく彼が淹れたお茶を片手にからかい倒す様子は容姿も性格もどこも似ていないというのに、まるで兄弟のようで。

この光景こそが、「問題児集団」と称される第七部隊の小隊長達の日常だった。



――――――――だが、そのとき。





「……ふぅん、ここが第七部隊」

「意外と普通じゃね? 黒板消しでもトラップで仕掛けてあるのかと思った」

「………そこの雰囲気ブレイカー、空気読めって何回言えばわかるのかなぁ?」

「すいません以後気をつけます」




第七隊の小隊長は全て揃い、それぞれの隊員ではノックもなしに待合室を空けるような無礼者はいない。


そう、ありえるとすれば…――――――




「えっと…オレは雪杜・ティーロ。聞いてると思うけど…一応この部隊を任されたんだ。よろしくな」

「僕の名前は初瀬・アウトゥンノ。一応、コイツの副官らしいよ。とりあえず、雑務なんかはほぼ僕が決済することになるだろうからその時はよろしくね」




自己紹介を始めた二人に三人は大なり小なり驚いた。(約一名、面白がっていたが)


―――――――今までの「上司」は着任してもこの待合室に足を運ばず、執務室に呼びつけてしていたからだ。

さらに言うと、今までの上司が一度も言ったことのない「よろしく」という言葉をごく平然と口にしたからでもある。




「それで、まぁ…最初に言っておきたいことがあるんだけど、いいかな?」




このアスガルズ軍では珍しい白い鎧を纏った少年―――――雪杜が遠慮がちに続ける。




「オレらにはエルド…陛下にどうしても叶えてもらわなきゃいけないことがある。それをしてもらうためにどうしても…軍功を上げなくちゃいけないんだ。そのためにも、お前達に協力してもらいたいんだ」




一般的な就任式とは遥かにかけ離れた就任の挨拶だった。

…それでも、雪杜の飾らない言葉は第七隊の小隊長の心に響いた。


まだ、完全に認められているわけではないが、少しは話を聞いてやろう、と思わせるくらいには。




「「「―――――はっ! 拝命いたしました」」」




――――――――後世のものは、こう語る。

この時より、アスガルズ王国の黄金期をその手で切り開いた将軍、雪杜・ティーロと、彼と王を影に日向に支え続けその采を振るった軍師、初瀬・アウトゥンノの伝説は始まったのだと。


だがそれはまだ、先のことである。





「――――――じゃ、がんばろっか。

因みに…あのバカ魔王から出された交換条件、『軍部の掌握』なんだよねー」

「「「………え?」」」




途端に凍りついた三人にとてつもない暴露をした「副官」を名乗った少年――――初瀬がくすくすと笑う。




言質げんちは取ったし――――まぁ、取らなかったとしても上官命令で従わせたけど――――よろしく、ね?」




――――――後にこの三人は語った。

「あれほど悪寒のする「よろしく」など、今まで一度も聞いたことがなかった」と。

三者視点で書いてみました。


次からは戻りますよー

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