同じ青空、同じ地上
同じ青空、同じ地上
ふと仕事中に空を見上げたんだ。
6月にしては真っ青に晴れ上がった空だった。
初夏みたいな青空の下、小さな雲の群れを背に、大きな雲が空にぷかりと浮かんでいた。
最初に気がついたのは、大きな雲がものすごい速度で動いていることだった。
速いな、そう思った。
あの雲は急いでどこにいくのだろうか?
小さな雲の群れを取り残してさ。
そんなことを考えながら、大きなビルの間に立って空を眺めていたら、新しいことに気づく。
大きな雲の上にいる小さな雲の群れは、大きな雲とは反対の方向へと流れていたんだ。
大きな雲じゃなくて、地上からそびえるビルを基準に見ると、雲がどちらに動いているのかよくわかる。
大きな雲は西へ、小さな雲の群れは東へと流れていた。
ああ、同じ青い空にいるのにな。
私はそう思ったんだ。
小さな雲の群れが浮かぶ遥か上空と、その下を漂う大きな雲のいる世界は、風の流れる向きが違うんだろうな。
そして私はふと気がつく。
私自身、このぐるぐる回る地球に乗って、ずっと宇宙の同じ場所にいるわけじゃないんだって。
私はこの地面に立って、いったいどっちに流されているんだろうなって。
私はどこを基準に考えて、どこに流されているのかを決めるんだろうなって。
君がいる場所から私をみたら、流されているのか、流れに逆らっているのか、それとも、どちらでもなくここに留まっているだけなのか。
それともそのどれでもなくて、私はたださまよっているだけなのか。
いったいどうみえるんだろうなって。
そして、私が立っているこの場所からは、君が近づいてくるように見えるのか、遠ざかっていくように見えるのか。
それとも、私を探そうとさまよっているのか、それとも私のことなんてまるで見ちゃいないのか。
そんなことを考えて、ぽつんとビルの隙間に立って、見上げていた6月の青空。
2026年、おまけの追記
この文章の元となった光景を、やはり私はもう覚えていない。
でも、この文章の元となった青空と雲を見上げた場所を、私はまだ覚えている。
2021年に私が立っていた場所に、5年後の未来を生きる私は今も立つことができる。まったく同じ月の同じ日に、同じ場所に立って私は空を見上げることができる。
だけど……
2021年の6月に私が立っていた場所と、2026年に私が同じ場所に立っていたとしても、まったく同じ場所に立っていないことになることに、君は気がついてくれるだろうか?
え? 何を言っているか意味がわからない? だって悪魔は、同じ場所に立っているのだろう?
そうだ、地球上の同じ場所に私は立っているよ。だけど、地球は五年前と同じ場所にいない。太陽の回りを回り、太陽は天の川銀河の中心のまわりを回っている。つまり、私と君は、五年間という時間をかけて、宇宙の中を移動してしまっているのさ。
ずっと同じ場所にいるようで、宇宙という気が遠くなるような遥かな距離を翔けている。
だけど……
私と君は、五年もたっているのに、あいも変わらず、ここ、地球という場所に立っているのさ。
何もかもがうつろう宇宙で、地球という星では、なぜ何もかもがこんなに停滞するのか?
そんなことを、五年前の青空を書いた文章を読んで、私は思ったりしたんだよ。




