5・寝物語
イザベラはその晩に用意された、新婚夫婦用の部屋のベッドにも、昨晩と同じく早めに寝間着に着替えて、先に布団を被っていたが、やはりゲオルクは中々入って来なかった。
やっと入って来たとき彼は、花嫁が昨夜のように背も向けず、眠りもせず仰向けに寝て目を開け、自分の方を見ているのに、戸惑ったみたいだったが、やがて仕方が無いとでもいうような顔をして自分も服を脱ぎ、寝間着に着替えてベッドに入って来たが、やはり彼女の体に触れることも、声を掛けることもしなかった。
それでイザベラの方から、「私がお気に召しませんでしたが?」と尋ねると、彼は少し驚いたような顔をしたが、すぐに「違います、そんなことは」と返事をした。
彼女は尚も「誰か他に結婚したいような女性がいらしたの?」とも問うたが、彼はそれにも「いいえ、そうじゃありません」と、今度はやや声を大にして否定した。
そこでイザベラは更に突っ込んだ質問ー肉体的に或いは精神的に、女を抱けない身なのかと聞いて見たかったが、それは流石に彼を辱めることになるだろうし、はっきり答えないかもしれない。
そこで彼女は質問を変えて、「結婚そのものに気が進まなかったとか?」と尋ねると、彼はやや考えて、「そう言われてみればそうです、余り結婚はしたくありませんでした」と、意外にあっさり答えた。
それでイザベラも、「考えて見れば私もそうです、そんなに結婚がしたかった訳じゃないような気がします」と、半ば負け惜しみのように言った。
「でも姉たちもみんなそうしたし、私ももういい年で、若過ぎると言うほどでもないから、両親や周囲の大人たちに勧められれば、断る理由もありませんでした。貴男もそうでしょう?立場上、年齢上、結婚しない訳には行きませんよね」
「僕らの階級における結婚なんて、みんなそんなものでしょう」と、彼は溜息を吐いた後、更に続けて言った。
「強いて理由を挙げるとすれば僕は軍人で、死と隣り合わせに生きてるからと言えますが、そんな理由で結婚しない男なんて、滅多にいませんしね」
「私は女で軍人にはなれないから、結婚しないなら修道院へ入るしかないのだけど、宗教心が薄くて現実的な性格ですから、とても修道女には向かないと思って」
「そうなんですか? 僕はこう見えても結構信仰は厚い方だと、自分では思ってるんですが」
かくの如く不思議なことに、この夜は意外と話が弾んだのだが、肝心の夫婦なことは、やはり営まれなかった。
そのことについて話すのは、もう少し時間を要するように思えた。




