在りし日の思い出① Side H
僕と雪杜の関係はかなり古い。
親同士の仲が良くて、家も隣ではないけど近くて。
生まれる前からの付き合いってヤツだ。
でも、僕が雪杜を本当の意味で「認めた」のは、ほんの数年前だったりする。
正直なことを言うと、僕は雪杜を馬鹿にしていた。その行動の全てが理解不能で、理に適っていないと思っていたからかもしれない。(今でも理に適っていないときもあるけど)
「何でこんなこと、するんだろう。意味ないのに、怒られるし迷惑がられるだけなのに……無駄なのに。馬鹿じゃないの?」
こんな感じで、その行動を捉えていた。
――――――そう、僕たちが中学二年生の頃にあった、あの時まで。
「なに、雪杜…また敵わない喧嘩したの?」
「………しかたねーだろ。見てらんなかったんだから」
「だからって……はぁ、お前は自分の辞書に「見過ごす」だとか「賢く生きる」っていう言葉をインプットしたほうがいいんじゃない?」
「…………うるせぇ…」
「はいはい。で? 今日は誰と、どうして喧嘩になったわけ?」
その頃、雪杜は喧嘩に明け暮れ怪我ばかりしていた。
…不良とか、そういうわけじゃないのに、だ。
「先輩が…後輩の女子に悪戯してたんだよ。質の悪い」
「ふぅん…でボロボロにされた、と。ざまぁないね」
僕たちの通っていた中学校は公立だったけど、なぜか僕たちの一年上の学年だけやけに柄が悪かった。
……というか、馬鹿の集団? 全員が全員そういうわけじゃなかったけど、そいつらに萎縮して手も足も出なくて。
そんな中、そいつらに真っ向から反抗したのが雪杜だった。
「……初瀬、実は興味ないだろ」
「所詮他人事だからね。本の続きのほうが興味がある」
「嫌なヤツだな、おい」
「怪我手当てしてもらってる分際で舐めた口きくんじゃねーよ。傷口に消毒液ぶっ掛けるぞ?」
「すいませんでした、もう言いませんだからそれだけはやめてください!」
「チッ…仕方ないなぁ……ん、終わり」
「………さんきゅ」
「別にいーよ、僕を巻き込まなきゃ、ね」
雪杜は真っ直ぐすぎるぐらいに真っ直ぐだった。
僕とは正反対で、たまに雪杜の真っ直ぐさが眩しくて眩しくて仕方なくなる時がある。
そうなりたいとは思わないけどね。
―――――――この腐りきった世の中を生きていくなら、多少歪んで捻くれていた方がいいに決まっている。
雪杜のような真っ直ぐなヤツが生きるには、この世界は汚すぎるんだよ。
汚さってのは、綺麗なヤツを羨んでそいつも自分のところまで貶めようとするから。
だから、雪杜は今…孤立している。
「わかってるって、『秋里』」
「………ならいいけど。近いけど一応気をつけてね、『的場』君」
お互いの家とか、そういうところ以外では赤の他人。
それが僕と雪杜の関係だった。




