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魔王軍の軍師と将軍物語(仮)  作者: 神那 悠樹
―soldatesca:入隊―
20/59

…ちょっと? 聞こえてるんだけど?

「あいつらが…らしいぞ」

「人間の…ガキ!?」

「陛下が連れて来たって言っても…いつもの変な気まぐれだろ?」

「人間ごときが……」

「うっわ、人間って初めて見たよ俺ー」




………僕たちのことはもうすでに軍の末端まで話が通っているようだった。

でも、なんっていうかなぁ……こう、「人間の身でありながら魔王陛下に気に入られ、取り立てられた」ってことになってる僕と雪杜を見る好奇とかなんとかの視線にさらされている今の状況はどうしようもなくむず痒かった。


え? なにで? そんなの一発魔術ぶちかましたくてに決まってる。

パンダか、僕らは。今なら見物料として一度黒コゲor氷漬けに負けといてあげるけど?




「初瀬、初瀬。手はまだ出しちゃだめなんだろ?」

「わかってるよ…っ!」




……おおっと、いけないいけない。

最近トリガーハッピーじみてきててヤだなぁ…

ま、十分理性でセーブできる範囲だし、気に障ることがない限り発動しない。




この数日間見て、教えられた結果、思っていたよりか政治の場ではまだ貴族が幅を利かせていたこの魔国―――――アスガルズ王国ではあったけれど、軍部はかなり徹底した実力主義だった。実力を見せれば従ってくれそうな人も全員とは言わないけど一定数はいるから…エルドの言っていた『軍部の掌握』はきっかけさえあればすぐにいける。

ネックなのは上層部に貴族がちょっと多いことだけど、たいてい次男三男なので実力でのし上がってきたのがほとんどだ(例外はあるが)。


正直なことを言うと、慣れない政治の場で貴族の狸どもを手ごまに取るにはそれなりの裏打ちされた地位が必要だったし…丁度よかった。




「話は聞いていると思いますが…本日付でこちらに配属されました、初瀬・アウトゥンノです」

「同じく、雪杜・ティーロです」




今の・・アスガルズ王国軍総司令官にエルドとセイザーグさんに指導してもらった礼をとる。

……本当は、有力貴族の子息かなんかでたいした軍功も上げてない使えないヤツに下げる頭なんてないけど、今は仕方ない。



――――――ん? ああ、苗字? ああ、これね…僕と雪杜はこれでも一応、望んでなんかいないけどラーシア王国の上層部に召喚された「勇者」だ。


その勇者である「秋里 初瀬」と「的場 雪杜」がアスガルズ王国で従軍しているとなったらラーシアでもアスガルズでも、混乱は避けられない。


だから、偽名をエルドが考えてくれた。

「秋里」と「的場」は…最低ラーシアを滅ぼすまでは封印しておかなくてはいけない。


……………ちょっとだけ、寂しいけどね。




「ハンッ、人間ごときが由緒正しきシュビール家の血を引くこのぼくの前に跪いているとはいえ出れたことを光栄に思うことだね! それにこのb(以下、自分と自分の家系がどれだけの血統を持っているかの自慢につき略)…ふぅ、そういうことだからせいぜい陛下に飽きられないように尻尾振りの練習でもしているがいい」




………ちょっとマテ。感慨に浸ってて半分くらい聞き飛ばしてたけど僕たち、着任の報告に来たんだよ?

なのにお前は長々と語っといてそれが全部私的なものってどういうことだ!?

しかもちょっと待ってよ、何帰ろうとしてるの!?




「――――――おっと、忘れるところだった」




出ていき様に告げられたその「命令」に思わず笑いたくなった。

なにに、だって? そんなの決まってる。




「君達には第七部隊を任すことにしたよ。第七部隊はどうにも問題児が多くてね…だいぶ持て余していたところなのだよ。

かの陛下に見初められる・・・・・・ほどの実力ならばさして問題はあるまい?」




さっきの様子を見るに、僕らのことを彼はこれでもか、というくらい侮っている。


………いいじゃん、面白そうだ。

貴族の言う「問題児」。上手くすれば僕らのいい部下になってくれるかもしれない、でしょ?



要するに、だ。

僕と雪杜のことを好奇の眼で見るのはいい。でも、侮るのはやめることをお勧めしよう。


因みに…ここ来るまでに色々いってくれてたやつら。

顔はもう覚えたから後でじっくりゆっくり所属先割り出してやるから、そのつもりで。

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